本郷キャンパス

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「東大」と聞いて多くの人がイメージする風景は、おそらく本郷キャンパスの風景ではないだろうか。

本郷地区キャンパスは、法、経済、文、教育、工、理、農、薬、医の9学部をはじめとして、多くの大学院や附置研究所などを有しており、全学の中核としての役割を担っている。東京メトロ丸ノ内線・都営大江戸線「本郷三丁目駅」、東京メトロ南北線「東大前駅」、東京メトロ千代田線「根津駅」など複数路線の最寄り駅があり、近くには上野公園や不忍池、東京ドームといった、都内でも有数の観光地が存在する。キャンパス内には、毎日のように観光客や修学旅行生が出入りしている。食堂や購買、図書館、トレーニングジム(御殿下記念館)といった施設だけでなく、コンビニエンスストアやカフェなど多くのお店も入っている。

「東大」という固有名詞を象徴するものが本郷キャンパスにはある。
例えば、写真撮影をする人が連日絶えない東大の名物で国の重要文化財でもある「赤門」。その堂々とした佇まいは、道を歩いていてもひときわ目を引く。東大生を取材しようと、マイクとカメラを持って門の前で待つテレビ局のスタッフを見かけることも多い。


赤門。本郷キャンパスの正門ではないが、東京大学の別称として用いられることもしばしば

それから、かつての学園紛争のシンボルとも言うべき存在「大講堂(安田講堂)」。正門から続く銀杏並木の先に凛とそびえる建物だ。天気の良い日には多くの人が、講堂前の広場でお弁当を食べたり、読書にふけったりしている。大講堂の収容人数は1000人を超え、毎年3・9月にはここで、学部の卒業式と大学院の学位記授与式が挙行される。正式名称は「東京大学大講堂」というが、建設に際し寄付を行った安田財閥の創始者・安田善次郎にちなんで「安田講堂」と呼ばれている。


新緑の並木の奥に見える安田講堂。本郷キャンパスの象徴的な風景を形作る

あるいは、夏目漱石の名著の舞台としておなじみ「三四郎池」。都心にあるとは思えないほど静かな雰囲気に包まれた池を覗き込めば、大きな鯉が悠々と泳いでいるさまを見ることもある。授業の合間に池の周りをぐるりと歩けば、疲れた頭もリフレッシュできる。

その他にも、年季の入った建物がいくつもあり、東大が歩んできた長い歴史の一部を垣間見ることができる。キャンパス内を散策すれば、開学以来、日本の最高学府たる地位を守ってきた東大の揺るぎない威厳を実感させられよう。

本郷キャンパスに通うのは、主に3年生以上の学部生・大学院生だ。そのため、大学に入学して間もない学部1・2年生も通う駒場Iキャンパスとは、どこか雰囲気が違う(もちろん、駒場Iキャンパスに通う3年生以上の学部生・大学院生もいる)。フレッシュな学生たちの活気あふれる雰囲気をまとっていた駒場Iキャンパスに比べると、本郷キャンパスにはより厳格で落ち着いた雰囲気が漂っている。現に学部3年生となった私も、毎日赤門をくぐるたびに身の引き締まる思いがする。しかし、それは嫌な緊張感ではない。東大を目指した高校生の頃を思い出し、初心に返って、これからもひたむきに学問に励んでいこうという覚悟を新たにさせてくれるものである。


法文2号館のアーケード。連続する重厚なアーチが厳かな印象だ

そんな脈々と受け継がれてきた伝統を守る本郷キャンパスだが、その歩みは決して止まってなどいない。最近新たに建造された建物も数多く、それらが古き良き建物と共存して、本郷キャンパスの風景は描かれている。また、中央食堂が2018年春に新装オープンし、総合図書館も2020(令和2)年8月に改修工事が終了し、11月にはグランドオープン式典を挙行した。日々生まれ変わってゆく施設に囲まれながら、高度な教育や研究がなされているのだ。本郷キャンパスは、今もなお走り続けている。

最終更新/2021年4月 
文/学生ライター・伊達摩彦