【開催レポート!】2023年度 第2回 学校推薦型選抜オンライン説明会―現役推薦生と交流しよう
学校推薦型選抜(推薦入試)
2023.08.28
2019.03.04
【よくわかる東大推薦入試】
高大接続研究開発センター・入試企画部門、濱中淳子教授が語る、東京大学の推薦入試の狙いと魅力
東京大学推薦入試(※)の実像を探るべく、前回(インタビュー前半)に引き続き、東京大学高大接続研究開発センター入試企画部門の濱中淳子教授にお話を伺いました。東大推薦入試はどうしてこのような制度になっているのか、推薦入試募集要項の読み解き方、推薦入試合格者の入学後の特徴など、さまざまな疑問にお答えします。
(※現在、推薦入試は学校推薦型選抜に、また大学入試センター試験は大学入学共通テストへと名称が変更されていますが、記事内ではインタビュー時の名称のまま表記しています。)
――インタビュー前編では推薦入試の定員枠が100人程度ということについて触れられましたが、たしかに前期日程試験(一般入試)の募集人数(2960人)と比べると圧倒的に少ない感じがします。これには理由があるのでしょうか。
定員枠ですが、後期日程試験の枠だった100人がそのまま適用されたため、100人という枠となっています。そしてこの100人の定員枠が、さらに学部の規模によって割り振られる。これが各学部の定員枠です。
結果として、法学部・経済学部・文学部・農学部が10人程度、教育学部・教養学部・薬学部が5人程度。工学部は、もともと規模が大きいので30人程度。このようなかんじです。
法学部 | 10人程度 | |
経済学部 | 10人程度 | |
文学部 | 10人程度 | |
教育学部 | 5人程度 | |
教養学部 | 5人程度 | |
工学部 | 30人程度 | |
理学部 | 10人程度 | |
農学部 | 10人程度 | |
薬学部 | 5人程度 | |
医学部 | 5人程度 | * |
(* うち医学科3人程度,健康総合科学科2人程度)
――また、「全国の生徒にチャレンジしてほしい」とおっしゃっていました。一方で、大学入試センター試験で、「概ね8割(720点)以上の得点であることを目安とします(医学部医学科は780点程度)」とあります。ハイレベルの学力を持つ高校生を対象にしていることは、これまでと変わらないですね。
推薦入試の合格者も、入学後は前期日程試験(一般入試)で入学した学生と同じクラスに所属し、同じように前期課程教育(駒場での教養教育)を受けてもらうことになります。早期専門教育という柱もありますが、教養教育は教養教育として受けていただくわけです。ですから東大の授業についていけるだけの学力を備えていることが重要になってきます。センター試験で概ね8割以上としている理由は、入学後の授業のレベルを考慮してのことです。
ただ、東大入学者選抜の現状を踏まえると、センター試験で8割以上というのは、やや緩めの設定とも言えます。高校時代までに打ち込んだ活動や得意分野があり、総合的な学力もセンター試験8割以上の得点をとれるほどはある。希望が広がる高校生も少なくないのではないかと思っています。
――なるほど。では、推薦入試では、具体的にどんな試験が行われているのでしょうか。
これもインタビュー前編の「推薦入試は、いわゆる『学部入試』」という話と関連してくるわけですが、各学部が期待する学生像を選抜するための方法をそれぞれ検討し、実施しているというのが現状になります。基本的に書類審査と面接はどの学部でも行っていますが、面接で聞かれることも学部によって違いますし、また、学部によっては小論文を課す学部もあれば、グループディスカッションを課す学部もあります。
『募集要項』に詳しく書かれていますのでご覧になっていただければと思いますが、もし一言付け加えるのであれば、およそ皆さん、『募集要項』を確認するときは、自分の関心がある学部のページしかみないのではないでしょうか。ぜひ、他の学部のところもみてもらいたいと思います。
というのは、他の学部がどのような要件(条件)・試験を課しているのか。そのうえで改めて自分の進みたいと思っている学部がどのような要件・試験を課しているのか。比較という作業をすることで、出願したい学部が何を求めているのか、よりクリアにみえてくるからです。
たとえば、工学部への出願を考えている方であっても、理学部、農学部、そして法学部、経済学部、教育学部といった、他の学部のページも参照してもらいたいですね。工学部が何を求めているのか、何を考えているのか、明確になる部分もあると思います。
――たしかに、比べてみて初めてわかることというのは、多い気がします。
そうだと思います。また、学部によっては、かなりターゲットを絞った募集の仕方をしているところもあります。
