「進学選択」って何?(1)―進学選択制度の仕組みを知ろう

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東大生ならば、必ず通る通過点。それが「進学選択」(通称「進振り」)です。将来の進路にも関わることもあり、受験を前に不安に感じている方も多いのでは? そこで、今回は進学選択をクローズアップ。進学選択に関する情報提供や個別相談などを実施している教養学部進学情報センターに話を聞きに行ってきました。
初回は進学選択の前段として、教養を学ぶ意義について取り上げます。
お話を伺うのは、教養学部進学情報センターの青木優准教授と永井久美子准教授。また教養学部文科三類2年生の白賀可奈さんも加わり、素朴な疑問をぶつけていきます。

専門性を深めるのを助ける“教養”の役割

――今回の特集のテーマは「進学選択」です。東大ならではの制度です。どのようなものか教えてください。

青木 東大での学びは、大きく2つに分けられます。前期課程の2年間は全員が教養学部に所属し、さまざまな学問を幅広く学びます。そして3年生以降の後期課程は、法学部や理学部など10の学部に分かれ、専門性を深めていきます。進学選択とは、後期課程に所属する学部、そして学部に紐づく学科やコースを決める一連の流れをさします。


進学選択のイメージ(出典:東大ことはじめ-東大の教育体制)

――そもそも東大ではなぜ、前期課程のような教養を学ぶ仕組みを採用しているのでしょう。

青木 実は30年ほど前までは、多くの大学に「一般教育」という枠組みがありました。ところが文科省の制度改革により、大学ごとに教養の扱い方が変わりました。結果、東大独自のシステムのように見えている、というのが現状です。

白賀 そうなんですね。

青木 では、どうして東大が今でも前期課程を残しているのかというと、これが最適だと認識しているからです。学問の世界は「人間の心を持ったAI(人工知能)の研究」のように、学際的な(複数の分野にまたがる)研究が増えてきています。また一見かけ離れた分野どうしが、実は間接的につながっていたということもある。広範な学問に触れておくことが、専門性を深めるのに役立つといえます。

――卒業後に公務員になる人や、企業に就職する人もいます。

青木 教養が必要なのは研究者だけではありません。例えば公務員になって、環境保全に関する法整備を担うことになったとします。すると法律だけでなく、環境にまつわる数字の意味や調査原理がわからなければ、正しい判断はできません。このように、文系であっても理系の知見が問われるシーンは意外と多いものです。それは理系でも逆のことがいえます。
特に東大では、次の時代を動かすリーダーの育成に力を入れています。その意味でも幅広い教養を学ぶことは、とても大切なことなのです。

進学選択特集 青木准教授
教養の大切さを力説してくださった青木准教授。

基礎からトレンド探求まで幅広い

白賀 だから、いろんな科目が開講されているのですね。

永井 ちなみに教養自体も、とても奥深いものです。教養学部は後期課程もあり、後期課程の先には大学院総合文化研究科も設置されています。文系と理系、両側面からアプローチできる環境が揃っていて、他の学部とはまた違った面白さがあるのが特徴です。

――前期課程では、実際にどのようなことを学ぶのですか。

永井 前期課程は、基礎科目、展開科目、総合科目、主題科目の4つで構成され、「文科一類」や「理科一類」など科類によって履修する科目に違いがあります。

――詳しく教えてください。

永井 基礎科目は学びの基本となる知識と技能と方法を扱います。外国語に情報、身体運動・健康科学実習に加え、文系は人文科学、社会科学、理系は自然科学にまつわる科目を開講。また文理共に初年次ゼミがあります。展開科目では基礎科目から一歩踏み込むことで、学問研究に必要な手法や発想を学びます。

青木 総合科目は言語を含めた7つのカテゴリーに分けられ、それぞれから選択します。基礎科目や展開科目と比べて履修の自由度が高く、自分の興味に合ったものを選択できます。

白賀 私は総合科目を活用して、7か国語を学ぶことができました。また受験直前まで文理選択で迷っていたこともあって、理系科目を選べるのが嬉しいです。

進学選択特集 永井先生、白賀さん
白賀さんと永井准教授。教養学部の多彩な授業をめぐり、話が盛り上がる。

永井 そして主題科目は現代医療と福祉やデザイン経営、最新テクノロジーに触れるゼミなど、1つのトピックについて多面的に学ぶ講座が揃っています。本郷キャンパスの教員が担当する科目や、学外からゲストを招くもの、フィールドワークを行うものもあります。

――シラバス(講義要綱。学内で開講する講義の概要や進め方などがまとめられている)を見ると、分野を問わず充実したラインアップですね。

永井 この幅広さが大事なんです。例えば数学が好きで東大に入った理科の学生が、金融の世界に開眼し経済学科を志望するということも珍しくありません。それに「宇宙開発」と聞くと、ロケットや惑星探査機などのイメージが強いですが、バイオテクノロジーの融合や、法律や経済との関係など、いろんな切り口があります。もちろん宇宙や天体そのものの謎に迫るのもいいでしょう。

多面的に問うことで本当の興味が見えてくる

――確かにいろんな方向性が見えてきます。他の分野でも同じことが言えそうですね。

永井 教養を通じて1つのキーワードをいろんな角度から考えることで、自分が何に興味のあるのかじっくり問うことができる。それも前期課程の醍醐味なのだと思います。

青木 各分野のエキスパートから直接教えを受けられるというのは、ある意味とても贅沢なことですよ。

白賀ふだん講義を受けていて、先生方の見識の深さに驚くことも多いです。高校の時とは学びの種類が違うと感じています。

――興味のあるものは、どんどん履修したほうがいいですね!

青木 とはいえ注意も必要です。後期課程の学部・学科は、前期課程で履修してほしい科目を指定している場合があります。これを「要求科目」といいます。要求科目の単位を取得していないと、希望の学部・学科に志願することはできません。ある程度、後期課程の方向性を鑑みて履修する必要があります。
要求科目の条件は、理系のほうが厳しい傾向にありますね。特に文系の科類から理系の学部・学科に進みたいとなった場合、2年間で必要な単位を取るのは困難というケースもあります。

白賀 (理学部のある学科の要求科目を見て、)これは文科三類から進むのは現実的ではないですね……。

永井 履修できる時期が限られている科目もあるので、他の科目との重なりを考慮するなど、計画的に履修するのが大事になってきます。

――よく分かりました。次回(第2回)は、進学選択について詳しく教えてください。

インタビュー・構成/「キミの東大」企画・編集チーム
※ページ内容は作成時のものです。