新型コロナウイルス禍――今、東大生は考える(5)

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異例の大学生活に直面した東大生のショートエッセイ 第5回

2020年、新型コロナウイルス感染症の流行を受け、東大の授業はオンライン授業が中心になり、学生の交流や課外活動にも大きな影響が生じています。様変わりした大学生活を送る中で感じたこと、考えたことを綴ってもらいました。

私にとってのコンパス

4月に慌ただしく始まったオンライン化−当初は慣れなかったものの、最近は自宅で長時間過ごすことも平気になってきました。外に出る機会が少なくなると季節の変化に疎くなりますが、窓につく水滴や木々が色付くのをみると、冬が近づいているんだなと感じます。
コロナ禍になってから感じたのは、「人と接することがいかに大切か」ということです。友人と会えず哀愁に駆られていたときに、私はハープを演奏するようになりました。小学生の頃に少し触れたことがあったので、今は簡単な曲を中心に練習を重ね、寂しさを紛らわしつつハープの上達に努めています。
ハープはケルト音楽を奏でるときによく用いられる楽器です。ケルト音楽は、哀しくも、奥に力強さを感じる曲が多いように思います。コロナ禍でつらく寂しい時期にあっても、きっといつかは明るい日常が来るのでしょう。曲の奥に秘められた力強さをコンパスに、この困難な時期を乗り越えたいと思います。

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19弦のアイリッシュハープ
文科三類 2年 L.W

 

失って初めて気づく感情?

私は元々他人から隔絶されたバーチャルな世界が大好きで、逆に会食や旅行などはそれほど好きではなかった。もちろん、ちょっと用事があったり、人に誘われたり、何となく気が向いたりして外に出ることはあったものの、むしろ毎日家に引きこもってパソコンを眺めている時間の方が、ずっと自分らしくて楽しい時間だと感じていた。
しかし新型コロナウイルスによって気軽に外出できなくなり、元々少なかった外出頻度がますます減ってくると、こんな私でもだんだん友人との会食や外出して空間を直接味わうという体験が恋しくなってきた。今まで自分の中に会食や旅行を積極的に求める感情があるとは認識していなかったため、驚きを感じている。失って初めて大切さが分かるという意味では、私のこの経験は、大学の授業がオンライン化したことで従来あまり重視されていなかった「大学という空間」の重要さが浮き彫りになったという現象と似ているかもしれない。

文科三類 2年 Satiesa

 

心と心のつながりを大切に

“Hi, guys! How have you been?”
自粛期間をきっかけに、ある国際交流イベントの同窓会が計画されました。オンライン上に集結した仲間たちは、住んでいる国も母語も違えば、現地での外出制限の厳格さも様々。けれど皆が前代未聞の状況と向き合いながら、それぞれの目標に向かって努力を続けていました。彼らとの会話を通して、私の考え方に変化がありました。
コロナ禍によってできなくなったことを数え上げれば、きりがないかもしれません。でも、この状況は、時間や国境を越えて、私たちが改めて心と心の交流を深めるチャンスを与えてくれている。そう考えることもできるのではないでしょうか。
日常に潜んでいる小さな幸せを見つけられること、近くから、遠くから、互いを思い合える素敵な仲間たちに恵まれていること、そのすべてに感謝しながら、これからも私は前向きに歩んでいきます。

文科三類 2年 R

顔出ししないの…?

オンラインでのコミュニケーションで難しいなと感じるのが、「顔出しをするか否か」ということである。Sセメ(夏学期)ではいくつかの授業でブレークアウトルームに分かれてグループワークする時間があったのだが、顔出しのタイミングがなんとも難しい。誰か一人がビデオをオンにしてくれれば、すぐ後に続いてオンにする。しかし、「自分だけつけて他の人が出さなかったら嫌だな」と考えてしまい、なかなか自分がその最初の1人になることはできなかった。最初の1人がいない時は、「顔出ししようよー」と思いながら自分もビデオオフ、という矛盾を抱えて悶々としていたのだった。もうすっかりオンラインには慣れてしまった(?)が、Aセメ(秋学期)の授業を受けながら、そんなSセメでの葛藤を思い出すこの頃である。

理科⼆類 1年 S.D.

 

受験を振り返って

大学一年生の夏休み、宿題のない初めての夏休みで私は人生最高に遊んだのですが(もちろんコロナには気をつけて)、感想としてはやはり自分には遊んでばかりの生活は向いてないなと思いました。今まで時間を効率的に使うことばかり考えてきたからか、ぼーっとしているのが初めは苦でした。目標がない、というのも辛くて、自分が受験生の時は気づかなかったけど目標があってひたすらにそれに向けて努力できたのはとても幸せだったんだなと気づきました。これを読んでいる高校生の皆さんも、今はしんどいかもしれませんが振り返ってみると結果はどうであれ絶対に頑張ってよかったなと思うはずです。あんなに一つのことに取り組めるのも受験生のうちだけです。一刻一刻を大切に、今を楽しんで頑張ってください。

理科二類 1年 F.R

Time is money

「友達ができない」「授業が思っていたのと違う」オンライン授業が浸透してきたとはいえ、世間の大学生はこんなふうに悩んでいます、とニュースは伝えます。でも、案外悪いことばかりでもないんじゃない?というのが私の正直な感想です。その理由のひとつは、通学時間がかからないこと。本来私は、片道2時間少しかけてキャンパスに通うはずでした。これがゼロになるのなら?日に4時間、落ち着いて机に向かったり、リラックスしたりすることのできる時間が増えたことになります。授業がすべて終わってから始まるサークルの会議も、帰りの時間を気にすることなく参加することができます。
コロナ禍で期待していたような大学生活が送れない、という人が少なからずいるのは本当でしょう。それでも私にとっては、実際に通うよりも目いっぱい、大学生としての生活を送ることができているように思えるのです。

文科三類 1年 Sophie

 

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原稿作成/2020年11月
企画・構成/「キミの東大」企画・編集チーム