東大イマジナティヴは「発想・発見・想像力に富んだモノの見方、考え方」と「自分発の世界観」を軸に社会で活躍されている先輩から、お話を伺う企画です。今感じている不確かな思いも、きっとすべてがなりたい自分につながっているはずです。
多種多様なスタイルをもつ先輩方の考え方をヒントに、新たな1歩を踏み出そう!
第2回は、人工世界クリエイターの中野智宏さん。新しいファンタジーを創造すべく言語、音楽、映像、小説と幅広く、そしてひたむきに制作を続けている本学の現役大学院生です。「世界を0から創る」という壮大な構想を生み出す原動力とは、そして人工言語は一体どういう仕組みなのか。今回も個性が光る目線からお話をお届けいたします。
ひたすら妥協のない日々
ひとつは、上位50人くらいが毎年東大に合格するような進学校に在籍していて、ちょうど自分の成績が上位50位くらいだったので、東大を目指すのが自然な成り行きだったというのもあります。もうひとつは高校2年の時に『指輪物語』を読んで、作者のJ・R・R・トールキンに憧れたことですね。
彼の綿密な架空世界では言語が重要な要素を占めていましたし、彼自身が言語学の教授として活動する傍ら創作をしていて、私の理想のロールモデルを体現していたんですよね。なので、一番自由に研究とか勉強ができて、なおかつ国際的に通用するような、アカデミックな力を身に付けられる場所を探したら、それが東京大学だったんです。
いや、もうほんとに大変でしたね。実は私、大の塾嫌いでして、予備校に全く通わなかったんですね。中学受験の時に自分には合わないタイプの塾に通ってしまって、それ以来、すごく嫌いになってしまったんです。なので、大学の受験勉強は、学校で課される課題をひたすらこなしていました。特に数学はかなり苦手だったのと、世界史と地理は覚えることが多かったので、ほんとに赤本を何周もして対策をしました。家でも部屋に一人でこもって、一日中、何時間も勉強をしていましたね。特に最後の1年は、ほんとにぎちぎちにスケジュールを詰めてやっていました。
自分で言うのもなんですけども、かなり真面目に授業を受けています。休学期間を含めた5年間を通じて、ほとんど授業を休んだことはないですね。最初の2年間は特に語学に力を注いでいました。教養学部ではTLPでフランス語を履修して、当時は週3〜4コマをフランス語に費やして、研修にもいきました。教養の段階では幅広い科目が取れるので「人工世界をつくるために頑張るぞ!」とモチベーションを上げながら、自分のあまり得意ではない宇宙科学とかも進んで履修していましたね。
後期はGLPに入ったのですが、半月に1〜2回ぐらいのペースで特殊な時間割が組み込まれたり、夏とか冬に海外プログラムもあったりで、かなり大変ではあったんですけど、自分の糧にしたい一心でちゃんと完遂しました。始めたことは最後までちゃんとやりたいというタイプの人間なんですよ。
※TLP(東京大学トライリンガル・プログラム)
※GLP(グローバルリーダー育成プログラム)
人工世界を創る上で、本当に全てがプラスになるというかインプットにつながるんです。例えば、言語学演習で人の発表を聞いて、自分が聞いたことも見たこともないような分野の全然知らない言語の話をされて、この特徴が面白いなと思ったら、次の人工言語制作に取り入れています。「ケルト懐疑論」(一部の考古学者や言語学者によって信じられている「ケルト民族」なる概念の存在を否定する学説)についての議論を学会で聞いた時は、考古学と言語学以外にその2つの橋渡し的な分野の話も出てきて、民族や人の移動、考古学の知識など、どれも人工世界に活かせることばかりでした。例を挙げたらキリがないくらい、全ての授業だったり演習だったり、目の前のもの全てが、人工世界の何かにつながっているっていう感じです。
あります、あります(笑)。特に体育が苦手なんですよ。運動をすることにあんまり楽しみを覚えたことがなくて、しかもそれに成績がつけられちゃうというのが苦手ポイントなのかもしれません。でも、マイケル・ジャクソンが大好きなのでダンスだけは得意なんです!