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東大卒業生インタビュー・高校教員―迷いから道を切り開く力強さ…民間を経て教職の道へ

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東大卒業生インタビュー

東大生の卒業後のいろいろな進路をお伝えするインタビュー。今回は、教育学部を卒業後、民間企業勤務を経験した後に教員免許を取得して高校教員となった岡田直人さんにお話を聞いてきました。東京大学での学びや経験が、卒業後、どのように力となってきたのでしょうか?

PROFILE

岡田 直人(おかだ なおと)さん

出身校:埼玉県立春日部高等学校
入学: 1995年 文科三類入学 → 1999年 教育学部総合教育科学科学校教育学コース 卒業
卒業後:川崎重工業株式会社を経て、2002年から埼玉県公立高等学校教員(英語)。 2016年から埼玉県教育委員会に勤務。
著書: 『名門・県立浦和高校の白熱エネルギー講座』(2017年, エネルギーフォーラム)

―岡田さんは、文科三類で入学、その後、教育学部に進学されたということですが、そのまま教育関係の職業に?

いえ、卒業してすぐには、民間企業に就職しました。重工メーカーの電力・エネルギー部門で、火力発電プラントの営業の仕事です。

―それでは全く教育とは関係なく?

そうですね。経済学部に進んでいれば良かったかとその時は思いました(笑)。ただ、働いているうちに、やはり教育に携わる仕事がしたいと思い、退職して教員免許を取り直しました。その後、14年間学校現場で英語教師として勤務し、その後教育委員会へ。

―教員免許を取り直したということは、在学中は教員になろうとは考えていなかったんですね。

全く(笑)。当時は、社会と教育の結びつきや学校での生徒と教師の関係性に興味がありました。

―教育に興味をもつきっかけというのはありましたか?

明確なきっかけは無かったです。ただ、私が東大で過ごした1990年代後半は、いわゆる「ゆとり教育」の下地になる議論が盛んでした。また、「子どもの権利」を扱った講義に興味を持ったというのもありますね。それで教育学部進学を決めました。

―子どもの権利の講義というのは、前期教養のときですか?

はい。「法I」の講義ですね。そこで初めて「子どもの権利」という概念に出会い、新鮮でした。

―その他に、印象に残っている講義はありますか?

前期教養ですと、第二外国語(当時)ですね。私はドイツ語でしたが、大家と呼ばれるような先生に指導していただいた経験というのは英語教師をする際に役立ちましたし、そのときのクラスメイトとは今でもたびたび会っています。駒場祭では、このクラスで「文III劇場」にも没頭しました。

教育学部進学後は、20人くらいのゼミ形式の授業がほとんどでした。教育学の最先端を行く先生方を相手に議論や発表が出来たのは、今の自分の根幹になっています。

―お仕事をされていて、当時身に付けた知識や技能が役立つことはありますか?

物事を複眼的・客観的に見る力や、その裏付けとなるフィールドワークを中心とした調査手法などは、どのような職業でも役立つと思います。

また、教育学部での学びは、今で言う「アクティブラーニング」そのもので、その経験は「総合的な学習の時間」の授業実践に活かすことが出来ました。発電プラントの営業をしていた経験も活かして、東日本大震災後の電力・エネルギー問題について生徒と一緒に一年をかけて調査研究に取り組みました。資源、経済、歴史的な背景など多角的に調べて、大学の先生に講義をしていただいたり…。実際に発電所の見学にも行きました。

―もう大学の講義ですね(笑)。

自分たちで主体的に取り組んでいるせいか、生徒もよくついてきてくれて。

―自分で関心をもって知識を深めるという、アクティブラーニングの見本ですね。
私も、高校時代から土壌が好きで、集めたり調べたりしていました。そのときに、勉強って二種類あると気が付いて。ただ点数をとるだけの勉強も楽しかったですが、主体的に学ぶ勉強もある、と知らなければ、大学院まで進もうとは考えていなかったと思います。

あ、大学院進学を考えてらっしゃるんですか、良いですね。

―まだ予定ですが(笑)。ただ、その「アクティブラーニング」ですが、難しいものなんだろうなという印象を受けています。まず、生徒が調べたいと思う課題があって、応援してくれる先生と環境があって、はじめて成立することですよね。

たしかにその通りです。生徒の関心も一人ひとり違いますし、すべての授業でそういった学びが出来るわけではない。

―新しい学習指導要領の目標、「主体的・対話的で深い学び」でしたっけ? 簡単なことではないと思ってしまいます。

私は今、フィリピンの学校にアクティブラーニング型授業の導入を支援するという仕事に関わっています。日本やフィリピンのみならず、「生徒が主体的に学ぶ」ための教育改革は世界的な潮流のようですが、一方で、様々な理由から学校教育そのものを十分に受けられない子供たちも世界には沢山います。


フィリピンの子どもたちと

―厳しい経済事情もありますし、主体的な勉強のやり方が分からない生徒や先生だって大勢いますよね。そもそも、小学生が主体的に何かに興味を持つこと自体が難しいと思います。大学生だって難しいのに。

だからこそ、進学振り分けがあることを理由に東大を目指す高校生も少なくないのでしょう。

―私自身は、中学校くらいから土が好きで、漠然と土の研究がしたいと決めていました。そのことで、けっこう周りからうらやましがられて。高校生とか、大学生になっても、「自分の興味があることがわからない」って悩んでいる人ってけっこういるんですよね。

東大のよいところは、そうやって迷う時間というか、興味を探る時間を前期課程で持てることですね。私自身、教育学部に進学するにあたってたくさん迷いました。その後も、教職に就く前は民間企業に就職したり。

ただ、東大生のすごいところは、迷いから道を切り拓く力強さです。悩んで、あ、この道じゃなかった、といつか気が付いても、努力や知性、そして仲間や先達の導きによって、本当にやりたいことにたどり着きます。

―迷うことは必ずしも間違いではないですもんね。本日はありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

2019.2.21
インタビュー・構成/学生ライター・佐藤 咲良