【開催レポート!】2021年度 第2回 学校推薦型選抜オンライン説明会―東⼤⽣のイメージが変わった?推薦⽣の⾏動⼒にふれる

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【開催レポート】2021年度 第2回 学校推薦型選抜オンライン説明会

東京大学高大接続研究開発センターでは、7月30日、全国の高校生を対象として2021年度2回目の学校推薦型選抜オンライン説明会を開催しました。学校推薦型選抜(旧推薦入試)は、東大の学部教育の総合的改革の⼀環として、2016年度から導入された制度です。この説明会は、入学後の生活も含めた⼀般選抜との違いを取り上げ、学校推薦型選抜への出願の検討や準備の手がかりになることを目的として企画されました。それでは説明会当日の模様をダイジェストでレポートします!
※5月に開催された第1回説明会のレポートはこちらをご覧ください。

学校での日常を通じて知的好奇心を証明することの重要性

本会は5月に続き、今年度2回目の開催。進行に工夫を加え、より親しみやすいものとなりました。夏休み期間ということもありZoomを使った当日オンライン参加が200名以上、後日の動画視聴も含めると360 名を超える申し込みがありました。北は北海道から南は沖縄まで集まり、オンラインながら熱量の高さが感じられました。そして彼らを迎えるのが、学校推薦型選抜で入学した60 名以上の現役推薦生。彼らがリラックスした雰囲気をつくり、未来の後輩たちをサポートしていました。

冒頭は東京大学副学長で、入試改革を担当する武田洋幸先生のビデオメッセージからスタート。武田先生は学校推薦型選抜について「とても敷居が高く特別な⼀握りの人しか受験できないものと思ってはいませんか?」と投げかけたうえで、「いろんな事柄への幅広い関心や学びへの強い意欲が感じられ、本学での学びによって⾶躍すると判断した生徒のみなさんを、広く受け入れています。現役の推薦生との触れ合いを通じ、学校推薦型選抜の本当の姿をお見せできると思います」と、参加者のみなさんにエールを送りました。

推薦入試説明会_武田洋幸副学長

続いて進行を務める高大接続研究開発センター 准教授の植阪友理先生より、東大の特徴と学校推薦型選抜の概要を解説しました。東大の国際的なスケールと幅広い研究分野を基盤とし、推薦生ならではの早期履修や研究室体験、独⾃の教育プログラムと組み合わせることで、専門性を深めながら実践的な体験を可能にする学びの環境をアピールしました。このほか、選抜の考え方や求める学生像を紹介したところで、高大接続研究開発センター特任教授の高橋和久先生より、学校推薦型選抜の意図を補足しました。その内容は目先の受験ノウハウに翻弄されがちな高校生に向け、視野の広がりをもたらすものでした。

体験活動の例

高橋先生「私たちが歓迎しているのは、人生の目標があり実現のために東大での学びや研究を必要とする人です。その資質は、ペーパーテストだけでは見えてきません。日ごろみなさんの様子をご覧になっている高校の先生方に、本学のアドミッションポリシーにふさわしいことを示していただくのが重要だと考えます。各種オリンピックやコンクールの入賞歴に限らず、証明になるものでしたらどのような形でも条件を満たしていると判断します。また東大は同じ学問領域でも複数の学部で研究が行われていることが多いので、思いがけないところで自分の関心と合致する場合があります。高校までの科目の区切りから範囲を広げて情報を集め、やりたいことと真にマッチする学部や学科を探してみてください」

高橋先生

 

東大生のイメージが変わった!? 推薦生の行動力に触れる

続いて推薦生3名による、プレゼンテーションが行われました。植阪先生から進行のバトンを受け取ったのは、⽂学部3年生の田中美月さんと、工学系研究科修士1年の長原颯大さん。ファシリテーター経験の豊富な二人が、場を盛り上げます。「チャットに質問や感じたことなど、コメントを入れてください」と呼びかけた途端、次々と投稿が! 周りの推薦生も加勢したこともあり、あっという間に100近くのコメントが集まりました。さすがSNS慣れしている高校生たち、気軽に反応してくれました。

