【開催レポート!】2024年度 第1回 学校推薦型選抜オンライン説明会―現役推薦生と交流しよう
学校推薦型選抜(推薦入試) 2024.09.03
2023.08.28
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【開催レポート!】2023年度 第2回 学校推薦型選抜オンライン説明会
東京大学では学部教育の総合的改革の一環として、学校推薦型選抜(以下、本選抜)を導入しています。制度開始より一貫して、特定の分野における卓越した能力やさまざまな学問領域に対する極めて強い関心・学びの意欲を持つ学生を募り、学生の多様性を促進して、学部教育を活性化することを目指しています。
東京大学高大接続研究開発センターでは、今年度も全国の中高生を対象に、オンラインでの説明会を開催。本選抜のねらいや概要を伝えると同時に、本選抜で入学した現役学生(推薦生)との交流を通じ、制度に対する理解と興味を深めることが目的です。
今年度第2回目の開催となる8月5日の説明会には、後日の動画視聴も含めると240名ほどのエントリーがありました。当日、彼らを温かく迎え入れるのは約40名の推薦生です。推薦生の深い探究心や、充実した学生生活が伝わる模様をダイジェストでレポートします。
TABLE OF CONTENTS
「東大への入学」を目的としない人を受け入れる制度
授業や研究にとどまらない探究の機会に溢れるキャンパス
中高生が推薦生に直接質問!推薦生のリアルライフ
冒頭のあいさつでは、東京大学副学長で文学部教授の秋山聰先生が登場し、本選抜の受験を検討している中高生に向けてメッセージを述べました。
秋山先生「本選抜は、必ずしも敷居の高いものではありません。私たちはコンクールやオリンピックの入賞者を求めているわけではないですし、特に文系ではそもそも評価を競うことのない学問分野がほとんどです。出願者一人ひとりの提出書類に丁寧に目を通し、学校での過ごし方や校長先生の推薦の言葉を重く受け止めています。
出願準備から入学まで、本選抜の一つひとつのプロセスが体験活動であるともいえます。本選抜の過程では、みなさんの日頃の探究について東大の研究者と直接対峙し、フィードバックを受ける体験ができる、貴重な機会と捉えることもできます。実は東大生であっても、専門の先生方と深く議論できるのは3年生になってから、あるいは大学院に進んでからという場合も珍しくありません。世界でもトップレベルの研究を続ける先生方と、高校生の時点で対話ができるのは貴重なことです。この経験は、合否という結果を越えてこれからの人生の糧になると考えており、本選抜ですべてが決まるわけではありません。どうか大らかな気持ちで、取り組んでいただければと思います。
また、この説明会では、話題提供や交流を通じて推薦生たちの生の声を聞くことができます。私自身も彼らの好奇心や行動力に、毎回多くの驚きを感じています。ぜひ今日のこの時間も、体験活動と受け止めてもらえたら幸いです」
続いて進行役を務める、教育学研究科准教授(高大接続研究開発センター兼担)の植阪友理先生より、東大の特徴や本選抜について解説しました。中でも重点が置かれたのは、本選抜で入学した場合の独自の学修のしくみです。
加えて本選抜の目的やアドミッションポリシー(期待する学生像)を説明したところで、高大接続研究開発センター特任教授の高橋和久先生が、次のようにアドバイスしました。
高橋先生「本選抜のねらいを端的に言えば、小手先のHow Toでは通用しない方法で、東大への入学が目的ではない人たちを受け入れるための制度です。入学後の学修のしくみも、東大での学びの特徴である、Late Specializationの逆を行くといっても過言ではありません。
出願を間近に控える高校3年生は、選抜に向けて具体的な対策や有効な方法を知りたいと思うことでしょう。けれどもこの後に紹介される先輩方(推薦生)の話は、あくまでも個人的な体験に過ぎないということを、ぜひ理解してほしいと思います。
また、東大での研究は細分化され、かつクロスオーバーしている傾向にあります。学部や学科、専攻の名前から連想される領域を超えた研究をしていることも珍しくありません。推薦生のお話も、一見自分の関心分野とは交わりがないように映っても、聞いてみたら思いがけず興味をおぼえることもあるかもしれません。自分の中に起こる想定外の反応や体験をぜひ楽しんでみてください」
