「推薦生×一般生」―4年間の東大生活を振り返る(2)

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推薦生と一般生の座談会

推薦入試(※)で東大に合格した推薦生と、一般入試で合格した一般生が、東大で過ごした4年間を振り返る座談会。今回のテーマは、前期教養課程(1・2年生)の過ごし方です。履修する授業や進学選択について、それぞれの経験を語ってもらいました。
(※現在、推薦入試は学校推薦型選抜名称変更)

PROFILE

長原颯大さん(工学部マテリアル工学科4年 福岡県出身)
この座談会の発案者で、司会進行役。2017年度推薦入試に合格。卒業後は大学院工学研究科に進学予定。
原文聖さん(法学部4年 東京都出身)
2017年度推薦入試に合格。卒業後は大学院法学政治学研究科に進学予定。
荒川光さん(教育学部総合教育科学科比較教育社会学コース 広島県出身)
2017年度一般入試で文科三類に合格し、教育学部総合教育科学科比較教育社会学コースに進学。卒業後は一般企業への就職が決まっている。

 

「早期履修制度」と「アドバイザー教員」って何?

  • 推薦生と一般生の座談会
    長原 今回のテーマは「前期教養課程での過ごし方」。主に学業に関することを話していきたいと思います。「推薦生と一般生、授業の取り方に違いはあるの?」っていう質問をもらっているんだけど、原さんは、何か特別な授業を取る機会はありましたか?
  • 推薦生と一般生の座談会
     推薦生用の授業が開講されているわけではないから、授業の取り方は一般生とほとんど変わらなかったです。クラスも一般生と同じだし。授業のことで一般生と違ったことと言えば、早期履修制度を使って1年生の時に2年生向けの国際政治の授業を取ったことかな。

長原 僕も2年生に早期履修制度を使って、工学部の授業を1科目だけ受講できたから、3年生以降の勉強の大まかな雰囲気をつかめて有意義だったな。でも、理系の前期教養課程は必修が多いから、たくさん履修する余裕はなかったけどね。

 ほかにも、1年のAターム(秋学期)には、アドバイザー教員だった先生の勧めで、後期課程の学生が履修するゼミに参加させてもらった。まだ1年生だったから、そこで本格的に政治学をやるっていう感じにはならなかったけど、少なくとも政治学の世界に触れるきっかけにはなったかな。

長原 工学部では2か月に1回くらいアドバイザー教員との面談の機会があって、僕はアドバイザーの先生とよく世間話をしたり、興味のある研究について話を聞いてもらったりしていたな。僕の場合、それが自分の進路に直接的な影響があったって感じではなかったけど、楽しかったです。

  • 推薦生と一般生の座談会
    荒川 早期履修制度や東大の教員がアドバイザーになってくれるっていうのは推薦生だけだよね。どちらも魅力的に聞こえるけど、僕だったら、進路について大学の先生に直接相談するのは気が引けるな…。

 なかなか相談には行きづらいよね。僕は一度、先生と面談してゼミにも参加できたけど、同期の法学部の推薦生でも、アドバイザー教員にはほとんど相談しなかったっていう人もいるんじゃないかな。

長原 僕の同期の推薦生には、何度もアドバイザー教員に相談にのってもらったお陰でうまく進路を決められたっていう人もいたし、活用の仕方次第ではプラスになると思う。だからこそ、もう少し気軽に相談できるような工夫があったらうれしいよね。

推薦生と一般生の座談会
長原さんが1年の時に作成した授業用の実験器具の一部(写真提供:長原颯大)
推薦生も一般般生も、1年から研究室での実験に参加できる授業があります。

 

一般生に気づかれない「隠れ推薦生」がいる?

長原 ここまで推薦生目線で前期教養課程の過ごし方について話してきたけど、一般生から見て、推薦生との過ごし方の差を感じることはあった?

荒川 そもそも、クラスの中に推薦生がいたのかどうかもわからなかったな。「推薦生」っていう名札をつけているわけでもないし、一般生から見ても、それは気づかないよね(笑)。実は「隠れ推薦生」がいたのかな?