中野和真さん(理科二類1年、農学部進学予定)

中野さんは都内の私立中高一貫校の出身。6年間在籍した生物部では植物プランクトンの生息状況を研究し、日本陸水学会でポスター発表するなど熱心に活動していました。さらに東南アジアのカリマンタン島に訪れたのを機に、生態系や環境問題へ強い関心を持つように。プランクトンや生態学の研究ができるところを条件に、進学先を検討し始めます。先輩の合格実績からAO入試や学校推薦型選抜も視野に入れますが、さすがに東大は難しいと考えていました。国際科学オリンピックやコンクールの入賞歴がなかったからです。

推薦入試説明会_学生スライド1-2

中野さん「東大のオンラインゼミに参加して、考えが変わりました。農学部の先生の講義で東南アジアの赤潮のことを取り上げていて、この先生に学びたいと感じたのです」

長原さん「生物系の進路だと、理学部と迷わなかった?」

中野さん「確かに理学部にもプランクトンを研究できるところがあるので、少し考えました。でも生態系というマクロな視点となると、やはり農学部かなって。オンラインゼミの受講が決め手でしたね」

東大入学後は、さっそく農学部の講義を早期履修。沿岸の生態系を取り上げた講義は関心と合っていて、研究室の見学を検討しているそうです。

推薦入試説明会_学生スライド1-1

安田乃亜さん(文科一類1年、法学部進学予定)

宮城県の私⽴高校を卒業した安田さんは、部活でも課外授業でもなく、自主的に始めた政治思想と震災行政に関する研究が、東大進学の糸口となりました。高2の終わり頃から被災地へボランティアに出向き、自治体の職員にも取材を敢行。体験を論文にまとめて政治学会に送ったことで、発表の機会にも恵まれました。並行して進路イベントにも積極的に参加。大学関係者や高校の卒業生に相談する過程で、東大に学校推薦型選抜があることを知ります。

推薦入試説明会_学生スライド2-1

田中さん「限られた時間を有効活用していますね! それに行動力がすごい」

安田さん「新型コロナウイルスで学校も部活もストップした時期だったので、自分のやりたいことに時間を使おうと思いました。研究では東京の大学の先生とZoomで話すなど、逆に新型コロナウイルス禍をメリットに変えられたところも。積極性が人生を変えるんだと感じています」

東大入学後に予想外だったのは、たくさんの友達ができたこと。多彩なクラスメイトから、大いに刺激を受けているといいます。また政治学のゼミでは議論を重ねるうち、考えが磨かれていくのを実感しているところです。

安田さんのプレゼンを聞いて、「新型コロナウイルス禍をチャンスに変えていてすごい!」「私も論文を書き始めたので励みになりました」といったコメントが集まりました。

推薦入試説明会_学生スライド2-2

篠田和宏さん(学際情報学府修士1年)

高校の頃から電子工作やプログラミングなどものづくりに興味があった篠田さんは、学校推薦型選抜では高校時代のロボット部と放送部での活動を中心にアピール。東大入学後は、友達と課外活動に夢中になります。それは、布製ウェアラブル文字入力デバイスの開発。パンツの腿の部分にあるセンサーを指でなぞると、チャットやメールを送れる画期的なものです。東大の設備やプロジェクト支援制度が開発につながったと、篠田さんは振り返ります。

推薦入試説明会_学生スライド3-1

篠田さん「東大には、3Dプリンタやレーザーカッターなどが揃ったテックガレージに、米国のテキサスで開かれた国際カンファレンスへの出展など、資金面も含めて後押ししてくれる制度がありました」

