「使える英語」だけが語学じゃない!―東大で学べる外国語 2023 前編

2023.11.10

外国語を学ぶ

#外国語学習 #外国語学習

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東大生、語学を楽しむ

東京大学では、前期課程において「既修」の言語と「初修」の言語を組み合わせ、2つの言語を「必修外国語」として学びます。
一般的には、英語が「既修」で、初めて学ぶ第二外国語としてドイツ語・フランス語・中国語・ロシア語・スペイン語・韓国朝鮮語・イタリア語のうち1つを選んで学習します。また、これら2つの必修外国語に加えて、選択科目では、さまざまな「第三外国語」の授業が開講されており、興味に応じて自由に履修することができます。
今回、東大生にそれぞれの言語を選んだ理由や各言語の特徴などを紹介してもらいました。実際に学んでみないとわからない情報も含めてお伝えします!

東大で学べる英語以外の言語

(2023年10月7日現在 「キミの東大」企画・編集チーム調べ)

フランス語

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    新荘直大さん(人文社会系研究科)
    美食の国、おしゃれの国、芸術の国、みなさんは、フランスにどんなイメージをもっていますか?カフェオレ、クロワッサン、オードブル、オートクチュール、シュルレアリスム…。フランス語を学ぶ喜びの一つは、日常のなかに溶けこんだ様々なフランス語を見つけられることです。そんな発見から、フランスのグルメやファッション、文化へと興味が開けることもしばしば。
    私はフランス文学やフランス映画好きが高じて、文学部のフランス文学科に進学し、留学も経験することができました。ルーブル美術館やオルセー美術館で古今の美術を見て回るもよし、エッフェル塔や凱旋門といった観光名所を楽しむもよし、本場のフランス料理を味わうもよし…。私も留学中に、さまざまな体験をすることができました。フランス語を学ぶことは、必ずやその体験一つ一つをより豊かで味わい深いものにしてくれることでしょう。ようこそフランス語の世界へ! Bienvenue!

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中国語

授業で使用した朗読素材
授業ノート
  • えるさん(文学部・3年)
    中国からの留学生がサークルに入部してくれたことをきっかけに、もっと仲良くなれたらいいなと思って中国語の履修を決めました。始めたての頃は、発音や聞き取りが日本語とは全く違って難しいなと感じていました。しかし、文法構造や中国語の漢字は日本語とかなり似ていて、英語に比べて文法構造がシンプルであることに気づいてからは、親しみやすさを覚えるようになりました。単語や基本的なフレーズをある程度覚えると、街を歩いていても中国人の方が話している内容が理解できることがあって楽しいです。街中での何気ない会話が聞き取れるようになったらもっと面白そうなので、今も勉強に励んでいます。
    母語として話す人の数では中国語は世界一なので、学んでおけば将来役立つ場面がきっとあるのでしょうが、身近なところではサークルの友人と習得した中国語でメッセージをやりとりし合うのを楽しんでいます。いつかは中国語検定にも挑戦してみたいです。

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スペイン語

スペイン語の授業で用いた教科書
スペイン語を学ぶ際に愛用した参考書
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    てっちゃんさん(経済学部・3年)
    私は大学1年生の時にスペイン語を第二外国語に選んだので、スペイン語に関する授業をたくさん履修しました。スペイン語は単語や文の構造など、英語とよく似ていると言われるのですが、授業を受けるほどスペイン語は英語と大きく違うことがわかり、勉強していて非常に面白かったです。
    例えば、スペイン語には名詞に男性名詞と女性名詞がありますが、英語ではこのような分類がありません。また、英語は語順がしっかりと決まっているのに対し、スペイン語の語順は自由度が高いのが特徴です。このように英語と全く異なるスペイン語を学ぶことはとても興味深かったです。
    スペイン語の学習を通して、ラテンアメリカの人と会話できるようになったため、新たな友達を作ることもできました。新しい言語を習得することはとても大変ですが、それ以上の価値があると個人的に思っています。みなさんもぜひ挑戦してみてください!

