【開催レポート!】2023年度 第1回 学校推薦型選抜オンライン説明会―現役推薦生と交流しよう

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【開催レポート!】2023年度 第1回 学校推薦型選抜オンライン説明会

東京大学では学部教育の総合的改革の一環として、学校推薦型選抜(以下、本選抜)を導入しています。制度開始より一貫して、特定の分野における卓越した能力やさまざまな学問領域に対する極めて強い関心・学びの意欲を持つ学生を募り、学生の多様性を促進して、学部教育を活性化することを目指しています。
東京大学高大接続研究開発センターでは、今年度も全国の中高生を対象に、オンラインでの説明会を開催。本選抜のねらいや概要を伝えると同時に、本選抜で入学した現役学生(推薦生)との交流を通じ、制度に対する理解と興味を深めることが目的です。
今年度第1回目の開催となる6月17日の説明会には、後日の動画視聴も含めると370名近くのエントリーがありました。当日、彼らを温かく迎え入れるのは約40名の推薦生です。推薦生の深い探究心や、充実した学生生活が伝わる模様をダイジェストでレポートします。

学校推薦型選抜に挑む過程が自身を飛躍させる体験活動に

冒頭、東京大学副学長で文学部教授の秋山聰先生が、中高生に向けてメッセージを送りました。

秋山先生「本選抜は、必ずしも敷居の高いものではありません。私たちはコンクールやオリンピックの入賞者を求めているわけではないですし、そもそも評価を競うことのない分野がほとんどです。みなさんの日々の活動から特性やポテンシャルを見極め、多様な学生が集まり相互理解の深まる『誰もが学びたくなる大学』をめざします。
私が学生だった頃は、東大といえば着こなしひとつとっても画一的で、世間から“駒トラ”(駒場トラディショナルの略)と揶揄されていました。ともすれば埋没してしまう中、美術史研究でドイツに留学して初めていろんな日本人と接することで、自己相対化できたことを思い出します。
本選抜は一般選抜と違い、選抜の過程で本学の教員に自身の活動を説明してフィードバックを受ける機会があります。本選抜に向けた準備は自身の過去を振り返り、やりたいことを明確にする体験活動となり、合否に限らず自らを飛躍させるチャンスだといえます。萎縮せずに積極的に取り組んでほしいと思います」

続いて進行役を務める、教育学研究科准教授(高大接続研究開発センター兼担)の植阪友理先生が、東大の特徴や本選抜について解説しました。特にポイントとなったのは、本選抜と一般選抜の入学後の学びの違いです。一般選抜で入学した場合、3年次以降の学部を決める「進学選択」があるのに対し、本選抜では出願時に学部を決め、3年以降は出願時の学部に進むこと、1、2年のうちから専門的な学びや研究に触れる機会があること、また学修を支援するアドバイザー教員が就くことなどを述べました。

加えて本選抜の目的やアドミッションポリシー(期待する学生像)を取り上げたところで、高大接続研究開発センター 特任教授の高橋和久先生が、次のようにアドバイスしました。

高橋先生「アドミッションポリシーを読んで、『自分はこんな立派じゃない』と落ち込んでしまう人もいるかもしれません。でも書かれているのは究極の理想であって、完璧に合致する人などいません。推薦生に求めるのはオールラウンダーというより、多少偏りはあってもある分野で能力を発揮し、また情熱を持ってその領域を探究し続けるような人たちです。
巷では推薦で大学に入った学生が、入学してから肩身の狭い思いをするという話を聞いたことがありますが、東大では気にする必要はありません。本学の先生方は推薦生を極めて高く評価しているからです。この後の先輩方との交流も参考に、肩の力を抜いてチャレンジしてほしいと思います」
 

高校の頃の興味の軸が大学でアップデートされた

制度の概要がつかめたところで、推薦生による話題提供に移ります。司会進行は栗本朱莉さん(理科二類2年、農学部進学予定)と乙川文隆さん(文科一類2年、法学部進学予定)です。3名の推薦生がそれぞれの関心分野や、本選抜を選んだ経緯、入学後の生活について紹介しました。チャットに寄せられた参加者の反応も確認しながら、個性が伝わる発表が続きます。

大西諒さん(理科一類1年、工学部進学予定)

