新型コロナウイルス禍――今、東大生は考える(15)

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異例の大学生活に直面した東大生のショートエッセイ 第15回

2020年から始まった新型コロナウイルス感染症の流行を受け、東大では授業はもちろんのこと、学生の交流や課外活動にも大きな影響が生じています。様変わりした大学生活を送る中で感じたこと、考えたことを、東大生に綴ってもらいました。

まるで新入生気分

3年に上がり、ついに後期課程が始まった。実際に後期課程に入ると、前期課程と異なることが多くてとても大変。2年のAセメスターから後期の授業をいくつか受けていたが、それでも違うことが沢山あった。
まず、科目の数。東大のカリキュラムでは2年はそこまで忙しくなく、秋学期は11コマ履修した。しかし今では19コマ。実に1.5倍の忙しさだ。前期より面白い授業が多く、色々な授業をつい受講してしまう。
また、図書館の利用も増えた。前期のうちはあまり本を読まなくてもなんとかなったが、後期の授業はそうはいかない。研究室に行く回数も多く、研究室の図書室も利用するようになった。
そして、授業の内容の深さ。演習の授業では院生も学部生に混じって参加するのでレベルの差を強く感じる。前期では同じ専門の人が周りにいなかっただけに、その衝撃は大きい。
前期とあまりに違う事が多く、まるで新入生の気分だ。フレッシュな気持ちで勉強に取り組みたい。

文学部 3年 chai

 

自粛の日々にキく薬

コロナ禍での生活を通して変わったことと言えば、そう、音楽を聴くようになった。
家に籠るような日々がしばらく続き、無気力感に襲われることも少なくない今日この頃だが、音楽を聴いていると、エネルギーが湧いたり、気持ちが落ち着いたり、自分を取り巻く面倒事を忘れられたり。音楽は間違いなく私の生活に欠かせない存在となりつつある。
普通に聴くこともあれば、ときには目を瞑って大きな音で聴いてみたり、ときにはギターの音色だけに注意を向けて聴いてみたり。そしてもちろん、ときにはMVの主人公になったつもりでリップシンクしつつ聴いてみたり(経験のある方も多いのでは)。
音楽を「探す」のもこれまた楽しい。各種レコメンド機能に頼ることもあれば、ときには作編曲家を辿ってみたり、ときには音楽系ブログを辿ってみたり。自分の手で調べて「好き」に巡り合えたときの喜びは格別だ。
今日も私は、お腹いっぱい食べて、ぐっすり眠って、好きな音楽を聴く。

経済学部 4年 曙

危機感

先日、年に一度の健康診断のために駒場キャンパスを訪れました。実に半年ぶり、最後に来たのは秋に実施された昨年の健康診断のとき。秋学期には一部で対面授業も選択できたけれど、同じ日にオンラインと対面が両方ある、なんてことになったら通学時間の長い私のスケジュールはきっともうぐちゃぐちゃ!…ということで、手続きと健康診断以外にはキャンパスに来ない人となってしまっていたのでした。
きっとこの「引きこもり」のせいなのでしょう、健康診断の会場に行き着くまで、キャンパスをぐるぐる歩く羽目に。好きで歩こうと思って、時間つぶしに遠回りしたわけではありません。2年生にもなってまだキャンパスマップを把握できず、本気で半分迷子状態になってうろうろすることになったのです。
キャンパスは案外1年生でいっぱい。このままだと駒場を理解せずに本郷に移り、不思議な3年生になってしまいそうです。何となく危機感を感じた1日でした。

文科三類 2年 Sophie

 

問い直す学生生活の価値と、短文羅列の力

私の学部では、2021年度もオンライン授業が中心となることが発表された。昨年の4月から数えて、早くも14か月目だ。14か月を日数に換算すると、実に426日になる。春夏冬の長期休暇と土日を除くと、授業を受けたのは一年間に正味150日程度に減る。国立大学の授業料は年額およそ53万円。授業を受けていた日で割ると、1日あたり約3,500円だ。ここで、その金額の多寡をどうこう言いたいわけではない。ただ、果たして私はそれだけの価値ある大学生活を送れているのか?これまでの大学生活を振り返ってみる。

まず、大学1年次。授業開始より前の4月頭に、先輩たちが企画してくれたオリエンテーション合宿(通称:オリ合宿)に参加した。クラス内の役割決めだけでなく、スポーツやゲームを通してクラスメイトと親睦を深め、盛りだくさんの2日間を過ごした。
東京に帰ってきてからは、入学式より前に始まった授業にどきどきしながらも、履修決めやサークル選びに精を出した。さらに、五月祭に向けてクラス内で何度も話し合いを重ね、空き時間にみんなで立て看板を塗ったり、タピオカドリンクの試作をしたりと充実した日々を過ごした。そして迎えた五月祭。人の波に翻弄されながらも、売上を得たときの充実感と言ったら。クラスのまとめ役を引き受けてくれたクラスメイトには感謝してもしきれない。そのバイタリティの高さに、大いに刺激を受けたものだ。

さて、大学1年生の5月までの記述ですでに原稿の半分を使ってしまった。どう考えても、私の大学生活を残り少ない紙幅に収めるのは不可能だ。
そこでここからは、最近Twitterとやらで流行っているという短文の羅列に挑戦してみることとする。

大学1年の夏休み。人生初のスリランカ。平均気温25℃、日本の夏より過ごしやすい。毎食お皿の半分は米、おかず全品トウガラシ入り。辛さに耐性がついた1週間。
期末試験を無事に終え、待ちに待った春休み。演習林の砂防ダムを見学、愛知~岐阜~長野~静岡をめぐる大旅行。〆は美しき中田島砂丘。「削る・運ぶ・堆積する」、川の三作用を実感した3日間。
さらにダメ押し、台湾研修。ニニ八記念館から緑島へ。台北でのフィールドワーク。地区内で助け合う仕組みづくり、コミュニティの力が素晴らしい。

いよいよ始まる大学2年、専門外のゼミにも参加。クラスの絆も深めつつ、夏には大陸へ初上陸。国は違えど人は人、されど違いはやはり在る。また行きたいと願う日々。
そして2度目の春休み、念願かなって中南米、メキシコの地を踏まんとするも、来るはCOVID-19。1日にして阻まれる。
それから始まるオンライン、早くも1年と2か月以上。
画面と向き合い家からは出ず、しかし出会いは一ならず。果たして終わるか終わらぬか、私は何をなすべきか。思い悩める今日この頃。

3年次に入ってからのことはさすがに書ききれなかった。こうしてみると、短文羅列の法は確かに効果があるようだ。ぜひ試してみてほしい。

農学部 4年 土筆

 

参考リンク
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原稿作成/2021年4月~5月
企画・構成/「キミの東大」企画・編集チーム