VRで私たちの生活は変わりますか?―情報理工学系研究科・雨宮智浩准教授(3)
研究室探訪 2021.05.07
2018.10.23
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PROFILE
水島 昇(みずしま のぼる)
1991年、東京医科歯科大学医学部卒業後、同大学院博士課程を修了して医学博士に。1997年より岡崎国立共同研究機構の基礎生物学研究所、大隅良典教授の研究室にて、博士研究員や助手としてオートファジー研究に没頭。その後、東京都医学研究機構東京都臨床医学総合研究所室長、東京医科歯科大学教授などを経て2012年より東京大学大学院医学研究科教授(現職)。日本生化学会前会長。日本学術振興会賞や武田医学賞、トムソン・ロイター引用栄誉賞など受賞多数。
TABLE OF CONTENTS
生命の仕組みを研究し、明らかにすること
医学部は医学と同時に生命科学の発展にも貢献
やりたいことが見つかったときに全力で取り組めるよう、知的な基礎体力を
飢餓に直面した生物は自分の細胞の中の一部を食べて生き延びようとします。この自己分解をオートファジーと呼びます。これは真核細胞が誕生してまもなく獲得した生存戦略であると考えています。
これまでの研究から、オートファジーを起こす主な理由が「分解した細胞内成分を栄養として再利用するため」と、「古くなったり毒性を持ったりした細胞内成分を分解除去するため」であることがわかりました。例えば、絶食によってマウスの全身でオートファジーが起こります。飢餓時の酵母は、オートファジーによって生じた栄養素を利用して胞子となり長生きすることが知られています。
一方、飢餓ではなくてもオートファジーはいつも起こっていて、それが細胞の中を掃除してくれます。オートファジーを獲得したからこそ、私たちの神経細胞のように、同じ細胞を長期間使えるようになったといっても過言ではありません。
オートファジーの研究を通じてさまざまな生命の仕組みを知ることができます。仕組みがわかると、今までとは違う考え方の発見へとつながります。予想外の事象に出会った時は特にチャンスです。このような基礎研究の多くは、すぐに社会に役立つわけではありませんが、幅広く生命の原理を明らかにしておくことが、医学の発展に貢献すると思います。
医学部は医師を養成すると同時に、医学や生命科学を発展させる役割も担っています。生物の中で最も研究されてきたのは人間です。なぜなら、異常としての病気を治療するために真剣に研究されてきたからです。他の生物が病気になっても、人間ほど真剣には研究しないでしょう。異常を知ると、今度は正常がよりよく理解できるようになります。そういう意味でも、医学部は医学と同時に生命科学の発展にも貢献していると言えます。
私は医学部に6年いたので、研究時間を損したのではないかとよく聞かれます。しかし、その間幅広く体の正常と異常を学べたので大変役立ったと思っています。いろいろなことを知りたい人は医学部に向いているでしょう。「医師にはなりたくないから、医学部以外を選択する」と考える必要はありません。むしろ反対に、私は、医学部出身者のうちの一定の割合は、将来は基礎研究者になって欲しいと思っています。
高校時代は、急ぎすぎないことが大切です。やりたいことがあればそれを追求すればいいのですが、自分が何に向いているかわからないからと言ってあせることはありません。しかし、やりたいことが見つかるまで何もしないのはいけません。やりたいことが見つかったときに全力で取り組めるよう、しっかりとした知的な基礎体力をつけておくことが何よりも大事なのです。
私がオートファジーに出会って、医師から基礎研究者に転向したのは30歳のときですから、あわてる必要はまったくありません。