データサイエンス研究をしたいと、この春より東大で学ぶ大西さん。幼少期からサッカーを始め、ボールから数字へと追うものが変わったのは高校の頃でした。

大西さん「中学まではサッカー漬けの毎日。競技者としてはいったん区切りをつけた矢先、先生からスポーツ統計をやってみないかと誘われたのです」

ちょうどコロナの休校期間とも重なり、友達とZoom上で勉強を開始。サッカーをはじめ、スポーツ領域の定説が本当に正しいのか、データを使って多面的に考察するうち、仮説検証の面白さに没頭します。

そして大学選びです。大西さんの通う高校では、生徒の大半が関西の大学を目指していました。大西さんも例外ではなく、高3の9月頃までは関西の大学の推薦入試を受験するつもりで準備をしていたといいます。

大西さん「志望動機をまとめる段階で、データ領域の中でも分析理論より、応用や実装に関心があるんだと気づきました。それでいろんな大学の研究室のWebサイトを調べるうち、東大のほうが向いているかもと考えが変わったのです」

それからというもの、大西さんの中で東大が第一志望に。本選抜に加え、前期日程も東京大学に出願します。

大西さん「本選抜で入学できて、結果的によかったです。さっそく憧れの先生の授業をいち早く受講したり、ある授業にゲストでいらした先生のお誘いでVRセンターを体験したりと充実しています」

授業外ではア式蹴球部(サッカー部)に所属し、プロレベルのソフトを使ったデータ解析と戦術提案に励むなど、データサイエンス漬けの日々を過ごしています。

高澤美優さん(教養学部3年)

後期教養学部で、国際関係論を学ぶ高澤さんが本選抜での進学を志したのは、高校生の時に駒場祭で本学の教授と話せたことがきっかけでした。

高澤さん「当時はアイルランドへの留学を機に、北アイルランドの紛争問題の研究や、武力によらない国際関係や平和構築に向けた活動に取り組んでいました。教授からはさまざまな観点でフィードバックをいただけて、強い励みに。『この先生から学びたい!』と強く思うようになりました」

東大に入学後は国際法や国際政治をはじめとした国際関係にまつわる講義などを受講。当初は北アイルランドに注目していましたが、3年になった今はアフリカ地域の国際関係に関心を持つようになりました。

高澤さん「高校生の頃の興味の軸が、大学に入ってアップデートされた感覚です。自分の専門だけでなく、周辺地域を研究する先生にも質問や相談ができるのは、後期教養ならではだと感じます」

高澤さんは今後、在学中に2度の留学を検討しているところです。いずれも東大のプログラムや制度を活用したものです。

高澤さん「ひとつはオックスフォードのサマースクールへの参加で、もうひとつはロンドン大学東洋アフリカ研究学院との交換留学です。サマースクールは支援企業から奨学金を受けることができ、交換留学では1年間じっくりとアフリカの地域研究をするつもりです」

将来は国連での勤務を視野に入れ、持続的平和の実現に向け邁進する高澤さんです。

岡夏希さん(文学部4年)

中学生で植物画を描くことに目覚めてから、世のあらゆる芸術が文化や宗教、歴史や科学的事実の影響を受けていることに気づいた岡さん。冒頭あいさつに登壇した秋山先生の著書を読み、西洋美術史に興味を持ったことも東大進学の動機となりました。

岡さん「自分は関心領域を探究する場として、たまたま東大が合っていただけ。大学の知名度に翻弄されることなく、“やりたいこと”に照らし合わせて学ぶ場を選んでほしいなと思います」

岡さんが本選抜で入学して最も魅力を感じたことのひとつに、1、2年のうちから文学部の講義に参加できる早期聴講制度があります。

岡さん「文学部の場合、先取りで上の学年の講義を取っても単位として認められません。けれども“その年限りの講義”も多く、翌年は内容が変わるケースも。興味のあるものは当該学年を待たずに聴講できるので、すごく充実しています」

大学に入学してからというもの、京都や中国地方、イギリスなど各地を回り、できる限り現地で本物の芸術に触れ続けてきた岡さん。さらに東大付属の植物園や博物館での創作や、授業をきっかけに出会ったNPOと展示会を企画するなど、活動の幅を広げています。

岡さん「教授との距離も近く、やりたいことを試せるチャンスに溢れているのが東大です。見聞と経験を広げる開拓精神が、かえって専門を深める視点を養うと感じています。推薦生だからといって、特別なレールが敷かれているわけではありません。自分からガツガツと切り開いて、仲間と機会を増やしていってください」

