「進学選択」って何?(2)―進学選択の進め方とポイント

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東大生ならば、必ず通る通過点。それが「進学選択」(通称「進振り」)です。将来の進路にも関わることもあり、受験を前に不安に感じている方も多いのでは? そこで今回は、進学選択をクローズアップ。進学選択に関する情報提供や個別相談などを実施している教養学部進学情報センターに話を聞きに行ってきました。
第2回はいよいよ、進学選択の進め方やポイントを取り上げます。
前回に引き続きお話しいただくのは、教養学部進学情報センターの青木優准教授と永井久美子准教授のお2人です。教養学部文科三類2年生の白賀可奈さんも交え、解説いただきました。

選考基準は成績のみ シンプルな第一段階

――東大では3年次から後期課程に入り、それぞれの学部に分かれます。所属する学部・学科を決める進学選択はいつ行われるのですか。

青木 最初は「第一段階」ですね。2年生の8月に行われます。各学部・学科は第一段階で全定員のおよそ7割を募集し、学生は一つの進学先を志望します。また法学部は文科一類からの募集枠が最も多いなど、学部・学科によって科類ごとの募集人数(定数)が異なることもポイントです。

白賀 第一段階で定員いっぱいに募集するわけではないのですね。

永井 定数を超える志望があった場合、成績による選考を行います。東大では基本的に各科目100点満点で評価していて、その平均点の高い学生から順に決まります。1年生から2年生Sセメスター(前期)までの成績が対象です。

進学情報センター 青木准教授・永井准教授
前回に引き続き丁寧に解説していただいた、進学情報センターの青木准教授(左)と、同 永井准教授(右)。

――例えば理科から法学部など、他の科類から出願の場合はどうなるのですか。

青木 「理科から○名」など、他の科類からの応募枠を設けている学科は、まずその中で選考を行います。そこで枠から漏れた学生はメインの科類枠から漏れた学生と共に、科類を問わず志望できる全科類枠に自動的にスライドされ、その中で成績順に決まるという流れです。

永井 他の科類枠や全科類枠を利用する場合、募集人数が少ない分、当然ながら競争率は上がります。よってメインの科類からエントリーするよりも、高い平均点が求められる傾向にありますね。

白賀 文科から理系の学科に進もうとなると、要求科目もありますから、さらに高いハードルになりますね。

情報収集のチャンスはいっぱい 先輩の声を聞ける機会も

――第一段階で選考から漏れた場合は、どうなるのでしょう。

青木 第二段階に進みます。第一段階に比べて募集は少ないですが、複数の学部・学科を志望することが可能です。また面接や志望理由書など、成績以外の観点も加味して選考するのが特徴といえます。第二段階で定員に満たない学科は第三段階を実施しますが、だいたい第二段階までのところが多いです。

――学生のみなさんは、どのように学部や学科の情報を集めているのですか。

永井 1年生の11月に「進学選択ガイダンス」があり、そこで概要を確認します。その後は1カ月ほどかけて、学部主催のガイダンスが行われます。それぞれの学部の特色や研究室について説明があるので、少しでも興味のある学部は足を運んでおくとよいでしょう。

青木 4月には「進学選択シンポジウム」を開催します。研究や実務の第一線で活躍する卒業生を招き、自身の進路決定について語っていただきます。先輩方から直接話を聞くことができ、自由に質問できる貴重な機会です。またこの頃になると、各学部でパンフレットをつくったり、コースガイダンスや研究室見学を行ったりしています。


2022年度の進学選択シンポジウムのポスター

永井 進学情報センターでも、進学選択に関連する資料を閲覧することができます。また個別相談も受け付けていて、青木先生や私が対応しています(詳細は第3回)。

学問の多様さを理解すれば幅広い選択ができる

――うまく進学選択できている学生は、どのような準備をしていますか。

永井 要求科目がある場合などを考えると、やはり早い段階で後期課程を見据えた履修計画を立てている学生は、希望の学部・学科に進学できているように思いますね。進学先に迷っている場合も、自分でしっかり考え、判断材料を着実に集めているように思います。

青木 イベントに参加する、関心のある科目を履修するなどして、学部の教員や先輩から直接情報を集めていますね。学部や研究室のWebサイトも参考になりますし、進学情報センターを活用もするのも有効です。

――希望どおりの所属にならない場合もあるのですよね。

永井 人気が高く、定数の少ない学部・学科は、どうしてもハードな選考になる傾向にあります。ただ学問は本当に多様です。例えば心理学が学べるのは、文学部の心理学研究室だけではありません。教育学部、教養学部にも心理学を専門とする学科や研究室があります。当初の希望と違う所属になったとしても、結果的に自分のやりたいことができた、意外と興味に合っていたということもあり得ることです。

白賀 やりたいことの軸を明確にしながら、興味の幅を広げることが大事なんですね。こうした部分でも、教養が活きてくるんですね。

進学選択特集 白賀さん
志望登録を前に、真剣に話を聞く白賀さん。

永井 人気や就職実績で選ぶのもひとつの方法ですが、本当に興味のあることを学べなかったというのでは本末転倒な気がします。場合によっては家族と相談する必要もあるでしょう。どのような選択になるにしろ、主体的に考えることが大事だと思います。

青木 最近ですとAIやVRに関連した学科に人気が集中していますが、トレンドに振り回されず、長期的な視点で進路を選択してほしいですね。先日、進学シンポジウムに登壇された工学部の古澤明先生は、自身が研究される量子コンピューターについて「君(学生)たちが社会に出る頃には、オワコンになっているかもしれない」と話していたのが印象的でした。

人生のすべてが決まるわけではない

――進学選択に向けて、高校のうちからできることはありますか。

永井 うーん…、今から焦る必要はないと思います。まずは高校課程をしっかり学び、できる範囲で興味や関心を広げておくといいでしょう。

白賀 そうですね。私も前期課程で講義を受ける中で分かる部分もあったり、今まで関心のなかった分野に興味が湧いたりしています。大学に入ってから準備を始めても、遅くはないと思いますね。

青木 ただ受験に関しては、あくまでも王道を選んでほしいかな。例えば将来、理学部の数学科に進学したいというならば、理科一類に入学するのがやはり望ましいです。
時々「理科が苦手」という理由から、大学入試の二次試験で理科のない文科で入学し、全科類枠で数学科に進もうとする学生を見かけます。けれども数学科では「力学」や「構造化学」などを要求科目(詳細は第1回)に指定しているため、結局理科の壁に突き当たってしまうのです。

永井 進学選択に慎重になるのも当然です。けれども、これで人生のすべてが決まるわけではありません。例えば経済学部の藤井優成先生は、理学部と大学院理学系研究科のご出身ですし、ほかにも文系の学部を出て理科に入り直す、社会人経験を経て他の学部に進学するという卒業生もいます。大切なのは、最終的に自分が納得する選択ができるかどうかではないでしょうか。

白賀 そうですね。私も志望登録に向けて、もう一度じっくり考えたいと思います。ありがとうございました!

進学選択特集 青木先生、白賀さん、永井先生

――青木先生、永井先生、そして白賀さん、今日は貴重なお話をありがとうございました!

インタビュー・構成/「キミの東大」企画・編集チーム
※ページ内容は作成時のものです。