「今年いちばん笑顔になったこと」―ちょっとひといき ちょっとひととき(15)

2025.12.23

東大生コラム

テーマを絞って発信する東大生のコラム企画

第15回目のテーマは「今年いちばん笑顔になったこと」。今年も残り1カ月を切りました。今年1年を振り返っていちばん笑顔になったというエピソードを教えてもらいました!

屋上に咲いた笑顔の花火

農学部6年 獣医師の卵

中高生の頃なら、校舎の屋上は青春の舞台になってきたはずだ。ちょいワルめの生徒が溜まっていたり、定番の告白スポットになっていたりなど、様々なドラマがあったに違いない。しかし、私たち大学生にとって校舎の屋上は、単なる最上階以上の意味を持たない。
たった1日を除いては……。 その1日というのが、隅田川花火大会の日である。実は弥生キャンパスにある農学部7号館A棟の屋上からは、隅田川花火大会の花火がよく見えるのである。したがって、この日だけは、屋上に多くの農学部生が集まる。かくいう私も、1日のラボ・ワークを終えたあと、学科の同級生たちを誘い、わいわい楽しんだ。屋上には農学部関係者しか入れないため、これは学生の特権である。同じ黒板を共有して勉学に励む仲間たちと、同じ空を共有して花火を見たのである。このように、青春を十分に楽しめないまま大人になった私たちが1日だけ青春を楽しみ、笑顔になれる場所こそが、大学生にとっての校舎の屋上なのである。

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?東大から見るか?

 

溢れる感謝を込めて

法学部3年 りくもん

今年は私自身、何事にも全力で打ち込めた一年だったと思います。特に、英語ディベートサークルでは、練習に参加したり大会で遠征する機会も増え、大学を超えて多くの仲間と親交を深められました。全力で打ち込めたからこそ「楽しい」と思える機会も増え、そのような環境を作ってくれた周りのみんなに本当に感謝したいです。 今年いちばん笑顔になったことは、英語ディベートの大会後に突然にサプライズを食らったことでしょうか(笑)。「日頃の感謝を込めて!」と、後輩たちがレンタルスペースを飾り付け、ケーキやプレゼントを用意してくれました。 案の定、私が鈍感すぎたせいで、直前までサプライズの存在に気づくはずもなく、後輩たち曰く「想像以上の大成功」だったようです(笑)。確かに、私は大会の運営などロジ部分を担うことも多いですが、まさかこんな形で感謝を伝えられるとは、また私と一緒に活動することを楽しんでくれているとは思わず、すごく幸せな時間でした!!


「楽しい」の一言では収まらないかもしれません(笑)

 

日本一にチャレンジした2025年

農学部4年 なぎさ

2025年、私は人生最大の挑戦となった「富士山登山」に挑みました。運動習慣も登山経験もほとんどなく、ずっと憧れていたものの踏み出せずにいた私を連れ出してくれたのは、大学で仲良くなった友人たちです。雑談の中で登山の話題が出たことをきっかけに、その場で挑戦を決意しました。 登山当日は、台風接近の不安を抱えたままスタート。1日目に数時間登った後、山小屋で6時間休憩し、夜10時から再び登り始めました。標高が上がるにつれ空気は薄く、気温も下がり、体力はどんどん奪われていきます。あまりの辛さに記憶が薄れるほどで、何度もあきらめかけましたが、友人たちの支えでなんとか山頂へ到達しました。 暗闇の空が徐々に色づき、太陽が昇った瞬間、言葉にできない感動が込みあげ、涙があふれました。大学4年間で最高の思い出のひとつとなったこの経験は、これまでの辛さが吹き飛ぶほどの価値ある挑戦でした。富士山に登ってみたいと思っている方は、ぜひ一歩踏み出してみてください。


日の出までずっと見つめていた一生忘れない景色

 

