「第97回五月祭」レポート2024!-2日目
駒場祭・五月祭 2024.06.28
2020.10.13
第93回五月祭の様子をレポート
五月祭は、毎年約16万人の来場者を誇り、最先端の学術企画から圧巻のパフォーマンスまで、数多くの企画が織りなす日本最大級の学園祭です。例年、本郷・弥生キャンパスで5月に開催しておりましたが、今年は新型コロナウイルス禍の影響に鑑みて、5月開催を見送り、9月にオンラインで開催されました。「五月祭常任委員会」が中心となって実現された五月祭史上初のオンライン開催での学術企画の様子をレポートいたします!
様々な学術企画が催されるのも五月祭ならでは。著名な研究者や社会活動家の方が登壇し、白熱した議論が繰り広げられることも珍しくありません。今回は、五月祭でパネルディスカッションを企画した1人である学生ライターの川瀬翔子さん(農学部 3年生)が、学生によって実施された学術企画の様子を紹介してくれました。テーマは「子どもの貧困」です。川瀬さんは、新型コロナウイルス禍だからこそ、私たちの「想像力」が試されると話します。
近年、子どもの貧困については徐々に関心が集まり、支援の輪も広がりつつある社会問題ですが、新型コロナウイルス禍でその支援の在り方にも様々な困難が生じているようです。世界的な非常事態の下で、本当に困っている人に対してどのように手を差し伸べることができるのでしょうか。
今年で93回目を迎えた東京大学五月祭において、「子どもの貧困」をテーマに掲げる企画が取り上げられたのは初めてではないだろうか(それも2つも!)。2つの企画のうち、筆者はパネルディスカッション「東大で考える子どもの貧困と社会貢献 ~私たちにできること:『食』と『教育」からのアプローチ~」 を企画させていただいた。このパネルディスカッションと、同じく「子どもの貧困と教育」 をテーマとした講演会の2つの企画に参加することを通して考えたことを、読者の皆さまにお伝えしたい。
パネルディスカッションでは、子どもの貧困研究の第一人者・阿部彩先生(東京都立大学 教授)、社会活動家・湯浅誠先生(東京大学 特任教授)、子ども食堂・フードパントリー活動に従事されている河野司氏(一般社団法人 東京子ども子育て応援団 事務局長)、居場所運営・学習支援活動を行っておられる加賀大資氏(NPO法人 カタリバ アダチベース)をお招きし、「食」と「教育」という側面から、子どもの貧困に対するアプローチを考えた。
講演会では、NPO法人キッズドア理事長の渡辺由美子氏が登壇され、子どもの貧困の現状や、その解決に向けた取り組みに関して講演してくださった。また、講演・質疑応答後には参加者同士が交流する場が設けられ、参加者同士で講演の感想や参加の動機を共有し合うことができた。
パネルディスカッションと講演会で取り上げられた論点の中から、特に「コロナ禍での教育支援・食の支援」というテーマについてご紹介する。
読者の皆さまもご存知のことと思うが、新型コロナウイルス禍によって小中学校が一斉休校となり、公立の高等学校でも休校措置が取られた。大学では現在もオンライン授業が行われ、ほとんど学校に行かないという学生も少なくない。
そんな中にあって、学習支援や食の支援の現場でも「ソーシャルディスタンス」を取ることが求められている。しかし、こうした支援は従来、対面でのやりとりを通して信頼関係を構築しながら行われているものであり、そう簡単にオンラインに移行できるものではない。試行錯誤しながら、それぞれ支援を継続しているそうだ。たとえば、オンラインで互いに顔を見ながら一緒にごはんを食べることで「孤食」にならないようにする「オンライン共食」という取り組みも行われているという。
オンラインではできないことがある一方で、オンラインだからこそできることがあるということもわかってきている。現に今回のイベントでも、会場にて開催した場合には考えられないほど多様な年代の方が全国から参加してくださった。
しかし、「オンライン化」は全員がオンラインの環境にアクセスできることが前提となっていることも忘れてはいけない。家にインターネットに接続できる環境がなかったり、パソコンを持っていなかったりする人もいる。そうした子どもたちがオンラインの学習支援を受けられるように、Wi-Fiやパソコンの無料貸与を行っている団体もあるそうだ。
大切なのは他者への想像力だ。そして、想像力を培うためには、色々な人の話を聞いて様々なことを体験してみることが大切だということに改めて気づくことができた。
「子どもの貧困」が新聞やニュースで取り上げられるようになって久しい。特に、新型コロナウイルス禍における一斉休校措置や緊急事態宣言により始まった自粛期間、それらに伴う経済活動の低迷によって、日本社会の中に潜在的に存在する「貧困」への注目度が高まっているように見える。しかし、危惧されるのはそれらの関心が、一過性のものになりはしないかということだ。
講演会の発案者・Wさん(東京大学全教養学部2年生)は、学習支援活動に携わる中でもっと多くの東大生に課題について知ってほしいと思うようになり、仲間を募って企画を立ち上げた。筆者は、食品ロスや食の貧困といった「食」をめぐる課題への関心から「子どもの貧困」について考えるようになり、今回のパネルディスカッション企画を開催するに至った。
社会の中には解決されなければならない課題が本当にたくさんあり、「子どもの貧困」もその中のひとつである。問題について知った人全員がその問題の解決に向けて行動を起こせれば素晴らしいが、それはなかなか難しいのが現実だ。しかし、まず大切なことは問題を「知る」ことだ。そこでハートが動かされたならば自分にできることを探せばよいし、そうでなくても心の片隅にとどめておくことが大切ではないだろうか。
まずは知ること、考えること。そして行動に移すこと。私たちにできること、その可能性は無限大だ。とは言え、気負う必要はない。ある1つの社会課題に対して、1人の人間にできることは80億分の1に過ぎないのだから。
第93回五月祭が、そしてこの記事が、読者の皆さまにとって何らかの「きっかけ」となることを願っている。
なお、下記のURLから見逃し配信を視聴することができる。実際にどんな支援が紹介され、どんな議論が行われたのかを見ることは、この問題を「知る」ことの一助になると思う。お時間のある方にはぜひアクセスしていただきたい。
★見逃し配信(~10月31日):講演会「子どもの貧困と教育」