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イタリア語

  • H.A.さん(文科二類・2年)
    イタリア半島は西洋文明の発祥地の一つだと言われており、そういった文化を学びたい、あるいはイタリアならではの芸術を深く味わいたいと思わない限り、イタリア語が直接的に役立つことはほぼありません。私が後期課程で専攻する社会学の古典も多くがドイツ語あるいはフランス語です。そんなイタリア語ですが、我々にとっては非常に身近な言語であることは言うまでもなく、街を歩けばイタリア語の名前の喫茶店をよく見かけ、月に一度くらいはイタリア料理を食べていることでしょう。
    イタリア語はもとを辿ればラテン語が俗語化したもので、ルネッサンス期からほぼ変わっていません(実は日本語も)。ですから、イタリア語を学ぶことでダンテの『神曲』の世界にまで視野を広げ、旅をすることができます。旅といいましたが、イタリアは風光明媚な地でもあります。中世都市の面影の残る街並みはもとより、地中海の青さもまた美しいと言われます。青という色にも基本bluとazzurroの二通りがあるほど、青さ際立つ地なのでしょう。まずは、遠く離れた長靴の形をした半島のことに想いを馳せてみることが、イタリア語を学び始めるきっかけのひとつだと思います。

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インドネシア語

家にあるインドネシア特産品のバティック
インドネシア語の授業で使用した参考書
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    てっちゃんさん(経済学部・3年)
    私は大学2年生の時に、インドネシア語を第三外国語として履修しました。ほかにもさまざまな言語の選択肢がある中で、インドネシア語を選んだ理由は、親の都合で一時期インドネシアに住んでいたからです。このため授業を受けている際に、よく懐かしさと嬉しさを感じる瞬間がありました。また、改めて勉強するにつれてインドネシア語と日本語の親和性を見つけては、理解が深まっていきました。
    例えば、両言語の母音はかなり似ているので、インドネシア語は日本人にとって発音しやすい言語の一つだと思います。そのほかにも、インドネシア語は日本語と同様に主語をよく省略します。さらに、ほかの東南アジアの言葉と似ているところがあるため、この言語を学ぶことで東南アジアの言語を習得しやすくなりました。
    英語以外の言語を学ぶことは、異なる文化や視点に触れる機会を与えてくれ、自分の世界を広げることにもつながります。みなさんもさまざまな言語をぜひ学んでみてください!

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タイ語

プログラム修了証と現地の先生がくれたミニカード
2週間通ったタイのチュラロンコン大学
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    Pianissimoさん(文科一類・1年)
    私は東大主催のサマープログラムを利用して、二週間タイに語学留学しました。目的は英語能力の向上でしたが、タイのチュラロンコン大学で受けた講義の中で、英語を使ってタイ語を学ぶ機会がありました。タイ語はขอบคุณค่ะ(タイ語で「こんにちは」の意味)というように見慣れない文字で書かれるので、授業では文字は学ばず、発音と言葉の意味だけを学習しました。それでも、トムヤムクンの「クン」が海老という意味であること、カオマンガイの「カオ」が米という意味であることなど、タイ料理の名前を見て、材料が何となくわかるようになったのは良かったなと思っています。また簡単な自己紹介の仕方も学び、実際に現地の大学生とタイ語で交流する機会もありました。タイ語はタイでしか通じないので、英語に比べ有用性が無いと思う人もいるでしょう。
    でもどんな言語でも、その国の人の心を開くツールとして、学ぶ意義があるのではないでしょうか。東大では第三言語としてタイ語を学べますし、留学プログラムもあるので、ぜひタイ語に触れてみてください!