ミラノの街角にて

法学部4年 えいさく

私は2025年6月までの1年間、イギリスに交換留学をしていました。その最後の3カ月ほそぼそ旅をしていた道中、イタリアはミラノの街を散歩していたとある夕方のこと。レストランのテラス席からは賑やかな話し声が聞こえてくる中、運河沿いの石畳の小道を歩いていると、突然、視界を横切ったのは見覚えのある独特のフォルム。 思わず目で追うと、そこには赤いキャップに黒いボディ、なじみ深い「しょうゆ差し」の尊いお姿。巨大な着ぐるみがてくてく歩いているのです。ミラノの街角を堂々と練り歩くしょうゆ差しに、通行人もレストラン客もみんな二度見。どうやらしょうゆ差しさんも写真を撮られて、ずいぶんとご機嫌な様子。あまりの場違い感と、堂々とした歩みが妙にかわいらしくて、私も思わずぱしゃり。思わず頬がゆるみます。長旅の途中、まさか歩くしょうゆ差しにお目にかかれるとは思いもよりませんでしたが、今日はもう何も考えなくていい日と思って、その日はとてもよく眠れました。


歩くしょうゆ差し

 

節目の日 大切な人に感謝を

文科三類2年 FLUFFY

今年の秋、節目となる20歳を迎えました。これまでの誕生日とは少し違い、20歳になるというのはどこか特別な気持ちがしました。平日だったので日中は大学に向かい、いつも通り授業を受けて家に帰り、ドアを開けると両親からブーケのプレゼントが!私の好きなピンク色のお花のブーケを贈ってもらいました。お花の爽やかな香りはいつ感じても大好きな匂いです。部屋にはバルーンやガーランドで飾り付けもしてくれていました。夜には両親と初めての晩酌を楽しみ、お酒の味を初体験。ワインは私の想像とは少し異なった大人の味がしました。いつかワインを楽しめるような大人になりたいと思います。 今年は成人式で振袖を着る機会があったり、お酒を飲めるようになったり、と改めて20歳になったことを実感する機会が多くあります。自分が一つ歳を重ねたことをうれしく感じるとともに、私を育ててくれた両親、家族にも改めて感謝を伝えることのできた1日になりました。いちばん幸せを感じ、笑顔になった瞬間です。


誕生日当日。ブーケの中でもカーネーションが特にお気に入りです!

 

つられ笑い

人文社会系研究科2年 Sophie

今年の夏は、二か月を海外の語学学校で過ごした。二十歳もいい加減に過ぎたところで、中学英語のごとくみっちりと学ぶのは、なかなかに新鮮な経験だった。 それだけの期間を外国で過ごすと、いろいろな国の人と交流しながらも、数少ない日本人参加者同士はやはりけっこうなかよくなる。そうしてなかよくなった一人が、ずいぶんよく笑うひとだった。たとえば小学校時代のクラスメイト作のしょうもない替え歌なんかを彼女相手に披露すると、けらけらとよく笑ってくれる。『旅立ちの日に』の「いま(いま)別れのとき」を「ピーマン(ピーマン)わかめのポッキー」と全部食べものにした替え歌とか。 極めつけはお笑いコンビのすゑひろがりずがYouTubeで披露している、瑛人『香水』の古文カバー。共同キッチンで料理をしながら「丑三に不意を突きては(夜中にいきなりさ)」というその冒頭部分を私が口走ると、ものすごく笑ってくれて、言った私もつられて笑ってしまった。大笑いして、結局サビにもオチにもたどり着けなかった。 夏以来、すこぶる体調がいい。笑いはいちばんの良薬だ。

共同キッチンでうまく焼けたスパニッシュオムレツの朝ごはん

 

七夕の願いと特殊相対性理論

人文社会系研究科1年 M.O

梅雨もそろそろ明けたキャンパスに、先週まではなかった、短冊が所狭しとぶら下がった笹がありました。白紙の短冊と筆記用具も用意されていて、誰でも願い事を書けるようになっています。 そうか、そろそろ七夕かと思いながら近づいてよく見てみると、笹には織姫(こと座のベガ)と彦星(わし座のアルタイル)まで地球からそれぞれ25光年、16光年かかるという図解が書かれていて、その下に「お願い事は光の速さを超えられません。16年後、25年後の自分に向けてお願いをしなさい」との文字が。 世の中のあらゆる物が光の速さを超えることはできない、という特殊相対性理論は知っていたけれど、夜空に祈った願い事も光より早く伝わらない、なんて発想は全然なかった。このキャンパスのどこかいる誰かのウィットとユーモアに感心しながら、私もなにか願い事をしようかなと、「今学期の単位が全て取れますように」と書……こうとして、この願いが届くころには今学期が終わっているどころか恐らく卒業していることに気付き、苦笑いしたのでした。

願いが届きますように

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