新型コロナウイルス禍――今、東大生は考える(17)

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異例の大学生活に直面した東大生のショートエッセイ 第17回

2020年から始まった新型コロナウイルス感染症の流行を受け、東大では授業はもちろんのこと、学生の交流や課外活動にも大きな影響が生じています。様変わりした大学生活を送る中で感じたこと、考えたことを、東大生に綴ってもらいました。

コロナウイルスが流行してから一年の夏。海外の都市のようにロックダウンされている訳ではなく、表向きには普通の都市の姿と程遠くない風景が広がっている。大学構内に立ち入ることは出来るし、少しは対面授業もあるし、サークルにも所属しているし、友人関係だって少しは築けている。でも、大勢で会食する機会も無くなり、サークルの合宿も無くなり、友達を誘って旅行に行くのも憚られるし、一見「普通」な日常の中でも、小さなこと、それでいてかけがえのないことが少しずつ失われているような気がする。透明な殻にゆるやかに押し込められて、その中で飼い慣らされてしまっているような、そんな心地がするのだ。
ボクはすぐネガティブなことを考えてしまうから、コロナウイルスさえ無ければ、と何度思ったことかわからない。それでも、時々は小さな勇気を振り絞って、見えない殻を破ろうとしてみる。上手くいくことの方が少ないけれど、それが今の世の中に対する、せめてもの反抗になる、と信じて。

理科一類 1年 Y.T.

 

オンライン授業で知った自分のこと

オンライン授業中心の学習は、より自分の主体性を問われるのではないか、と思う。友達と一緒になんとなく勉強する、ということがまずない。友達が教室で勉強しているのを見て、危機感を抱くこともない。小テストがあるから対策しなきゃとか、課題を解かなきゃとか、そういうのは全て自発的に行わなきゃいけないのだ。これは、『友達が勉強する姿を見て危機感を抱いて勉強する』ということを繰り返してきた私にとっては、難しいことだった。
でも、この経験はしてよかった経験かな、とも思う。自分で何をいつやるのかを自分で決めて、そしてその計画を遂行しようとする中で、私は何をどのぐらい出来てどのぐらい出来ないのか、どうすれば自分のモチベーションを自分で維持できるのか、そういう自分の内面を知ることができた。
大学に入学して初めの半年で、自分をより深く知れたことは、私にとって大きな収穫だったと思う。

理科一類 1年 しょぼん

 

孤独と向き合う、夏

私にとって4月から8月にかけるこの時期は、いつも苦手なものであった。新たな友人関係、だんだん蒸し暑くなっていく感じ、そして何より、水泳の授業が大嫌いな私には夏=プールという固定観念があって、とにかく嫌な季節であるのだ。だからこの時期は必然的に外出の機会が減る。しかもコロナの影響ですべてが非対面であるから、何をしても家で一人。ご飯を食べても、映画を見ても、授業を受けても、孤独と向き合う。確かに大学に入って新しい友達はできた。でも対面の授業が少ししかないから、そこまで深い関係を築くことはできない。でも一人でいることは苦じゃない。ただ、何もせず家にいる自分が見苦しくてしょうがないだけ。そんなことを感じていた時、ふと、ビジネス講座の知らせが来た。非対面だからこそ開催されるというこの講座。いずれにせよ家で行うことに変わりはないが、外は暑いし都合がいい。応募をした。なんだか楽しみになってきた。


夏の終わり、少しも無駄じゃなかった
文科三類 1年 K.М

 

サークル仲間との絆

私は吹奏楽団体に所属しています。2020年のSセメスターは全く活動できませんでしたが、今はどうにかこうにか活動を続けています。コロナ前ほど満足には活動できませんし、大変なことも多いですが、With コロナ の活動を共にすることで芽生えてきた連帯感もあるように感じます。
学内の課外活動施設が自由に利用できないため、外部の施設を借りて練習することが多く、その都度トラックで楽器を外部の施設まで運んでいます。練習中も感染症対策に気を配っています。
心身の疲れや金銭負担が増えているのは確かですが、この状況下で共に頑張る仲間は尊いです。With コロナ になってから、自分にとってサークル仲間はますますかけがえのない存在になってきました。
オンライン授業が多く辛い人もいると思いますが、だからこそ一つ一つの出会い・繋がりを大事にしていけるといいかもですね。

工学部 3年 パルス

 

オンライン授業を思う 〜対面授業を経験して〜

東大では2021年度も昨年度に続きオンライン授業がほとんどですが、少人数で開講される授業などで対面授業が再開されてきました。私と同じ文系は、1年生のうちに後期課程への進学に必要な単位を揃えてしまう人も多く、2年生はいくつかのオンライン授業をとるだけ、ということも珍しくないようです。私は「面白そうな授業はどんどん履修しよう」と考え、結果として週4コマの対面授業をとることになりました。
その経験からいうと、やはり実技を含む授業などは対面授業の方がよい一方で、座学の授業はオンラインの方がメリットが大きい場合もあるように思います。家だと集中力が続かないものですが、対面でも関心が持てないと飽きてしまうことは変わらないように感じます。座学の授業も、オンラインばかりでは人間関係を築けず問題だと思いますが、しっかりと授業に向き合うことができれば、オンラインであっても学習面で成果をあげられると感じます。

文科二類 2年 コロナ禍で入学して

 

それでも、やっぱり悔しい

演劇サークルで活動しています。2020年の春から一年余り、多くの公演がコロナによって中止に追い込まれてきました。私が所属するサークルはインカレサークル(他大生と一緒に活動するサークル)なので、サークルがなければ出会わなかった人もたくさんいます。そうした人との縁や、活動の機会がたくさんたくさん奪われてきました。
現在、2021年夏においては、感染症対策のもとで課外活動が認められています。やっと活動できる! やっとあの人に会える! といううれしい気持ちもありました。ですが、連日の感染者数の増加や医療崩壊のニュースを見ると…大学が課外活動を認めているとはいえ、活動の度に複雑な気持ちで苦しいです。
コロナ収束のために私が今できるのは、徹底した感染対策と活動自粛。
皆さん、一緒に自粛を頑張りましょう。
でも、やっぱり悔しい。大学最後の夏が夏らしくもなく終わっていくのが本当に悔しいです。

経済学部 4年 М.N.

 

参考リンク
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原稿作成/2021年8月
企画・構成/「キミの東大」企画・編集チーム