東大生のオススメ本(3)—『どのような教育が「よい」教育か』苫野一徳

#教育学 #教育学 #現象学 #現象学 #文科三類 #文科三類 #教育学部の人 #教育学部の人

東大生によるオススメ本の紹介

東大生が高校生・受験生のみなさんにぜひ読んでもらいたい、オススメの本を紹介します。
第3回は、文科三類2年の丹原彩花さんによる紹介です。

紹介する本

『どのような教育が「よい」教育か』

『どのような教育が「よい」教育か』

苫野一徳 著

2011年

講談社

  • こんな人にオススメ!
    ●国語で読む哲学的な文章が好きな人
    ●倫理の授業が好きな人
    ●学問を日常生活に役立てたい人

教育に関心のない人も読んでほしい!〜「よい」はどのように決めるのか?

 「どのような教育が『よい』教育か」。きっと筆者の教育観を押し付けられるのだろう、そう思って手にしたこの本は、私の想定を覆し「よい」そのものを見つめ直す内容だった。

 「よい」はどのように決めるのか。教育についての議論も、正義(社会)についての議論も、それぞれが「よい」とする価値を主張し、信念対立に陥ることは少なくない。一方、絶対的に「よい」「正しい」ものなど無いと言ってすべてを相対化してしまったら、社会全体で「よい」を実践していこうにも途方に暮れる。まさにここに、筆者の問題意識があった。

 この本の最大のおすすめポイントは、思考の枠組み(どのような教育が「よい」教育かという問題を解く道筋)と、思考の中身(「よい」教育の内容)をきっちり分けて示しているところだ。だからこそ、教育というテーマに興味がなくとも、<思考の枠組み>に触れるためにこそ読むと面白い。その枠組みは他のトピックに適用可能かもしれないし、何より日常に役立つだろうと思う。それこそ「学問をする」意義・面白さなのではないだろうか。
(「学問は何の役に立つの?」と思った方はこちら→この本、読んでみて!(1)

 この本で紹介される<思考の枠組み>は、皆で「共通了解」を目指そうとするものだ。各人が考える「よい教育」や「よい社会」は、各自のどのような経験や願望をもとに生まれたのか、果たしてそれらは皆が了解可能なものであるのか、それを互いに問うていこうと言うのである。単に信念を押し付けるのではなく、背後にある経験や願望を共有して納得・共感の輪を広げていく、そのような社会は平和で魅力的だ。筆者が紹介する現象学を援用した<思考の枠組み>には、人間関係を構築する上でも重要なことが隠れているように思う。

 本の後半では、上に記した<思考の枠組み>を使って、筆者の考える「よい」教育が論じられる。人間の願望・欲望の本質を「自由に生きたいと望むこと」であると考える筆者は、各自の自由の実現には互いに自由を認め合えることが必要で、その「自由と自由の相互承認」の「感度と力能」を養うことが教育の本質だと述べる。こうした具体的な<思考の中身>は、ぜひ本書で筆者の言葉に触れてほしい。ヘーゲルを引用して論じられる箇所が多いが、先人から受け継がれ重ねられる思考の厚みもまた、この本の魅力である。筆者がよく用いる「(思考を)編み直す」という言葉の響きも素敵だ。

 このように、本書は<思考の枠組み>と<思考の中身>によって構成されるが、両者が序章に要約・凝縮されている。序章だけでもページをめくって、筆者とともに思考の旅を追体験してみてはどうだろうか。その帰り道はきっと豊かな日常へとつながっているだろう。

 

紹介者のPROFILE

丹原彩花 さん
文科三類2年

  • 丹原彩花さん
     最近よく耳にする「対話」。対話の意義や可能性に、私は強い関心を寄せています。たくさんの書籍が刊行される中で、今回は、私が対話に関心を持つきっかけとなった<現象学>の枠組みを分かりやすくまとめた本書をご紹介しました!
     この秋から教育学部に進学し、対話を通じた自己理解・他者理解について学びたいと思っています。これからも多くの文献に触れ、課外活動や日常的な人間関係において、相互理解を生む対話空間の創出を目指していきたいです!
文/学生ライター・丹原彩花
企画・構成/「キミの東大」企画・編集チーム