その典型例が医学部医学科です。募集要項で医学科が提示する「求める学生像」には、「生命現象のしくみの解明、疾病の克服及び健康の増進に寄与する医学研究を推進するため、推薦入試枠を医学研究者養成枠と位置づけ、最先端の医学・生命科研究を担う国際的研究者を育成するために活用します」とあります。
そして実際、医学部医学科に推薦入試で入った学生は、研究者養成のための特別カリキュラムに参加しながら学ぶという体制がとられているわけです。一般的にイメージされている「医学部進学」とは違うものなんですよね。
推薦入試をめぐる情報をこれからどう提示していくのかは、本学も探っていきたいところですが、まずは募集要項をおおいに活用し、読み込んで、検討してもらえたらと思います。
――ところで、定員枠100人ですが、毎年定員に達していないようですが。なぜでしょうか。
これは記者会見で本学入試担当の福田理事が答えたことでもありますが、私は、まだ推薦入試に関する情報が十分に高校側、高校生・受験生側に伝わっていないということが大きな理由だと考えています。
「募集要項」を活用し、東大ならびに各学部が推薦入試で目指しているものを理解してほしいと言いましたが、東大自体もメッセージを積極的に伝えていく必要があると思っています。ちなみにこの特集は、そうした判断のうえに編んだものです。ぜひご活用ください。
――なるほど、推薦生たちの生の声というのも、貴重な情報になりますよね。推薦で入学した学生さんにどのような方がいるのか、少し紹介いただけませんか。
そうですね。たとえば、高校時代に多言語を研究し、すでに40言語ぐらい学んだという学生。トイレ研究に没頭した学生。小学生の頃に自宅にビオトープを作った学生…。
――やはりみなさん、個性豊かですね。
いま申し上げたのは、ちょっと目立つ方々だと思いますが、推薦生たちの特徴を知るために、東京大学高大接続研究開発センターでは、追跡調査部門の宇佐美准教授を中心に、アンケート調査を用いた分析も行いました。
データからは、推薦生たちが、前期日程入試で入った学生たちと比べて、きわめて活発で社会的な意識が高い。高校などでもリーダー的な役割をしている人が多い。学びに貪欲。こうした特徴がクリアに抽出されます。
また、推薦生たちに話を聞くと、推薦生たちのネットワークができているようです。様々な領域で飛び跳ねている人たちが互いに交流することでさらに成長していく。そのような状況が生まれ始めているのではないかとみています。
――推薦入試を導入して4年(追記:2019年度時点)が経ちました。東大では、その導入の成果をどうみているのですか?
4回入試が行われましたが、まだ4回しかやっていない、とも言えます。一期生の方も、この4月から4年生になるわけで、まとまった評価は、この一期生が学部を卒業した5年目ぐらいにやるべきではないかと考えています。評価はまさにこれからであって、いまは推薦生たちにいかに豊かな学びを提供するか、推薦入試という制度をいかに強く、意義あるものにしていくのか、といったほうが大きな課題だと理解しています。
ただ、これはあくまで私個人の意見ですけれども、推薦生の学生たちと話していると、本当に個性豊かで、多様な学生がきてくれたな、と感じています。推薦生たちから気づきを得ている教員も少なくないのではないでしょうか。
学生同士だけでなく、学生と教員、職員、つまり東大の構成員全体が、推薦入試と推薦生から刺激を受けながら、強くなっていけばいいなと思っています。ひいては、その姿が、日本の高等教育を模索するための手掛かりになれば…。もう少し先の話ですけれどね。でも、真剣にそう思います。
――ありがとうございました。では、最後に、今後、学校推薦型選抜を受けるには何から始めればいいのか、教えてください。
はい。まず7月に募集要項が本学ウェブサイトで公表されますので、それをご確認ください。そして10月半ばにインターネット出願登録、11月はじめに出願受付、12月あたまに第1次選考(書類選考)結果発表があって、12月半ばに面接等が行われます。その結果と来年1月に行われる大学入試センター試験の結果を総合的にみて、2月上旬に最終合格者が発表されます。
以上が大まかな流れになりますが、ただ、7月の募集要項公表を待つ以前に、「関心をもって取り組んできたことで、自分という人間を説明する」。まずはその準備を進めることが大事だと言えます。学校長の推薦が必要になりますから、学校の先生方に相談してみることも重要です。そして、この特集を読み込むことも(笑)。
多様な、そして意欲ある高校生たちが、本学の推薦入試を活用してくれればと考えています。東京大学は、日本全国からの挑戦を歓迎します!