「使える英語」だけが語学じゃない!―東大で学べる外国語 2023 後編

2023.11.10

外国語を学ぶ

#外国語学習 #外国語学習

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東大生、語学を楽しむ

東京大学では、前期課程において「既修」の言語と「初修」の言語を組み合わせ、2つの言語を「必修外国語」として学びます。
一般的には、英語が「既修」で、初めて学ぶ第二外国語としてドイツ語・フランス語・中国語・ロシア語・スペイン語・韓国朝鮮語・イタリア語のうち1つを選んで学習します。また、これら2つの必修外国語に加えて、選択科目では、さまざまな「第三外国語」の授業が開講されており、興味に応じて自由に履修することができます。
今回、東大生にそれぞれの言語を選んだ理由や各言語の特徴などを紹介してもらいました。実際に学んでみないとわからない情報も含めてお伝えします!

東大で学べる英語以外の言語

(2023年10月7日現在 「キミの東大」企画・編集チーム調べ)

ドイツ語

3週間過ごした寮の窓から見たワイマールの街
左はドイツの語学コース、右は東大の授業で使った教科書
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    3days agoさん(法学部・4年)
    ドイツ語の勉強を始めたのは、4年生になってからです。最近になってアカデミックな営みに関心を持ち始めた僕は、そこでようやく、自分の専攻する法学の学習や研究を本格的に進めるには、ドイツ語やフランス語ができる必要があると知りました。しかし、僕がかつて学習していた第二外国語は中国語で、英語以外の西洋の言語には親しみがありません。そこで、4年生になって慌てて授業を履修することになったのです。
    まずは、手始めに初学者向けの授業を受けました。授業はとてもよくまとまっていて、授業だけでも必要最低限の文法事項を学べるようになっていたのがありがたかったです。その後、夏休みには、自分ひとりで本場ドイツのワイマールという小さな都市に飛び立ち、3週間の語学コースに参加しました。オールドイツ語の授業にはついていくだけで一苦労でしたが、その分得るものも多かったです。ネイティブの話すドイツ語やドイツの文化に触れられただけでなく、そのコースに参加した各国の学生と交流できたのも貴重な経験でした。 

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フランス語

フランス語はお菓子の名前によく使われるので、スイーツ好きにはおすすめです!
仏語検定に向けて勉強していました。
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    ぱんださん(文学部・4年)
    フランス語は、お菓子の名前に多く使われていて可愛らしいことと、世界の多くの国で公用語になっていることから第二外国語として選びました。例えば、フランス語で「chou à la crème」とはシュークリームのことで「クリーム入りのキャベツ」という意味です。フランス語を知る前は深い意味を考えたことがなかったシュークリームという言葉に、キャベツに似ているという意味があると知った時は驚きました。今ではケーキ屋さんで新しいケーキの名前を見ながら、知っているフランス語の知識を活用し意味を考えることが楽しいです。
    新しい言語を学ぶことは、私にとって中学で英語を習い始めて以降、かなり久しぶりのことで、新しい単語や発音のルールなどを覚えるのが大変に感じました。しかし、街中でフランス語の店名や商品名を見た時に、「フランス語だ!こんな意味だったんだ!」と気がつけることは自分の世界が広がるようで楽しいですし、仏語検定にも挑戦し、新しい力を身につけたことを実感できて嬉しかったです。いつかフランス旅行に行き、本場のお菓子を食べることが楽しみです!

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中国語

使い込んだ教科書
台湾の様子
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    mickeyさん(経済学部・3年)
    私は、前期教養課程において、TLP(トライリンガル・プログラム)に所属し、中国語を集中的に学習しました。TLPでは、1年生の春学期に週5コマ、秋学期に週4コマ、2年生の春学期に週3コマと中国語の授業が行われるため、語学の上達が早く、おすすめのプログラムです! 私が中国語を学んだ中で最も難しかったのは、その発音です。一つの音でも、音程を変えることで意味が変わるため、最初の方は聞き分けることができず、苦労しました。しかし、毎日中国語のネイティブの先生に教えてもらったり、配布されるCDを聞いているうちに、徐々に違いが分かるようになり、文章を理解できるようになりました。
    中国語は、英語と異なり、普段日本で生活している分にはあまり使うシーンはありません。しかし、今年の夏に台湾に行った時に、中国語を初めて外国で実際に使う機会に恵まれました。台湾の地元の人は、英語を話せないので、道を聞くときや買い物をするときに、中国語はかなり便利で、中国語を少し使えたからこそ仲良くなれた場面や、行きたい場所に行けた場面があり、語学の重要さを実感しました。

