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東大だからここまでできた 卒論・卒研に没頭できる理由―キミに伝えたい 東大生と卒業論文・卒業研究(3)

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この春に卒業した東大生4人による卒論座談会。最後は、「卒業論文・卒業研究(以下、卒論・卒研)における東大らしさ」に焦点を当てた話題に発展しました。学部生でも思いきった研究ができるのが、東大の醍醐味。また4人は、好奇心旺盛な周りの学生に影響を受けたことで、さらに研究に力が入ったと語ります。
第1回 激論! わたしにとっての卒論“論”
第2回 これぞ東大4年生のリアル!“卒論イヤー”の過ごし方

PROFILE

穗原充さん 教養学部教養学科地域文化研究分科ロシア・東欧研究コース卒業 卒論テーマは『モスクワ市営地下鉄の役割の変化 --スターリン期とフルシチョフ期』。春からは大学院に進学。
高木美咲さん 教養学部 学際科学科地理・空間コース卒業 卒論テーマは『川崎港における外貿コンテナ機能の変遷と港湾間連携』。春からは民間企業に就職。
長原颯大さん 工学部マテリアル工学科卒業 卒論テーマは『ゲルにおける負のエネルギー弾性:分子動力学計算による起源の解明』。春からは大学院に進学。
脇山由基さん 理学部生物学科卒業 卒研テーマは『縄文人のゲノム解析』。春からは大学院に進学。

外部から先生を招聘! 東大ならではの研究の本気度

――研究を進める中で、東大でよかったなあと感じたエピソードを教えてください。

脇山 他の大学を知らないので単純な比較はできませんが、縄文人ゲノムを解析できたのは東大だからなのかなと感じるところはありますね。縄文人骨のような古い骨からゲノム情報を取り出すのは、技術的にも資金的にもとても大変なことなんです。そのような重要なデータを卒業研究で扱うことができたのはとても貴重な経験になりました。
それから、解析で困ることがあったときに相談すると、先生はすぐに解決のための助言をくださるので、やっぱり先生はすごいなぁと思いました。



卒論・卒研が完成するまでの長く短い1年を振り返ってくれた、(左上から時計回りで)長原さん、脇山さん、穗原さん、高木さん。

穗原 先生方のサポート力というか、手厚さはすごいですよね。私の場合、自分のやりたいモスクワの地下鉄の研究は世界的にも珍しく、日本で同じような研究をしている研究者ももちろんいない。でも指導教員の先生に相談したら「やってみなさい」と背中を押してくれました。先生の専門はイスラエルの社会学的見地からの研究で、モスクワの地下鉄などまったく専門外。それでも私が調べたものや、まとめたものを持って行くと、いつも丁寧にチェックして的確なアドバイスをくれました。
あと、どうしても学びたいことがあったときは、コースの制度を使って新潟から専門の先生を呼んで集中講義を開催してくださったこともありました。

脇山 卒研のために学外から先生を呼べるんだ! 先生方のネットワークもすごい…!

高木 私も先生のネットワークに別の意味で助けられました。指導教員の先生が政府の委員会に参加していることもあって、官公庁に調査の依頼をしたときに、先生の名前を出したら話がスムーズに進んだり、役所の方にお話を聞けたりしたことはありがたかったです。
あとは、東大の卒業生のネットワークがあって、そうした人のつながりから研究が進んだ部分もありましたね。

専門分野の垣根を越えた助け合い 友達は貴重な存在

――長原さんの研究室は、装置を新しくしたそうですね。

長原 高分子のシミュレーションするのは、私の研究室では初めての試みでした。そのため1台98万円もする、新しいMac Proを2台入れてもらいました。



長原さんの研究室に鎮座する、98万円のMac Pro。
複雑なシミュレーションには高性能のコンピューターが必須なんだとか。(撮影:長原颯大)

全員 これが98万円のコンピューター・・・!

長原 ところが、PCの設定が上手くいかないとシミュレーションのための計算を始めることすらできないんですよね…。それで理学部の情報学科にいる友達に「ランチおごるから何とかして~」って相談したら、ものの5分で解決してしまいました(笑)。

穗原 友達に研究の話をしても、奇異な目で見られないところも東大のいいところだと思いますね。僕も気づいたら1時間、2時間と研究の話をすることがあります。自分が話したことを友達が勝手に整理して、いろんな角度から質問してくれるから、いつも新しい発見がありますね。話が広がった話題は深掘りする価値があるなとか、研究のバロメーターになっています。

長原 そうそう。東大には素晴らしい先生方が揃っているのももちろんだけれど、持つべきものは友だなと。悩んだときに聞いてもらったり、逆に相手が困ったときには助けたり。話しているうちに、「あ!」って自分で気づくこともある。1人で抱え込んで精神的に参ってしまわないようにするうえでも、研究のことを話せる友達の存在は貴重です。

推薦生と一般生の座談会

推薦入試で工学部に入学した長原さん。
推薦生の同期とも、よく研究の話をするんだとか。(写真提供:長原颯大)

