【開催レポート!】2021年度 第1回 学校推薦型選抜オンライン説明会―現役推薦生と交流しよう

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【開催レポート!】2021年度 第1回 学校推薦型選抜オンライン説明会

東京大学では学部教育の総合的改革の一環として、2016度より推薦入試を導入しました。そして2021年度からは学校推薦型選抜と名称を改め、さらに学生の多様性と研究機関としての学びの充実を図っています。
2021年5月29日、東京大学高大接続研究開発センターでは、全国の高校生を対象にオンラインでの説明会を開催。学校推薦型選抜のねらいや一般選抜で入学した場合との違い、学校推薦型選抜で入学した学生のリアルな声を紹介し、理解を深める機会を設けました。当日は高校生が223名、後日の動画視聴を希望された教員や保護者を含めると総申し込み数は543名にのぼり、学校推薦型選抜に対する関心の高さがうかがえます。本稿では、当日の模様をダイジェストでレポートします。

わかりにくい学校推薦型選抜のポイントを明らかに

冒頭は、東京大学副学長であり、入試改革を担当する武田洋幸先生の開会の挨拶から始まりました。武田先生は「学校推薦型選抜を通じて、本学の教育研究の分野で卓越した能力を持つだけでなく、社会やさまざまな事柄に対する強い関心、学ぶ意欲の高い人にも来てほしいと思っている。これまでも、学校推薦型選抜で入学した意欲的で高いポテンシャルを秘めた学生たちが、学内外で広く活躍している。学校推薦型選抜は一般入試と異なる準備が必要になるが、自分を客観的相対的に見つめ直す貴重な機会となる。今日は推薦生との交流を通じ、過去に推薦で入学した方がいない高校の生徒のみなさんにも、学校推薦型選抜の本当の姿をお伝えできるのではないか。今回を機に、一人でも多くのみなさんに学校推薦型選抜にチャレンジしてほしい」と、参加者のみなさんにメッセージを送りました。

推薦入試説明会_武田洋幸副学長

続いて本日の進行を務める、高大接続研究開発センター 准教授の植阪友理先生より、学校推薦型選抜の概要を説明しました。総合大学として世界トップレベルの研究機関であることに加え、東大ならではの特色ある教育プログラム、また学校推薦型選抜と一般選抜での入学後の学びの違いを紹介しました。

説明の前半は、東大の特色についてです。ノーベル賞受賞者をはじめ、多方面で活躍する人材を輩出する東大は、世界トップレベルの研究機関としても知られています。東大の研究分野は非常に幅広く、最先端の研究から社会を支える基盤的研究まで、多様な研究教育が行われていると植阪先生は説明します。

植阪先生「一般入試の場合、入学時は教養学部に所属し3年次に学部に分かれますが、推薦生は入学の時点で学部が決まっています。前期教養学部の授業と並行して、各学部の授業も先行して受講できるのが大きな特徴です。またアドバイザーの教員によるサポートを受けながら、自分の関心のある分野に早い段階からアプローチすることもできます」

推薦入試説明会_植阪先生

そして、参加者のみなさんの関心事である学校推薦型選抜の説明に。東大の使命と教育理念、アドミッションポリシーにも触れながら、「本学の総合的な教育課程に適応し得る学力を有しつつ、特定の分野や活動に卓越した能力、きわめて強い関心や学ぶ意欲を持つ人」「本学の教育研究環境を積極的に最大限活用して、自ら主体的に学び、各分野で創造的役割を果たす人間へと成長していこうとする意志を持つ人」など、東大が求める学生像と学校推薦型選抜の基本方針を明らかにしていきました。

ここで推薦入試開始時より制度構築に関わる、高大接続研究開発センター特任教授の高橋和久先生から、求める学生像についての解説が入ります。学校推薦型選抜の本質を示す内容で、高校生だけでなく、学校関係者や保護者にとっても参考になるものでした。

高橋先生「東大の一般入試は受験科目も多く、いわゆるオールラウンダーが入りやすい側面があります。しかし中等教育段階でやりたいことが明確になっていて、必ずしも東大の前期入試向きではないかもしれないが、東大の求める学生像に合致する人はいるのではないか、オールラウンダーだけでいいのかという反省が、学校推薦型選抜につながっています。中等教育での学業、校内外での活動、経験が本人の意欲や能力、人格などにどう反映されているのかを示していただくことが、学校推薦型選抜のカギとなります」

