考える東大生 感じる日々―新型コロナウイルス禍のなかで(8)

2021.01.14

東大生コラム

#新型コロナウイルス感染症 #新型コロナウイルス感染症

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異例の大学生活に直面した東大生のコラム企画

2020年、新型コロナウイルス感染症の流行を受け、東大の授業はオンライン授業が中心になり、学生の交流や課外活動にも大きな影響が生じています。様変わりした大学生活を送る中で感じたこと、考えたことを綴ってもらいました。

スキマ時間の効用

農学部3年 土筆

 
ほとんどすべての授業がオンライン化してから半年以上が経過した現在、オンライン化によって得られたものと失われたものとが明らかになっている。なかでも「隙間時間」の喪失は、オンライン化の利点と弊害を同時に体現しているのではないだろうか。「隙間時間」の意義、それは「セレンディピティ(偶然の幸運)」を生み出すきっかけとなるところにありそうだ。授業と授業の間の休み時間に友達や先生と交わす何気ない会話。通学中、電車内での読書。用事と用事の間のふとした瞬間の価値は、失ってみて初めてじわじわと身に迫ってくる。気を抜くと時間の区切りが曖昧になりがちな蟄居ちっきょ生活の中では、意識的に隙間時間を確保することが前向きに生きるコツと言えるかもしれない。

 

新たな心の支え

理科二類2年 S.F.

 
この新型コロナウイルス禍のなかで、私はあるアーティストに非常にハマってしまった。今までは、どこか偏見を持ち自分の好みではないと避けていた音楽だったが、いざ触れてみると紡がれる歌詞のメッセージ性や曲調に非常に魅力を感じ、それ以来、彼らの音楽を聞くことが習慣化してきている。そして、今やその音楽は自分の気持ちを奮い立たせてくれる、私にとっては欠かせない心の支えとなっている。この体験を通じて、端から偏見や思い込みを持つのは好ましくないと再認識できたと同時に、案外自分の好みは日々触れるものによって大きく左右されるのだとも気づくことができた。現在、暗いニュースばかりが目についてしまうこの世の中で、自分の心の支えあるいは前向きにさせてくれる存在はとても大事だと思う。音楽に限らずこのような存在をあなたも新たに見つけてみてはいかがだろうか。案外今まで触れてこなかったようなものに自分の好みをまた一つ見出せるかもしれない。

 

インドア趣味を見つけてみる

文科三類2年 S

 
中高時代は勉強とテニス部の両立で精一杯で、大学に入ってからも部活に励む日々。久しぶりにゆったりとした時間を過ごすことになり、私にはインドアの趣味がないことに気づきました。そこで、この期間に一芸を身につけようと、一見変わった(?)趣味に手当たり次第に挑戦することに。その一つが「バルーンアート」です。意外と楽しい。完成しても1週間もしないうちにしぼんでしまうけれど、なんだか家の中が明るくなった気がします。おばあちゃんになったら、公園で小さな子どもに配ろうかな…。

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3回目でやっと成功したプルートです

 

郷愁

教育学部3年 金木犀

 
「ふるさとは遠きにありて思ふもの」とは室生犀星の詩の一節だが、まさしく、今の私の心境を表している。一人暮らしをしたくて東京の大学に進学したが、一人暮らしの良さを実感するのは、なんだかんだ実家に帰っているときだ。それが今年は、新型コロナウイルスの影響で帰省できなくなってしまった。年末年始を一人で過ごす虚しさは、冬特有の人肌恋しさからだけではないだろう。来年には、実家で食卓を囲む暖かい日常を取り戻せると信じて。今年は、「ひとり都のゆふぐれに ふるさとおもひ涙ぐむ」。

 

コロナで先が読めない

>文科二類2年 はるか

 
4月に緊急事態宣言が発令され、生活様式がガラリと変わった。最初は私を含め、まわりの人も戸惑いながらさまざまな変化に対応していたと思う。そんなときも過ぎ、もう2020年が終わろうとしている。新型コロナウイルスに翻弄され、全世界の人の人生に多かれ少なかれ影響を及ぼしたこの一年は、私たちに何を伝えようとしているのだろう。コロナで好転したことなどほぼないに等しいし、あったとしても確実に負の側面が上回るけれど、コロナを経て、私たちはどのような変革を求められているのだろう。より高い基準での衛生管理はもちろん求められるだろうが、もっと根源的な何かを変える必要がある気がしている。それがまだ何かはわからないけれど、コロナが何かしらのメッセージであり、人類にとって必然的なものであったと信じたい。でもきっと、これも今の状況に理由をつけたがる人間の性なのだろう。

 

それもまた一興

人文社会系研究科 さむらい

 
勉強ができない子どもはそもそもじっと座っていることができないので、最初のステップとして、漫画を読んだりして椅子の上にしばらく座る訓練をすることが効果的だと聞きました。同様に、私も研究ができないので、とりあえず研究室に行くことから始めようと思いました。まずは、人のいない時間を狙って、できるだけ研究室に通うようにしています。この一年は家と大学を往復する毎日で、会話といえばもっぱら博士の先輩や研究員とのディスカッションに限られていました。先日、研究員とひとしきり最近出た新しい計測機器の話で盛り上がったあと、久しぶりに友だちに会いました。でも、「〜が〜と付き合った」とか「〜先輩が結婚した」といった話題が自分とは遠い世界の出来事のように思えて、全くついていくことができませんでした。今後その傾向はますます強くなっていくと思うので、ちょっと心配です。

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企画・構成/「キミの東大」編集チーム