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ロシア語

ロシアの代表的工芸品のマトリョーシカ
ロシア料理には欠かせないスメタナを添えたボルシチ
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    かっぱの家族さん(文科一類・1年)
    ロシア語を学ぶ魅力は、なんといっても、未知の文字に出会えることだと思います。独特の文字は、初めて学ぶ人にとってはハードルが高く見えるかもしれませんが、種類が少ないのであっという間に使いこなせるようになります。筆記体を使えば更に多様な文字の世界を楽しめます。身近な人の名前をロシア文字で書いてみると喜ばれるかもしれませんし、日記をキリル文字で書けば人に読まれる心配がありません。英語のアルファベットと同じ見た目でも違う読み方をする文字もあるので、そうした知識を披露すると話題作りにもなります。
    また、ロシア文化により深く触れることもできます。授業ではロシアの民謡を聴いたり、『チェブラーシカ』を原語で観たりしました。西ヨーロッパとも違う独特の文化はとても興味深いですし、チェブラーシカの言っていることが言語で分かるのは、ファンの方には大きな喜びなのではないでしょうか。
    言語に触れることで出会える新しい世界に、ぜひ踏み込んでみてください。

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スペイン語

他国が抱いた異郷・スペインのイメージが絵画で表現されていて、興味深かったです。
博物館で展示してあった太陽の石。古代アステカ時代に造られた石板です。いつか実物を見てみたいです。
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    カフェラテさん(工学系研究科)
    私はスペイン語選択で、TLP(トライリンガルプログラム)というコースを受講していました。TLPを受講して良かったことをいくつか紹介します。
    まずは、授業内容の良さです。スピーキングやプレゼンテーションなど実践的な授業が多く、ネイティブの先生に発音や作文などを丁寧に指導していただけました。「スペイン語を話せるようになりたい」という同じ目標を持った仲間と授業を共にすることで、モチベーションも保ち続けられました。また、訳出やリスニングの教材を通して、スペイン語圏の文化に詳しくなれました。授業をきっかけに、今はスペインの美術とラテンアメリカの古代文明と遺跡に興味を持っています。歴史的背景を知ると美術館・博物館鑑賞がさらに楽しくなりますよ。
    TLPの授業を通して、地球の裏側にあるラテンアメリカがグッと身近に感じるようになりました。言語を学ぶだけでなく、言語を通して文化や思想を学ぶことができて、とても貴重な経験でした。語学が好きな方はTLPを受講してみてはいかがでしょうか。

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イタリア語

音楽が趣味なら、楽譜のイタリア語指示がすんなり理解できるのも嬉しいポイント!
友達とイタリアンに。いかにもイタリア語なアクセントで注文してみたり?(笑)
  • 本人
    萩野聡子さん(文学部・4年)
    ピザ、パスタ、ジェラート…おいしいものに溢れている国、イタリア。食べ物以外にも有名なものだらけの国なので、文化や芸術が好きな人なら音楽家や画家、スポーツが好きな人なら選手やチーム、歴史に興味がある人なら遺跡や偉人などなど、国名を聞いただけで連想がふくらむのではないでしょうか。
    発音はいわゆる「ローマ字読み」なので、ごく少数の癖のある発音ルールだけ覚えてしまえばあとは簡単。日本語話者にはとっても馴染みのよい言語だと思います。そしてイタリア語がわかると、街で見かけるイタリア料理のお店やサッカーチームの名前などの意味がいちいちわかっておもしろいです。たとえば「ベルマーレ」。bel(美しい)+mare(海)で「美しい海」という意味なので、私はひそかに脳内で「美ら海」と沖縄方言に変換しています。
    最近はNHKでも、ときどきイタリアのドラマを放送しているので、副音声のイタリア語に切り替え、日本語字幕を出して聞き取れる単語を探しながら観るのが趣味になっています。早口すぎてちょっと難しいけれど、楽しいです!

