「第71回駒場祭」レポート2020!-東大生ならでは!「学術企画をつくる」とは? 後編(2)

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第71回駒場祭の様子をレポート

駒場祭は、毎年1、2年生が主体となって運営し、駒場キャンパスで11月に開催される学園祭です。今年は、新型コロナウイルス禍の影響で五月祭に続き、駒場祭史上初めてのオンライン開催となりましたが、東大生のさまざまな工夫を凝らした魅力的な企画が数多く公開されました。「駒場祭のかざりかた」を合言葉に創意工夫されたお祭りの様子を「キミの東大」学生ライターとともにレポートします。
オンラインだからこその魅力がつまった駒場祭の企画をぜひ楽しんでください。

学園祭と言えば、出店で買い物をしたり、展示を見たり、「遊びに行く」様子を想像する人が多いかもしれませんが、企画を出展する側として学園祭に関われるのも大学生ならでは。特に駒場祭では毎年良質な学術企画が多数開催され、その多くは学生が一から企画・運営を行っています。
今回は、駒場祭で学術企画を出展した学生ライター2名にインタビューを敢行。「学術企画をつくる」魅力を話してもらいました。模擬裁判を出展した学生ライターをインタビューした前編に続いて、子どもの貧困をテーマに映画上映会を企画した学生ライターに話を聞きました。
 

映画を通して知り、考える 子どもの貧困

出展した企画:映画『こども食堂にて』上映会&交流会~おうちで観よう、みんなで話そう~東大で考える子どもの貧困と社会貢献vol.2(東京大学学生団体CO-ONnext)
語り手:川瀬翔子さん

 

  • 駒場祭2020 川瀬翔子さん
    「キミの東大」学生ライターの川瀬翔子です。私が企画・運営に携わった「映画『こども食堂にて』上映会&交流会~おうちで観よう、みんなで話そう~東大で考える子どもの貧困と社会貢献vol.2」のお話をします。

映画を通して「自分は何ができるか」を考える

――川瀬さんは様々な団体での活動を通して子どもの貧困問題について考えていますよね。その中で、今回出展した企画の特徴はどんなところにあるのでしょうか?
今回の企画では、映画『こども食堂にて』を上映しました。映画鑑賞を通じて、近年注目を集めている「子ども食堂」を皮切りに、子どもを取り巻く環境について考えようというのが企画の主旨です。

――映画『こども食堂にて』は、子ども食堂という舞台を通して、貧困、ひとり親、児童虐待といった子どもを巡る様々な社会問題を描いていて、一人ひとりがとても考えさせられる内容ですよね。五月祭では専門家や実務家によるパネルディスカッションを企画されていましたが、今回は参加者自身が考えるというのが最大の狙いだったんでしょうか。
そうですね。上映会後には交流会を設けて映画の感想を共有し、日本の社会の中に存在する「子どもの貧困」という課題にも目を転じて、私たちには何ができるのかを話し合いました。
 

外部の人とのつながりで、広がる可能性

――参加者同士の意見交換の機会を設けたりと、工夫に富んでいますね。五月祭に出展した経験は、今回の駒場祭での企画にどのように活きたと思いますか?
前回の経験を踏まえて、SNSやメーリングリスト等での広報活動には早めに取り組むように心がけました。また、オンライン視聴用のチケットの用意やチラシの作成、当日の段取りなど、前回に比べて心に余裕をもって取り組むことができたと感じています。

――運営面で五月祭の経験が活かされたようですね。今回は映画の上映ということで、外部の人と連携しなければならないことも多かったと思います。上演に漕ぎつけるまでには苦労もあったのではないでしょうか?
大変なこともありましたが、そうした試みを通して新たなつながりもできました。
たとえば、今回は映画製作会社の方と協力して企画の広報活動を行ったのですが、その広報を目にした内閣府の子どもの貧困対策担当の方からご連絡をいただいたんです。その方には内閣府などが実施している「子どもの未来応援国民運動」について教えていただき、今回の企画では私から視聴者の方々に紹介させていただきました。

――思い切って外部と連携してみることで、今後の活動の幅がさらに広がったようですね。
はい。色々な人と協力して活動し、発信したことが誰かの目に留まることで何かのきっかけとなったり、そこからさらにつながりが生まれることによって、少しずつ活動の輪が広がっていく。そういったことを感じることができた瞬間でした。

駒場祭2020 東京大学学生団体CO-ONnext
告知画像をSNSなどに掲載し、広報活動を行った

意見交換で気づいた新たな視点

――子どもの貧困は今の社会でとても重要な課題なだけに、参加した人も様々な問題意識をもっていたと思います。交流会ではどのような意見が出ましたか?
誰もが満足な食事を得られるということを「人権」と捉えるか、それとも「福祉の対象」と捉えるかによって対応が違ってくるのではないかという意見が出たのが印象に残っています。言葉の綾、と言ってしまえばそれまでですが、安全・安心な衣食住が担保されることが「単に人間であるということに基づく普遍的権利」として保障されるべきと考えるか、それとも公的扶助、すなわち国家によってある意味では追加的に達成されるべきものと考えるか、この両者の間には違いがあるのではないかということです。

――確かに、これまで意識したことはありませんでしたが、「人権」と「福祉」という前提の違いで、その後の対応も随分変わってきそうですね。
私にとっても、人権と福祉を対照的にとらえる視点は新鮮でした。日本では困っている人に手を差し伸べることが、ともすれば偽善的行為として非難されがちですが、私には、その根底に「これは『福祉』として国がやるべき事柄であり、公の補助があるのだから、それで十分ではないか」との考え方が見え隠れしているようにも思えます。

――交流会があったからこそ得られた視点ですね。
そうですね。それだけではなく、オンラインの企画を通して、「一人ひとり視点が異なり見えるものが違う」ということを改めて感じています。
たとえば、映画館で観る映画の場合にはある程度均質な映像や音声が提供されますが、オンラインの場合には、受け手のおかれた環境やその時々の取り組みの姿勢によって、手にできる情報の質・量に大きな違いが生まれてしまいます。異なる経験をしてきた別個の人間だからこそ、多様な視点や考え方を持ち得るのは当たり前といえば当たり前ですが、ともすれば忘れがちなその事実についてふと立ち止まって考えるきっかけとなりました。
 

1つのテーマに向き合い続けることで見えるもの

――オンラインならではの気づきもあって、全体としてとても充実した駒場祭だったように見えます。得られたものはたくさんあったと思いますが、東大を目指す高校生・受験生に「駒場祭に出展することの魅力はこれ!」というものを1つだけ伝えるとしたら何を伝えたいですか?
仲間との絆や新たなつながりができ、世界が広がります!

――その魅力、読者にも存分に伝わっていると思います。最後に今後この問題にどのように向き合っていきたいか、抱負を教えていただけますか?
「キミの東大」では五月祭に続いて企画を取り上げていただいて、イベント前日には「キミの東大」のWebサイトやSNS上で企画の告知ができたことも心に残っています。
そして、映画の中の台詞で印象に残っているものがあります。
「自分が信ずることを大切にして、とにかく続けること」「焦っても仕方がないでしょう」と。
どんなに小さな活動でも、とにかく続けること。その先に目指すものが見えてくると信じて、前に進み続けます。

――今後のご活躍にも期待しています。

画像提供/川瀬翔子、東京大学学生団体CO-ONnext
企画・構成/「キミの東大」企画・編集チーム