制度の概要がつかめたところで、推薦生による話題提供に移ります。司会進行は宮﨑莉子さん(理科二類1年、農学部進学予定)と中野和真さん(農学部3年)が務めました。学年や学部の異なる3名の発表を通じ、東大では学びと探究の機会が講義や実習にとどまらず、あらゆる場に溢れていることが伝わってきました。
■大保双葉さん(文科三類2年、教育学部進学予定)
大保さんは一般選抜での東大入学を検討していた高2の終わり、先生から本選抜への挑戦を打診されました。しかし、自分には無理だと断ってしまいます。
大保さん「国際的なコンテストでの入賞や留学経験のあるような人が受けるものだと思っていたことと、言語への関心はあったものの何を学びたいのかまでは明らかになっていなかったからです」
けれども、高3の夏休みに再び先生に受験を勧められ、募集要項を読んだのを機に考えを改めます。
大保さん「意外と自分に合っているのかもと思って。Webサイトづくりや課題研究など、高校での取り組みを振り返ると、外国にルーツを持つ子どもが抱える言語の問題や小学校の英語の授業、プログラミングと『言葉の教育』に強い関心があることに気づいたのです」
大保さんの通う高校では、過去に本選抜を受験した例がなく不安で仕方がなかったそうですが、どんな結果であっても後輩たちに残せるものがあるはずだという思いで臨みました。
入学後はドイツ語の勉強やプログラミングサークルにも精を出す一方、経済的に苦しい家庭の高校生の自立を支援するNPOでのインターンが強く印象に残っているといいます。
大保さん「東大で出会った友達の紹介で始めたものです。教育現場の現実に直面する機会になりましたし、学外の友人もたくさんできました。3年次以降の専攻を教育実践・政策学コースに決めたのも、インターンがきっかけです」
大保さんは「東大では推薦生をはじめ、学内外を問わず多彩な人たちとの素晴らしい出会いが待っていますよ」と発表を締めくくりました。
■乙川文隆さん(文科一類2年、法学部進学予定)
地方自治の中でも、特に自治体外交に関心を持つ乙川さん。地元、新潟の加茂市での体験が背景にあります。
乙川さん「加茂市は少子化をはじめ、いろんな地域課題を抱える町です。一方でロシアのコムソモリスク・ナ・アムーレ市と友好都市にあり、私も中学生の頃に国際体験をしました。自治体が独自に世界の各都市と関係を築き、特に若い人たちのグローバルな価値観の形成につなげていく仕組みに感銘を受けました」
また、地図や路線図を広げては、どうしてこの町はこういう形なのか、なぜここに線路が走っているのかと思いを巡らすのも大好き。高2のとき新型コロナウイルス感染症の影響で学校が一斉休校になった時期に、自学で地理を予習したことをきっかけに、地理オリンピックの世界大会出場を果たし、「考える地理学」の魅力に気づきます。
乙川さん「地図を見たら、現地にも足を運んでみたいもの。自然と旅をするのも趣味になっていました。東京は伯母が住んでいたので、小さな頃からよく連れていってもらい、その度に魅せられたのは『なんでもある、できる』という東京のキラキラ感。加茂では難しいことも東京ならできるはずという気持ちも、東大を目指す理由のひとつになりました」
東大入学後の生活を「日々是旅日(ひびこれたびのひ)の実践」とテーマを定めた乙川さんは、積極的に人と会ったり、イベントや美術館、博物館などに出かけたりして、「なんでもある東京」を旅するように過ごし、少しでも時間ができれば地方へ足を運んで現地の日常を体験する「地方自治につながる旅」を続けています。
乙川さん「特に離島に行くのが好きですね。過疎地のリアルに直面すると同時に、その地ならではの伝承文化にも触れられるので。地元の人にも積極的に話しかけます」
乙川さん「大学の体験活動プログラムを利用し、岡山県の旧富村地域に滞在し、伝統工芸である備前刀づくりで用いる研磨炭を焼くプログラムに参加しました。個人ではアプローチの難しい、貴重な体験となりました」