推薦入試説明会_学生スライド3-2

篠田さんの開発は、経済産業省の次世代人材プロジェクトに認定されたほか、テレビでも取り上げられました。

田中さん「東大は、本当にたくさんの機会に溢れていますよね。それをキャッチできるかどうかは、学生自身にかかっている気がします」

最後に篠田さんが「学業のことも触れないと」と、卒業研究で開発したハンカチ型デバイスを紹介すると、どよめきにも似たチャットが相次ぐ事態に。「東大生は机にかじりついているのかと思いきや、印象が変わりました!」「大学で何をするかによって、生活が変わりますね!」といったコメントも。また3人の発表を聞いて、「本当にワクワクしました!」「貴重なお話でした」など、たくさんの反応がありました。

推薦入試説明会_学生スライド3-3

 

推薦生や参加者の声が今後の過ごし方のヒントに

推薦生のプレゼンテーションの後は、グループトークへ。参加者と推薦生が30 近くのグループに分かれ、入試や大学生活などについて自由に話し合います。どのグループでも共通して挙がった話題は、学校推薦型選抜と⼀般選抜の準備の両立。夏休みの過ごし方にも影響することから、多くの参加者の関心を集めていました。ここではグループトーク中のやりとりの様子を、抜粋してご紹介します。

高校生A「推薦生のみなさんは、⼀般入試でも東大受験を考えていたのですか?」

  • ⼀般も視野に入れていましたね。学校推薦型選抜と両方対策をしていてちょっと大変だったかも。
  • 私の場合、一般入試は別の大学を考えていました。東大は一般選抜だと、前期の2年間は教養と基礎が中心になるから。高校から既に研究に取り組んでいたので、早く専門的なことに触れたいと思っていたのです。学校推薦型選抜で決まらなかったら、学部は別の大学で、大学院で東大に進学していたかも。

高校生B「学校推薦型選抜の出願資料をつくる時間を、どう確保していましたか?」

  • 学校では⼀般入試対策、家では学校推薦型選抜の準備と時間を区切っていました。自分は推薦向きだと思ったから、悔いのないように準備しようと覚悟を決めて臨んでいました。
  • 学校推薦型選抜対策期間中は⼀般対策をしないと決めて、丸々2週間集中して取り組みました。これまで自分で調べていたことを、1本の論文にまとめて提出しました。
  • 出願する学部や高校での活動によっても違うよね。私は部活で書いた論文を、整える程度で済んだかな。やりたいことが明確だと、志望理由書も書きやすいと思います。

高校生C「私の周りではコンクールやコンテストの話を聞かないし、論文を書いても誰に評価してもらえばいいのか。みなさんは、どのようにして機会を見つけているのですか?」
高校生D「私もアピールできるような活動がなくて、先生に相談して外部の研究プログラムを紹介してもらいました。ちょうど、プログラムの課題に取り組んでいる最中です」
高校生E「高大連携プログラムを利用し、大学の授業を受講しています。ここで学んだことをベースにレポートにまとめ、先生に添削をしてもらう予定です」

  • 先ほどプレゼンしていた安田さんのように、自主的に研究して、大学の先生に直接アプローチしてみても、道が拓けるかもしれないね。

あっという間にグループトークの予定時間が過ぎ、オンライン説明会は終了。その後は、質問がある人のみ学部別のトークルームに移動しました。どの学部も、推薦生を含め20名以上の盛り上がりに。「どのように学科を選んだのか」「(教養学部の場合)駒場の学生と接点を持つには?」「オンライン講義が増えて、通学事情はどう変わったか」など、より踏み込んだ質問が相次ぎました。

現役の推薦生たちの旺盛な好奇心と行動力に触れ、参加した高校生のみなさんは学校推薦型選抜の概要を知ると同時に、東大への憧れと学校推薦型選抜での受験意欲の向上につながった様子でした。

【参考リンク:今後の説明会の開催日程など、学校推薦型選抜の各種情報はこちら↓】
東京大学ウェブサイト:https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_26.html

取材/2021年7月
取材・構成/たなべやすこ