続いて、選抜方法に関しての説明となり、提出書類については詳しく触れられました。学部によっての違いはありますが、在学中に執筆、発表した論文や総合的な学習の時間での資料、各種オリンピックやコンクールでの成績、語学力の証明などはいずれも精力的な活動の根拠となるものです。しかし、昨年から新型コロナ感染症の影響で各種コンクール等の多くは中止となっています。不安に感じている高校生がいることを想定し、東大では各学部長から、提出書類に対するメッセージを出していることに言及しました。

植阪先生「学部により求める書類や資料は異なります。また各種オリンピック、コンクールなど公に認められた証明は、活発に活動してきたことを証明するものではありますが、新型コロナ禍以前から必須のものではありません。自分のやりたいこと、学びたいことを突きつめ、その意欲や背景を別の形で証明できれば、学校外での賞などの実績がなくても、ぜひ出願を考えていただきたいと思います」

推薦入試説明会_植阪先生2

 

現役推薦生が語る3通りの入学ストーリー

学校推薦型選抜の概要をつかめたところで、次は現役の推薦生が登場。学部と学年の異なる4名が、学校推薦型選抜と入学後の生活を自身の体験を交えながら発表しました。

田中美月さん(文学部3年)

秋田県出身の田中さんは中学から文芸活動を始め、高校では生物部に所属。友達と同人誌を発行する傍ら、シャーレに培養した菌の数を数えながら「この結果が出たのはなぜか」「これを証明するには、どんな条件で実験しようか」と思索を巡らせる毎日でした。文系、理系どちらも面白く、進路も決めきれずに悩んでいた2年生の頃、担任の先生から「あなたの個性を活かすなら、面白い人が集まる環境を選ぶべき」と、東大の推薦入試を紹介されました。

出願時に焦点になったのは、学部の選択でした。大学では芸術を学びたいと考えていた田中さんは、芸術のアプローチが多様であることに気づきます。教養学部なのか文学部なのか、それとも生物学的見地や理学的な観点から芸術に切り込んでいくのも捨てがたい。各学部の募集要項を読み込んだ結果、文学部への志願を導き出しました。

田中さん「求める学生像に『自然科学、人文科学といろんな学問領域に深い関心を持ち、自分の研究を進められる人』とあり、『これは間違いない、わたしのことだ…!』と強く感じたのです。自分の活動から学生像と合致する部分を示すことができ、精神的にも負担の少ない進路の決め方だったと思います」

入学後はいろんな授業を受けながら舞台サークルにも所属。舞台美術を担当したことをきっかけに、人文学科の美学芸術学の専攻を決めました。大学に入ってからの学びや経験により興味が少しずつ移り変わり、学びたいことの輪郭がはっきりしたと田中さんは言います。文学部の授業を早期履修するにあたり、選択肢の多さに驚いたそう。先輩や友達の話を聞きながら、自分の関心に近い美学や芸術学の授業を選んでいきました。周りの活動的な推薦生に刺激を受け、プライベートでもネットラジオの配信やアート作品の創作活動に勤しむなど充実した日々を送っています。

田中さん「推薦入試で経験した自分と向き合い自己プロデュース力を磨くことは、他の場面でも求められることです。高校から推薦をいただいて受験する立場になったら、『私には何もない』と謙遜するより『私にはこんな強みがある、入学後もこういうふうに活躍できる』とアピールするほうが、先生方も面白く話を聞いてくれると思います。日ごろからいろんな興味を持って活動し、自分なりの武器を持てるようにしましょう」

推薦入試説明会_学生スライド1-2

毛防子璃奈さん(理科二類1年、農学部進学予定)

今春神奈川県の公立高校を卒業した毛防子璃奈さんは、クジラやイルカなどの鯨類が大好き。海洋や動物の生態、国際面、政治面といった、鯨類を取り巻く環境について広く学びたい思いから中学生で既に東大への進学を考えていました。高校の頃は、日本生物学オリンピックや科学の甲子園などにも参加。最も印象に残っているのは、江ノ島水族館の水槽コンテストで未来の海と生物を表現したことだといいます。将来はバイオロギングという装置を使って、アカボウクジラの行動や生態を調査したいと思いを馳せます。

