ちょっとしたきっかけから東大を目指すことに。勉強だけではない大学生活を楽しむ―未来の東大女子へVol.5 学生インタビュー
未来の東大女子へ 2022.09.30
2018.10.22
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PROFILE
瀬地山 角(せちやま かく)
東京大学大学院総合文化研究科 国際社会科学専攻 教授
1986年東京大学教養学部教養学科相関社会科学分科卒業、1993年東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程修了後、1994年東京大学助教授、2009年より現職。この間、韓国のソウル大学に留学、ハーバード大学とカリフォルニア大学バークレー校で客員研究員。最新刊に編著『ジェンダーとセクシュアリティで見る東アジア』他の著書に『お笑いジェンダー論』『東アジアの家父長制』(いずれも勁草書房)漫画家高世えり子さんとの共著で『理系男子の恋愛トリセツ』(晶文社)など。また、東大で最も女性の履修者が多い講義を行っている。
ジェンダーという言葉は高校で習ったと思います。普段、私たちが「男はこうすべきだ、女はこうあるべきだ」と考えていることの大半は、時代や社会で大きく変化する、社会的構築物にすぎません。
私は、東アジア(中国、台湾、北朝鮮、韓国、日本)のジェンダーの比較社会学が狭い意味での専門です。例えば、既婚女性の就業パターンを比較し、体制の違いではなく、文化の違いによって就業形態がどう変わるのかといったことを研究しています。「3歳までは母の手で」などという3歳児神話が、日本限定で、しかも高度成長期に生まれた科学的根拠のない、単なる「神話」にすぎないことをこうした比較の中であぶり出すことができます。
かつての「結婚したら男は仕事、女は家庭」という“常識”も、身近なジェンダー問題です。今は共働き世帯の方がはるかに多いのですが、未だにそうした“常識”に縛られている男性や女性が多くいます。それを打破するために、私は「2億円の宝くじを確実に当てる方法がある」と話しています。
仮に女性が第一子出産後に仕事を辞めずに定年まで正社員を続ければ、その間で約2億円稼ぎます。しかし実際には、出産後女性は仕事と家事の二重負担で多くが正社員を諦めざるを得ないのが現状です。共働き世帯の一日の家事従事時間が女性5時間弱、男性46分(2016年の社会生活基本調査)であり、これはジェンダーの問題にほかなりません。そこで、夫が一日平均3時間、家事・育児に関われば、妻が正社員で働き続けることができ2億円をゲットできるのです。
仮に妻の年収が500万円で、夫が一日3時間、年間1,000時間家事・育児に従事すれば時給5,000円に相当します。これは夫自身の残業代の時給よりも高く、月額40万円強。自宅から徒歩0分でおいしいバイトがあるのです。妻も家事・育児を夫に任せる引け目なんぞ感じる必要もなく、高収入のバイトを斡旋してやったと考えれば、二重負担も解消され生活も楽になり一挙両得です。だいたい毎月40万も残業していたら翌年にはあの世でしょう。
ちなみにちょっと下世話なことですが、東大に来るメリットの1つはこの女子学生の出産後の生涯賃金が、東大女子なら2億ではなく3億になる点です。3億ですよ!
ジェンダーの研究で面白いのは、常識を崩すこと、そして社会に対してもの申すことができることです。私はキャンパスの保育所の運営にも関わっており、待機児童問題についてもさまざまな提言をしています。大都市圏で保育サービスが供給不足になるのは、土地代が高すぎて、「産業」として成り立たないためで、市場原理では解決できません。抜本的な政策転換が必要なのです。
私が大学でジェンダー論の講義をしていると、そこにはいない「東大進学を諦めた女子学生」たちの悲鳴が聞こえてくるような気がします。「女の子だから浪人はダメ」「女の子が東大になんか行かなくても」「女の子は親元で」。そんな周囲の圧力で受験を諦めた女子学生たちの声です。これは本当に深刻なジェンダーの問題です。「東大女子は結婚できない」なんてデマです。男子同様、地方からでも、浪人すれば受かる女子は必ずたくさんいますから、ぜひ東大を目指して欲しい。
指導的な地位につく女性を3割にという日本が掲げる目標を達成するには、今の東大の女性比率では絶対にダメなのです。そのために特に地方の女子学生に来てほしい。だからこそ女子学生向けの家賃補助や奨学金制度があるのであって、それを「逆差別だ」という人たちには、「みんなまとめてオレにかかってこい!」と思っています。男たちが如何に自分の履いている下駄の高さを自覚していないかを指摘して、全部論破してやりますから。
5年後10年後の日本社会の多様性のために、東京大学にはみなさんのような女子学生が絶対に必要なのです! 自信を持って、自信がなければ勇気を出して、ぜひ受験してください。駒場の大教室1323で待っています!