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ヘブライ語

イスラエルの素敵な絵本たち。いつか翻訳したくて学習をはじめました。
ストックホルムのユダヤ博物館にて。少し文字が読めて嬉しいです!
  • 本人
    萩野聡子さん(文学部・4年)
    「ヘブライ語を勉強してます!」と言うと、大抵「どこの国の言語だっけ?」と聞かれ(答はイスラエル)、文字を見せると「見たことない、難しそうー!」というような反応が返ってきます。アラビア語のように右から左に横書きする言語ですし、まあ無理もありません。しかしみなさん、ヘブライ語はアラビア語と違って基本的に文字はつながっていません!少しはとっつきやすそうな気がしてきませんか?
    ヘブライ語は、旧約聖書や死海文書が書かれた言語として有名です。しかし、西暦200年頃に口語としての使用は一度途絶えており、いまイスラエルで使われている現代ヘブライ語は19世紀末頃から人の手によって「再生」された言語で、使いやすさ重視で構築されている分、覚えやすい(はずの)言語なのです。
    昨年、偶然にもイスラエルの作家の短編集刊行記念イベントをオンライン視聴する機会があったのですが、驚いたのはヘブライ語の音やリズムの美しさ。「文字の学習だけで満足してはもったいない!」と、気持ち新たにヘブライ語学習のアプリを起動する毎日です。

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チベット語

私がツォンカパという著名なチベット仏教僧の著作を読んでいるときのパソコンの画面です。左に翻訳を書き、真ん中にはデータベースを開き原文を参照します。右に、ネット辞書を開いて言葉を調べます。
私の翻訳と勉強のノートです。哲学的な概念が出てくる際は、余白を作り、図などを書いて議論を整理します。私にとって、チベット語文献の翻訳と仏教哲学の勉強は隣り合わせです。
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    乾将崇さん(文科三類・2年)
    チベット語には口語と文語の二つがあります。口語は、チベット高原と世界各地の亡命チベット人社会で使われています。現代の人々と対話する上で口語の役割は欠かせませんが、口語は時代に合わせて変化しています。他方、チベット語の文語と正書法は7世紀の吐蕃時代にその原型が成立してから、ほとんど変わっていません。文語の魅力は、文献を読むことでどの時代の人々とも対話できることにあります。
    幸い東京大学では文学部の授業で、Sセメスター(年度前半)に口語のチベット語、Aセメスター(年度後半)には文語のチベット語の授業があり、双方を学べるように設計されています。口語チベット語は方言に富んでいるため、言語学的な興味から履修する人が多い一方、文語チベット語はチベット仏教、モンゴル、清朝の文献で使われていたため、仏教学、東洋史学的な興味から履修する人が多いです。同じ言語でも、学習動機がさまざまです。日本在住のチベットの方とお話しすることに加えて、多様な履修者と語り合えることも、チベット語を学ぶ魅力といえるでしょう。

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ギリシア語

ギリシア語も読める聖書のアプリ
古典ギリシア語の教科書と、かつての自分の奮闘の跡
  • 大
    3days agoさん(法学部・4年)
    3年前の前期、コロナ禍で自宅滞在を強いられた僕は、せっかく生まれた時間を有効活用すべく授業をたくさん履修することにしました。その一つが、第三外国語としての古典ギリシア語です。もともと聖書を読む機会があった僕にとって、ギリシア語で書かれた新約聖書を少しでも原文で読めるようになりたいと思ったのが履修の動機です。完全初学者向けの科目だったこともあり、毎回の授業では、文法事項等の解説よりもとにかく「音読」が重視されました。意味が分からなくとも、ひたすら文章を音読することで、初学者ながら、ギリシア語の雰囲気やリズムを味わえたのはよかったです。ただ、いつも自宅でオンライン授業を受講していたので、家族には「決まった時間になると突然呪文を唱え始めるから怖い」と言われていました(笑)。
    この授業の履修後は、しばらく古典ギリシア語から離れてしまいましたが、今でも聖書のギリシア語版を目にすると、意味の訳出こそできずとも、音読だけはすることができます。口でギリシア語を体得できたのは貴重な経験でした。

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WEB構成/肥後沙結美
企画・構成/「キミの東大」企画・編集チーム