「旅とは自分の世界を広げること。人の話を聞くことも、本を読むことも、旅のひとつといえます。どうか自分なりの旅を続け、夢中に語れるくらいに大好きなものを見つけてください」と、高校生たちにエールを送りました。
■川瀬翔子さん(農学生命科学研究科修士2年)
農学部を卒業し、現在は大学院で農業・資源経済学を専攻する川瀬さん。小さな頃から食べられる野草や木の実を集めて食べることが趣味で、小学校の頃の夢は農家になることでした。高校時代はアメリカで1年間の留学を経験します。
川瀬さん「留学先の高校で目にしたのは、カフェテリアに捨てられる食べ残しの山! 衝撃を受け、食品ロスの矛盾(先進国では食品が捨てられている一方で、途上国では飢餓に苦しむ人が絶えない状況)に関心を持つようになりました」
留学は自信を持つきっかけとなり、帰国後もフードバンク活動やボランティアなどに参画するようになります。高校3年生の夏には日本の農業の課題がどこにあるのか、また安全、安心な食べ物が安定的に手に入れられる社会であり続けるには何が大事なのかを探るべく、自ら長野県や茨城県の農家にアポイントを取ってヒアリングしました。その内容をレポートにまとめ、本選抜に臨み、東大への入学に至ります。
川瀬さんには大学で学ぶにあたり、大切にし続けてきた言葉があります。
川瀬さん「入学式の祝辞で、教養学部の先生が『自分が興味を持っていることについて、自分の言葉で説明できる力を身につけるのが大学の学びだ』と話していたのです。教養を身につける、専門性を高めることの意義について、腹落ちした瞬間でした」
東大は講義や実習に加え、さまざまな教育プログラムを用意しています。川瀬さんは学部生時代の4年間で、多くのプログラムに参加しました。
体験活動プログラムではスリランカの農村を訪問し、日本の農業との違いを目にします。TLP(トライリンガル・プログラム)では第二外国語で専攻した中国語の上達を図るべく、中国の南京大学や台湾を訪れました。またFS(フィールドスタディ型政策協働プログラム)では、石川県の能美市のゆずを生かした地域づくりに参画します。
ほかにも、GLP-GEfIL(グローバルリーダー育成プログラム)、ONE EARTH GUARDIANS 育成プログラム参加。司会を務める宮﨑さんや中野さんも「こんなに参加していて、授業と両立できるのがすごい!」と驚いていました。
川瀬さん「確かに大変な時期もありましたけど、体験に勝るものはないと考えていました。東大は自分の興味関心を思う存分探究でき、アクティブに活動できる場所だと思います」
修士課程に進んでからは農山村地域でフィールドワークをするほか、現在は修士論文の執筆に向けて青果物の卸売市場について、関係者への聞き取り調査を行う毎日です。
川瀬さん「高校生の頃に農家さんにインタビューをしたときの経験が、今の研究でも活きているように思います」
将来は国際機関で働くことも視野に入れる川瀬さん。小学生の頃の憧れを原点に、「好き」を追いかけ続ける姿が印象的でした。
休憩をはさみ、いよいよ推薦生とのグループ交流の時間です。少人数に分かれ、数名の推薦生と大学での生活や進路のことなどについて自由に語り合います。また本編終了後には、「法律・政治・経済」や「ものづくり」など、10のテーマに分かれての交流タイムも設けられました。ここではグループでの対話の一部をご紹介します。
高校生A「推薦生同士が知り合う機会はあるのですか? クラスが一緒でもお互い話をしない限り、推薦生だとわからない気もするのですが…」
高校生B「大学の授業についていけるか心配です。特に数学など、一般選抜で入って来た学生と比べて苦労するのでしょうか?」
高校生C「推薦生のお話を聞く限り、高3の夏休みに論文執筆をしていたという方もいるようです。一般選抜の受験勉強との並行で、キャパシティーオーバーになりませんでしたか?」
推薦生たちも不安を乗り越えて今があるだけに、中高生に寄り添いたいという気持ちが伝わってきました。今回もトピック満載で、あっという間に終了を迎えた説明会。夏休み中の貴重な体験となったに違いありません。
【参考リンク:今後の説明会の開催日程など、学校推薦型選抜の各種情報はこちら】
東京大学ウェブサイト:https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_26.html