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五神真・東大総長が創立141年目の入学式で語った思いとは?―特集:東京大学入学式2018 (2)

2018.08.09

入学式特集2018

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今年の入学式で五神総長が語ったのは「変化を楽しんでほしい」との思いでした。一期生の岡倉天心と外国人教師フェノロサとの師弟関係を取り上げ、大学を飛び出して新しい分野にチャレンジした彼らの姿に学びの本質があると語りました。そんな五神総長の式辞をダイジェストにまとめました。


(撮影/尾関裕士)

70年という歴史の時間スケールで考える

「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。東京大学の教職員を代表して、心よりお祝いを申し上げます。ご列席のご家族の皆様にも、心からお慶び申し上げます」

冒頭、お祝いの言葉を述べた五神総長はまず、東大が昨年、創立140周年を迎えた話題から入りました。

「この140年は、明治から昭和前半の終戦を迎えるまでの約70年間と、戦後と呼ばれ平成にいたる後半の約70年間の二つの期間に分かれます」

「皆さんは、まさに第三の70年間の最初の年に、東京大学の一員になられたのです」

「70年という歴史の時間スケールで今自分が立っている位置を見直し、進むべき方向を考えてみてほしい」と、長期的な視野を持つことを促します。

変化の時代をチャンスととらえる

変化の時代と言われる現代において、いかに生きるべきか。五神総長は古代ギリシアの哲学者プラトンが記した書簡を紹介して、

「大学の学問とは、自分が今どのような場所にいるのか、どちらに向かうのかを冷静に考えるための思考の基盤であり、時代の変転に流されないための視点を獲得すること」と語ります。そして「変化は時代が皆さんに与えた大きなチャンス」と捉えて、この絶好のチャンスを「大いに楽しんでもらいたい」と述べました。

1期生の岡倉天心と外国人講師フェノロサ。二人の師弟関係に見る学びの本質

一方で、今年は明治維新150周年でもあることから、「歴史に学ぶ」という姿勢も大切だと話します。そして変化の時代を楽しんだ人物として、東大創設の年に入学したひとりの学生を紹介します。その学生とは岡倉天心(岡倉覚三)。後に日本美術史という新しい分野を切り開き、東京藝術大学の前身となる東京美術学校の設立にも寄与した人物です。

岡倉がその道に進むにいたった背景には、当時東京大学に外国人教師として招かれ、哲学や政治学を教えていたアーネスト・フェノロサとの出会いがありました。


岡倉天心(1863-1913)

 


アーネスト・フェノロサ(1853-1908)

 
二人は、幕末明治期に起こった「廃仏毀釈」運動が起こる中で、日本美術独自の価値と時代への危機感に目覚め、日本文化軽視の風潮に抵抗して、日本が伝えてきた美術を再評価し、その保存と修復の仕組みを整えていく運動へと発展していきました。

「国や言語を超えた師弟のこの協働は、既に明治の最初期から東京大学の知がグローバルな視点で探求されていたことを示しているのです。」

五神総長は、この岡倉天心とフェノロサの師弟関係こそが、大学という場での学びの本質を物語るものだという考えを示しました。

自ら問いを見つけ、自ら考え行動する

「大学で学ぶとは、すでに出来上がったコースを進むことではありません」と五神総長。高校までとは違い、大学では自分で問いを見つけ、自ら時間の使い方や対応策を考え行動することが必要になります。

「明治の時代に岡倉とフェノロサが創設当時の東京大学という場から飛び立って活躍したように、皆さんもこの東京大学という場を最大限に活用して、広い世界へと羽ばたいてもらいたい」と語りました。

大学の外で様々なチャレンジができる東大の特別プログラム

続いて五神総長は、東大が多様な講義だけでなく、様々なチャレンジの仕組みを準備しているとして、特別プログラムの内容を紹介しました。

その1つが、数日から1ヶ月ほどの期間、国内や海外の様々な場所でボランティア活動や就労体験をしたり、地域活動やフィールドワークに参加するなどの、実地の体験をする「体験活動プログラム」です。

もう1つは、昨年度から始まった「フィールドスタディ型政策協働プログラム」。これは、グループに分かれた学生たちが全国の地方自治体と協働で地域の課題を考えるというものです。

 

国際舞台で活躍する人物を養成する総合的なプログラムが整う

さらに東大では英語での書く力と話す力を身につけるための、少人数クラスの必修コースを用意して、国際舞台で活躍できる人物を養成するプログラムがあることも紹介しました。

理系はALESS、文系はALESAでアカデミック・ライティングを学びます。また、7週間で英語で話し討論する力の獲得を目指すFLOW(Fluency-Oriented Workshop)という授業も紹介しました。

その他にも、国際的なトレーニングに役立つ多様なプログラムがあり、これらのプログラムを効果的に履修するために、「国際総合力認定制度」(Go Global Gateway)という制度を新たに設けたことも紹介しました。

「いろいろなプログラムに参加し一定の基準を満たしたら、それを認定する制度です。ぜひ活用してください」

 

「知のプロフェッショナル」をめざし果敢なチャレンジを!

東大ではこうした多様なプログラムを通じて、「知のプロフェッショナル」になるための基礎力を身につけ、自ら新しいアイディアや発想を生み出す力を培うことができると五神総長。

「様々な場に自由に参加できるというのは、実は大学で過ごす皆さんの大事な特権なのです。新しいスタートを切った今、ぜひ未知の体験に果敢にチャレンジしてください」

「皆さんが実りの多い大学生活を楽しまれるよう、私たちはできるだけのサポートを行なっていきます。皆さんが、素晴らしい大学生活を送り、立派な東京大学の卒業生となる日を楽しみにし、皆さんの健闘をお祈りしています」と、式辞を締めくくりました。

五神総長の平成30年度入学式式辞の全文を読みたい人はこちら。

2018.08.09
文・構成/ライター・大島七々三