東大卒業生インタビュー・組織人事コンサルタント―自分で決めることが幸せの第一歩。東大では、人生の選択肢をたくさん見つけられました
東大卒業生のいま
2019.12.24
2019.05.29
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東大卒業生インタビュー
東大生の卒業後の進路をお伝えするインタビュー。今回は、卒業後に日本経済新聞社の記者として働き、結婚や妊娠、出産を経て、フリージャーナリストとなった中野円佳さんをご紹介します。東大での学びや経験を活かして、中野さんが歩んできた道のりとは?
PROFILE
氏名: 中野円佳さん
出身高校: 筑波大学附属高等学校(東京都)
学部・大学院: 教育学部、教育学研究科 比較教育社会学コース(博士課程在籍中)
卒業後の進路: 教育学部卒業後、日本経済新聞社で記者として活動。立命館大学大学院で修士号を取得後、退職し、フリージャーナリストとして東洋経済オンライン、Yahooニュース個人などで執筆活動を展開している。現在はシンガポールで暮らし、現地の日系企業での記事執筆にも取り組んでいる。
――現在お仕事の傍ら、東大の博士課程に在籍していらっしゃいますが、学部ではどのような勉強をされていたのですか?
入学当初から教育社会学を学びたいと考えており、3年時の進学選択では、教育学部の比較教育社会学コースに進みました。教育社会学に興味をもったきっかけは、幼少期からの経験です。私は、ほぼクジ運で受かったような国立大の附属校に幼稚園から通っていたのですが、制服を着ているだけでご近所のおばさまに「よく勉強したのね」と褒められる状態に疑問を覚えていました。また、高校時代に約1年間アメリカに留学しましたが、何かと「海外では」「欧米では」ともてはやされている他国の制度にも、プロコン(長所と短所)があることを実感し、社会において「学歴」や「学校システム」が持つ意味について考えたいと思ったんです。
――進学先に東大を選ばれたのはどうしてでしょうか?
教育学部に教育社会学の研究室があったことが決め手の1つですね。あとは、中学生のときに友達のお兄さんが東大に不合格となり浪人していたんです。生意気にも「東大のネームにそんなに価値があるのか」と思い、実際にはどうなのか見てみたいと考えたこともきっかけの1つでした。
――希望通り教育社会学の道に進まれたのですね。
大学に入ってみると、「東大合格」がゴールで目的意識がない学生が多いことに失望し、ますます教育制度や教育から職業への移行の枠組みが、人の価値観や言動に与える影響について関心をもつようになりました。
――卒業後のお仕事はどのようなきっかけで選ばれたのでしょうか?
当時は、大学院に進むことも考えていたものの、「一度、自らも働いてみてから」と思いました。人の価値観や言動に影響を与えるのは、教育だけではなく、働いている人にとっては企業の枠組みだったり、メディアでの言説だったりするので、企業の中を見て、そこにある価値観を疑い、発信することで、世の中を大きく変えることはできなくとも、いくらか「マシ」にするようなことがしたいと思ったんです。もともと、書くことが好きだったこともあって、企業内部への取材に行くことができる日本経済新聞社の記者になり、仕事に没頭していたのですが、結婚や妊娠、出産を経て、働く女性がおかれた環境について疑問を抱くようになり、卒業してから5年後に、再びアカデミックな領域に戻ることになりました。
――どのような経緯で、今に続くジャーナリストのお仕事を始められたのでしょうか?
第一子の育休中に立命館大学大学院に通い、修士論文をまとめました。その論文が育休復帰後に『「育休世代」のジレンマ』という本になったことから、自分の名前でもっと発信をしたいと思ったので退職しました。その後、「チェンジウェーブ」という会社に転職し、2年間、企業のダイバーシティ研修などのお手伝いをしながらジャーナリストとして発信をしていたのですが、夫の転勤に伴い、完全にフリーになって、現在、東大の博士課程にも所属しています。
――ご家族の転勤でフリーになられたということですが、働く場所についてはこだわりはなかったのでしょうか?
特になかったと思います。さまざまな経験をしたくて、地方や海外にも行ってみたかった一方で、東京で経済のど真ん中を取材したい気持ちもありました。結局、自分の転勤はないまま日経新聞は退社し、現在は、夫の転勤に帯同してシンガポールに住んでいます。高校時代は1人でホームステイをしていたのですが、家族とともに海外に住むと、子どものつながりでコミュニティに入れてもらえることもあって、また違った海外を経験できていると感じています。物書きの仕事はリモートで続けていますし、シンガポールでしかできない調査研究も手掛けたいと思っています。
――今のお仕事について考えられたとき、学部での学びとはどのような関連があるとお考えですか?
学びのすべてが仕事や生き方につながっていると思います。特に、社会現象や制度を批判的にみるような教育社会学的な考え方は発信に活きていますね。東大時代の友人とのネットワークも、仕事をしていくうえで、また、さまざまな個人的な悩みを乗り越えて生きていくうえでも、非常に大切なものになっています。一方で、一度社会に出てから大学に戻って、「大学ではこんなにおもしろいことをやっていたのか」と気づくこともたくさんあって、学部生時代に東大のもつリソースを最大限活用できていたかというと、その価値に気づいていないことも多かったと感じます。
――仕事をしている今だからこそ言える、高校生・受験生へのメッセージをいただけますか?
東大で学んだことやネットワークがすべて活きているとは言いましたが、東大でなくてはそれらが得られないということはないし、逆に、東大に入りさえすれば自動的に得られるわけでもないと思います。東大に入れば、周りは全員東大生ですからネームバリューなんかないし、東大を出てから「東大卒」を使うこともあまりありません。入ることを目的化せずに、その後何をやるか、夢を膨らませて大学選びや受験勉強をしてみてはいかがでしょうか。