高木 友達の話を聞くと、自分のモチベーションアップにもつながりますよね。私は複数の研究室合同で卒論ゼミがあったから、中間報告を聞くのも楽しみでしたね。私が学んでいた地理学は、特定の産業の地理的な分布を研究することもあるんですが、そうした切り口から、ショッピングセンターや、成人用ゲーム産業を研究テーマに取り上げる人などもいたんです。自分だったら目を向けることもなかった分野のことを究めている人がいると知って、学問の広がりを感じました。

脇山 友達とはよく研究の進捗の話になりました。発表データが揃ったと友達が話しているのを聞いて、お尻に火が付いたタイプ。今年は新型コロナの影響で研究が例年通り進められなかったけど、それでもがっつり卒研に取り組んでいた人が多かったんじゃないかな。発表の1、2か月前の時点で研究が進んでいる人がいると、ドキっとさせられましたね。

日ごろの授業や経験が研究の素地になる

――卒論や卒研に役に立ったと思う授業や実習はありますか。

長原 自分が研究室を決める手立てとなった、UROPという前期課程の研究入門授業(集中講義)がおすすめです!先生のサポートを受けながら、計画を立てて研究を進め、最後はレポートや発表の形でアウトプットするので、卒論研究に近い体験ができます。単位として認定されるし、研究する期間を先生と相談して決められるので、自分のペースに合わせて研究をすることができますよ。
去年は新型コロナ感染症で中止になってしまったけど、復活したらぜひ受講するといいと思います。

脇山 研究を早期に体験できるプログラムはいいですよね。私はUROPではないですが、駒場で研究室を体験できる集中講義を受講しました。DNA抽出の操作を見せてもらったり、大腸菌に遺伝子を入れる操作を体験したり。道具の使い方やノートのまとめ方もそこで身についたのでよかったです。
卒研は新型コロナもあって、試薬を使った操作や培養を伴う実験ができなかったので、駒場で基本的なことを体験できていたことが大学院での研究につながると思います。

――教養学部のお2人はいかがですか。

高木 私の専攻は必修科目が多くて、すべてが卒論に関係していたと思います。特に地図の描き方は、1年半ほどかけて教えてもらいましたね。学生9人に先生が1人つく形で、地図を描くのに使うパソコンも、1人1台ずつ研究室のものを使わせてもらえました。3、4年生の後期教養の講座を受講していなかったら、卒論も実のあるものにならなかったと思います。


高木さんが作成した川崎港の一部の地図。3年生からこつこつ学んできた製図の技術が活きた。
(画像提供:高木美咲)

穗原 私も後期教養の話になりますが、どの授業がというよりも、教授との距離がググっと近づいて、関係を築けたのは大きかったですね。受講しているのが私ともう1人だけみたいな講義もあったから、相手が休むとマンツーマンなんですよ(笑)。オンラインの講座にZoom(オンライン授業で用いる、ビデオ会議システム)の操作のアシスタントで入って、学生とは違う立場で先生と関わったりもしました。
その分野なら知らない人はいないというような、凄い先生に対しても怯まずにコミュニケーションを図れるようになったのは収穫でした。

想定外もポジティブに 学びを深める貴重な機会

――まだまだ聞きたいお話がたくさんあるんですが、時間になってしまいました。最後に、もし卒論を書く前の自分に何か伝えるとしたら? ひと言ずつ教えてください。

長原 研究活動って、絶対に思ったとおりにいかない。うまくいかないときに、それをどう修正したらいいかというのも大事だけど、そうすると、研究したいと張り切っている人ほど穴にハマってしまう気がする。辛くなったら、時の流れに身を任せて、新しい気づきや意外な方向へ進むことを楽しんでほしいな。

脇山 そうだね。想定外のことが起こるから、時間の読みは大抵外れる(笑)。時間にも心にも余裕をもって取り組むのが大事ですね。

穗原 私は、先生にはしっかり頼りましょうと伝えたいです。多い時は週1のペースで、毎回1、2時間、先生に卒論の相談にのっていただいて、そのおかげで何とか卒論として研究を形にすることができました。あとは、授業も大切に。ゼミ系の授業で発表した内容は、後から卒論でも活用できたので。

高木 研究者になるつもりはなく、大学を出たら就職したい、やりたい仕事があるとなると、「なぜわざわざ研究を?」って感じるかもしれない。だけど学問に向き合い、いろんな世界を見たり文献に触れたりすることで、たくさん考えるようになるし、幅広い視点で物事を捉えられるようになる。こうした力は社会に出てからきっと必要になるから、卒論にチャレンジしたことは貴重な経験でした。東大という、学びにのめり込める環境に身を置けたことはよかったなって思います。

オンラインでありながら、予定の時間を超過するほどに白熱した座談会。同じ東大生でも、学部や専攻による考え方や卒論を通じて得た体験の違いにそれぞれ驚きながらも、楽しみながら研究にのめり込めるのは、東大生の共通点と感じていたようです。
穗原さん、高木さん、長原さん、脇山さん、興味深いお話をありがとうございました!

2021.6.11
インタビュー・構成/「キミの東大」企画・編集チーム