4年生になり、卒業論文を想定しつつも、宗教学や社会学など美術史の範疇にとどまらない学びを続けているところだといいます。
 

「自身が語ることに責任が持てるか」が大事

5分間の休憩を挟んで、推薦生との交流タイムに移ります。高校生の頃の過ごし方や進路を決めたときの話など、中高生の疑問に推薦生が答えるイベントのメインプログラムです。中高生と推薦生の組み合わせで、20近くのグループができました。

植阪先生「未来の先輩でもある推薦生にぜひ、何に興味を持ち、どのようなことに打ち込んできたのかを聞いてみてください。きっとその熱中ぶりに、ビックリすると思います!」

ここではグループでの対話の一部をご紹介します。

高校生A「どのようにして、志望学部を決めたのですか?」

  • 今はMOF(金属有機構造体)技術の社会実装の研究を企業とも連携しながら進めています。高校のときから興味のある分野で、進むなら工学部か医学部と考えていました。最終的には研究室のWebサイトを見て、工学部に決めましたね。本当に学びたいことが、実は他の学部で研究していたと入学後に知るのは悲し過ぎる。学部や学科にとらわれず、やっぱり研究室やゼミレベルで検討するのが大事だと思います

高校生B「求める学生像に、『卓越した能力』とありました。推薦生のみなさんは、受験時に専門的な知識をどの程度持っていたのでしょうか」

  • 当時はいろいろな実績を話していたけど、今振り返ると、大学と高校では、探究できるレベルが違う。自分の場合は、選考では成果よりも意欲を評価してもらったのかなと思います

高校生C「ボランティア団体を立ち上げて、こども食堂を運営しています。子どもの貧困やボランティアに興味があって、将来は政治家になりたいと考えています。今は法学部志望を検討しているところです」

  • 私も高校の頃に学生団体を立ち上げ、地域交流や国際交流に参画していました。一方で小さな頃から芸術に興味があって、人の心を動かす効果を活かして国境を越えたつながり築けたらと思い、後期教養では表象文化論を学ぶ予定です
  • 私はまちづくりに興味があって、最初は都市工学や建築などの分野を考えていました。でも地元の小学校の統合プロジェクトに携わって、視点が変わった。学校教育や地域教育からまちづくりを探究したいと思うようになって、教育学部を志望しました。子どもの貧困やボランティアも、いろんな角度から研究できそうですね!

高校生D「宇宙に関心があるんです。でも今の時点で宇宙の研究をしているわけではなく、数学の勉強に熱を入れている状況です。それでも本選抜で受験できると思いますか」

  • 宇宙って地学、工学からバイオまで領域が広いから、これまでの数学の勉強が今後学びたい領域とどうつながりがあるのか、なぜ宇宙なのかを考えてみるといいのかも
  • 同期の推薦生に、葉っぱを使った水質改善の研究をきっかけに司法や行政に興味を持つようになって、法学部に進学した学生もいます。何が宇宙への興味を突き動かすのか、自分としっかり向き合ってみて!

高校生E「推薦生のお二人は、大学でもスポーツを続けられています。大学の運動部って、なかなかハードな印象があるのですが…」

  • 大学だと部活のほかにサークルもあります。運動部は高校の部活動に近いかも。大会やリーグ戦に向けしっかり練習するし、確かに大変かもしれません。サークルは団体によって本当にまちまち。ゆるいところから部活に近いところまであるから、新歓(新入生歓迎)期間に確認しておくといいでしょう。私はサークルに所属していて、きちんと練習するほうかな。でも用事があるときは休めるし、無理なく活動できています
  • わたしのサークルも練習のほかに筋トレもするし、結構活発かも。大学は学部や学年によって時間割が変わります。1年のときはほとんど余裕がなかったけれども、2年の今は比較的ゆとりがあるから練習に打ち込めていますね

30分間の交流はあっという間で、まだまだ話し足りないというグループも。全体でのプログラムはいったん終了し、希望する人は「情報・数学」「法律・政治・経済」など10の研究テーマ別に分かれて推薦生との交流が続きました。関心の近い中高生と推薦生が一緒になることで、ニッチな話題で盛り上がる一幕も。中高生からは、進学後の履修や研究についての質問が多く寄せられていました。

終始トピック満載で構成された今回の説明会。発表や対話を通じて、参加した中高生たちは推薦生のコメントに大きな刺激を受けたことでしょう。閉会時には笑顔で退出する中高生の姿が印象的でした。
 
【参考リンク:今後の説明会の開催日程など、学校推薦型選抜の各種情報はこちら】
東京大学ウェブサイト:https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_26.html

取材/2023年6月
取材・構成/たなべやすこ