 そういえば、僕らの時は東大の推薦入試がまだ浸透していなくて、ちょっと周りには言いづらい雰囲気があったかもしれないな。あえて「推薦生です」って自分からは言ってなかったかも。

長原 そうだよね。授業のほとんどが一般生のクラスメイトと一緒だし、推薦生って言わないと本当にわからないと思う。でも、最近は推薦入試の認知度が上がってきて、僕らの頃よりもオープンな雰囲気になっているみたいだね。

荒川 卒業論文の研究で推薦生にインタビューをしたんだけど、そのとき初めて、推薦生にはユニークで行動力のある人が多いってことがわかっ  タンだよねgfたんだよね。推薦生の存在をもっと早く知っていれば、一般生の僕らもいろいろ刺激を受けられたんじゃないかと思うと、もったいない気がします
 

進学選択、それぞれの悩み

長原 学業のことで推薦生と一般生の差が顕著になるのは、進学選択だろうね。推薦生は合格時点で進学する学部が決まっているから、進学選択がないんだよね。だから「成績を気にせずに好きなように授業が取れていいね」って言われることもあるけど、原さんは自由に授業が取れたと思う?

 うーん、進学選択がないとはいえ、やっぱり成績は気になるんだよね。今振り返ると、もっと自由にいろんな授業を取って教養を深めることもできたんじゃないかっていう後悔が結構あるな…。

長原 僕も成績を気にしていました。「この科目でこの程度の成績が取れてないと、専門に進んだ後で苦労するんじゃないか」という危機感があって、授業選択の幅が狭くなったような気がします。僕にとって、進学選択がなかったことのメリットと言えば、工学部の中の学科選択に焦点を絞って進路を考えられたことかなと思います。

推薦生と一般生の座談会
長原さんが研究している高分子物理のシミュレーション画像(写真提供:長原颯大)

 僕は高校の頃から、法学部で政治学をやりたいって決めていて、今も法学部に入ってよかったと思っているんだけど、一般生の場合は進学選択で学部を決めなきゃいけないから大変じゃない?

荒川 僕の場合、学校の先生になろうと思っていた時期もあったので、教員免許が取得できる学部に進むか、学問として興味があった教育制度の研究ができる学部に進むかで悩みましたが、結局、大学の残り2年はやりたいことを究めたいと思って、後者の進路を選びました。やっぱり、成績のことを気にする機会も推薦生と比べて多かったと思うし、進学選択は大変でしたね。でも、大学入学時点ではやりたいことがまだ決まっていなかったので、2年生でじっくり悩んで進学選択できたのはよかったと思います。逆に、推薦生が進路に悩まないのかが気になりますね。

長原 原さんはそのへんの迷いはなさそうだよね。

 そうだね。でも、教養学部にも政治学を専門とするコースがあるから、もし進学先があらかじめ決まっていなかったら、法学部と教養学部とで悩んだかも。

長原 工学部は学科が多いから、実は推薦生でも学科選択で悩む人は多いんだよね。しかも、推薦生は希望の学科にほぼ確実に進学できる代わりに、進学先の学科を一般生よりも数か月早く決めなきゃいけなくて、その時点では学科の進学ガイダンスも始まっていないから、1年の頃から自分で考えておかないと間に合わないんですよ。僕は、1年の時にサークルの先輩からマテリアル工学科の研究室を紹介してもらっていたので、自然と進路を決められたんだけど、人によってはプレッシャーだったみたい。

荒川 進学選択をするもしないも一長一短ってことですね!その両方の選択肢があるっていうのが、東大のいいところなんだと思います。

長原 ということで、次回は、大学生活をより豊かにするきっかけにもなる学生同士の交流についてお届けしたいと思います!

4年間の東大生活を振り返る(3)はこちら

取材/2020年11月
取材・構成/「キミの東大」企画・編集チーム
※ページ内容は作成時のものです。