毛防子さん「『鯨類と人類の持続可能な共存』が私にとって大きなテーマです。みなさんも自分がやりたいと思うことにまっすぐに、進路を決めてください」

推薦入試説明会_学生スライド2

鎌田康生さん(医学部医学科3年)

鎌田さんは鳥取県出身。車いすで生活していた祖母の影響により、医学に興味を持ち始めます。臨床だけでなくアルツハイマー病の研究がしたいと、環境の整った東大を選ぶのは自然な流れでした。高校時代は学内の活動にとどまらず、留学や国際交流プロジェクトにも多数参画。入試要項に記された研究者育成の目的と、「優れた語学力と豊富な国際経験」という条件に合致すると思い推薦入試に挑みました。
入学後は1年次から学部の研究室を回り、実験や研究を行えるのが医学部推薦生の特権です。鎌田さんは既に、アルツハイマー病の原因物質について研究を進めています。また「グローバルリーダー育成プログラム」にも参加し、国際社会での活躍も視野に入れています。

鎌田さん「学業以外にも部活や推薦生とのつながりなど、とても充実しています。新型コロナウイルスで活動が制限されていますが、楽しいこともいっぱいです」

推薦入試説明会_学生スライド4

 

推薦生の本音に触れ、東大と学校推薦型選抜の理解を深める

休憩を挟んで後半戦は、参加高校生がグループに分かれ、現役推薦生と交流の時間です。現役推薦生の高校時代や入試の準備、入学後の生活について自由に語り合いました。最初は緊張気味だった高校生たちも、フランクな推薦生のファシリテーションでどんどん疑問をぶつけるように。ここでは一部をご紹介します。

高校生A「オリンピックやコンクールがあれば実績を証明しやすいですが、それ以外のものでアピールする際のアドバイスはありますか」

      • 私の場合は生徒会で全校にアンケートを取ったときの経験を、レポートにまとめました。このとき書かれていることが事実であると証明できるよう、学校の先生に読んでもらって署名を入れてもらう形で提出しました。
      • 自分のやってきたことを、全部出してもいいと思います。高大連携授業の受講証明、同人誌の作品のコピーとか。ポイントは自分の強みを示す軸を持つこと。『この活動がこう役に立ちました』と軸をうまく結びつけると、アピールできると思います。

高校生B「教養学部と工学部の学校推薦型選抜で迷っています。入学後の学びの違い、研究の違いを教えてください」

      • 工学部には十数個の学科があり、都市計画から材料、化学や宇宙などいろんな分野から選べます。入学後にもっと興味が広がりそうというのであれば、工学部だと選択の余地を残せるのではないでしょうか。また工学部の授業は学科特有の演習があります。私が所属するマテリアル工学科だと、金属を切ったりとかしたり。工場見学に行く学科もあります。
      • 教養学部の最大の特徴は、学際性にありますね。自分の専門を他の分野とどう結びつけるかというのが、ポイントになってきます。そういったところに関心があるなら、教養学部の理系学科もいいのではないかと思います。授業を見ていると、他の学部の人を招こうというものが多い傾向にありますね。学際性が強調されているところだと思います。

質問はこのほか面接対応や東大生の実態、高校生活と受験勉強の両立と、多岐にわたりました。途中で推薦生が入れ替わり、幅広い考えに触れる機会にも。推薦生も高校生当時のことを振り返りながら、親身にアドバイスしていました。

全体のプログラムはここで一区切りし、この後は希望者を対象に、学部別の相談コーナーが設けられました。高校生は関心のある学部を回り、推薦生により踏み込んだ質問をしていました。また既に興味のある分野で研究を進める高校生もいて、推薦生と意気投合する場面も見られました。

盛り上がりも冷めやらぬまま、説明会は終了。参加した高校生からは、推薦生のありのままの姿を知ることができてとても参考になった、学校推薦型選抜を選択肢のひとつとして真剣に考えたい、といった声が聞かれました。

【参考リンク:今後の説明会の開催日程など、学校推薦型選抜の各種情報はこちら】
東京大学ウェブサイト:https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_26.html

取材/2021年5月
取材・構成/たなべやすこ