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アラビア語

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    福井卓志さん(理科一類・2年)
    みなさんは、アラビア語に対してどういうイメージを持っていますか?なんかぐにゃぐにゃした文字を右から左に繋げて書く言語、みたいな感じでしょうか?一見わけの分からない文字かもしれませんが、実は、アラビア語のアルファベットは約30しかありません。左の写真はその一部です。これらを覚えてしまえば、あのぐにゃぐにゃ文字もすらすら読めるようになります。
    また、アラビア語の大きな特徴として、3つの子音の組み合わせ(語根と言います)が大まかな意味を表し、これをさまざまな形に変化させることで動詞や名詞、形容詞といった多くの単語が作られるという点があります。例えば、k, t, bという組み合わせは「学ぶ」という概念を意味し、kataba(書いた)、kaatibun(作家)、kitaabun(本)、maktabatun(図書館)といった単語に派生しています。どうですか?面白くありませんか?
    文法事項はやや複雑ですが、その分学習しがいがあります。既習のどの言語とも全く異なるアラビア語の世界をあなたも覗いてみませんか?

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ポルトガル語

ポルトガル語の辞書と、授業で使っていたルーズリーフです。先生のおっしゃったことをたくさんメモしていました!
自作のポルトガル語単語集です。単語帳がなかなか売られていないため、自分で紙に書いて覚えていました。
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    神谷朱里さん(文科一類・1年)
    みなさん、第三外国語にポルトガル語はいかがでしょうか?私は自分の出身地域にブラジル人が多く住んでいたため興味をもち、ポルトガル語を第三外国語として受講しました。「ポルトガル語?そんなマイナーな言語を学んでも…」いやいや、そんなことはありません!ポルトガル語はポルトガルのみならず、南米の超大国ブラジルで使われる言語ですから、話者は2億人超、日本語より多いんです(笑)!
    また、ポルトガル語は日本語とのつながりも深く、例えば「パン」はポルトガル語の「pão」が由来だそうです。このように、日本語との意外なつながりを発見できるのも、新たな言語を学ぶ楽しさであると言えるでしょう。言語はその国の文化に触れるとても良いツールだと思います。予習や復習、第二外国語との両立は大変ですが、学ぶたびに新たな発見があるのでとても面白いです。第二外国語でスペイン語を学んでいる人はもちろん、そうでない人も楽しく学べるはず!ぜひポルトガル語を学んでみてください! 

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サンスクリット語

授業で使った教科書の練習問題を解いた私のノートです。授業前の予習で訳文を作っておき、授業で訳文を訂正し、文法事項を確認します。私の場合、チベット語を先に勉強していたので、チベット語相当語を余力があれば調べるようにしていました。
真言宗でもよく唱えられる佛頂尊勝陀羅尼の写真です。梵字によってサンスクリット語が表記されています。隣にあるカタカナは日本訛りの慣習音です。
  • 大
    乾将崇さん(文科三類・2年)
    サンスクリット語は、紀元前四世紀頃のインドで精緻に体系化された人工的な古典語です。駒場でも本郷でも開講されており、初級から上級のレベルがあります。サンスクリット語の特徴は文法の複雑さにあるでしょう。名詞を例に挙げると、性は男・中・女性の3つ、格の曲用は8つ、数は単数・双数・複数の3つ、原理上一つの名詞につき24の変化形を覚えなければなりません。この変化形の多さは、他の印欧語を凌駕します。そのせいか、駒場では言語の規則が大好きな言語マニアたちが文理を問わずクラスに集まります。ただ、私の場合、仏教など古代インドの叡智を理解したいという思いの方が強いです。
    サンスクリット語は、広くアジア圏に影響を与えました。日本では、私は高野山で修行していたことがありますが、そこで唱えられる真言という呪文はサンスクリット語です。また、「奈落の底」という慣用句の「奈落」はサンスクリット語で地獄を意味する naraka の音写語です。
    サンスクリット語を学ぶことで、当時のアジア圏の人と思想の往来、相互理解のあり方に思いを馳せることになり、国際化を再考する契機ともなるでしょう。

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WEB構成/肥後沙結美
企画・構成/「キミの東大」企画・編集チーム