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「現象学を学び、教育学部で「語り」が生み出す「学び」のテーマについて考えを深める」―2020推薦生インタビュー 教育学部

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2020推薦生丹原さん

PROFILE

  • 氏名:   丹原彩花さん
  • 出身校:  神戸大学附属中等教育学校(兵庫県)
  • 入学:   2020年 文科三類(教育学部進学予定)

――東大の推薦入試にチャレンジしたきっかけを教えてください。
幼い頃から東大に憧れがあり、中学生の頃に参加した入学説明会で、推薦入試の存在を知ったことがきっかけです。合格の可能性を広げられるなら挑戦したいと思いました。

――教育学部を志望することになった経緯を教えてください。
教育学部を志望するまでの経緯には少し長い説明が必要なのですが、最初のきっかけとなったのは、中等教育学校の探究学習で論文を執筆したことでした。その理論的枠組みとして現象学を学んだことが、大学での学びを考えるきっかけになりました。

――どのような論文を書いたのですか?
テーマは、英語学習における辞書使用でした。辞書の使い方って人それぞれ違うんだなと気付いたことが、この研究のきっかけです。使い方の多様性の背景には、英語学習に対する各学習者の価値観に違いがあるのではと感じるとともに、その多様性を調べるには数値的な方法では限界があるなと感じていました。辞書使用について、調査者が数値化して議論するのではなく、学習者自身に振り返って言葉にしてもらいそれを分析しようと考え、現象学の枠組みを学びました。

――現象学のどのようなところに惹かれたのですか?
自分の頭の中にあることを一旦保留して、他者の「語り」に耳を傾ける姿勢に意義を感じました。

――その後、丹原さんの探究はどのように進んでいくのでしょうか?
「語り」に関する書籍を探し、東大教育学部の牧野篤先生が書かれた『認められたい欲望と過剰な自分語り』という本に出会いました。この本の、「語る」ことによって自己を「生成」していくという考え方は、現象学を学び始めた私にとって、すごく新鮮な視点でした。現象学では他者の「語り」がその聞き手(私)に「学び」をもたらすということを経験したのですが、「語り」が生み出す「学び」とは、聞き手だけのためのものではないかもしれない、そう気づかせてくれたのがこの読書経験でした。
ひとりの人間の、とある経験に関して、その語り手と聞き手が相互に新たな理解を深められること、それは人間ならではの学び方であり、人格形成ではないかと感じました。このテーマについて深く考えるため、教育学部を志望しました。

――推薦入試を考え始めてから、どのように準備を進めましたか?
夏の模試までは一般入試の対策に集中し、そこから、以前書いた論文の加筆を行いました。修正したいところが多く苦しい時間ではありましたが、自分の研究の課題点を見つめ直す良い期間になったと思います。それを踏まえて、秋頃に志望理由書を書き始めました。
『人は、自らの経験を「語る」ことによって自分を生み出していく、それが「学び」なのではないか。』これは私が志望理由書を書いていくなかで身をもって感じたことです。こうした「学び」は、推薦入試に挑戦したからこそ得られたものだと思います。

――前期課程における早期専門教育として、受けたい授業や取り組みたい研究活動はありますか?
臨床現象学を受講したいです。研究の枠組みとしての現象学的基盤・知識を固めるとともに、その枠組みを用いて、人間の成長の「現場」に迫っていきたいと思っています。例えば「親になること」といった、人生の様々な局面での「現場」において、たくさんの人の「語り」に触れる4年間にしていきたいです。

――東大に入学して、どのような学生生活を送っていますか?
哲学、文学、言語学といった興味分野の理解を深めたり、在学生と卒業生とを繋ぐ企画サークルに参加して、新型コロナ対策や9月入学に関しての議論に刺激を受けたり、とても充実した学生生活を送れていると感じます。オンラインだからこそ、物理的距離を超えた面白い企画を実施してくださる先輩方や新入生の仲間、そしてオンラインでも、毎回最高峰の講義を提供してくださっている先生方と大学関係者の皆様に本当に感謝しています。

――最後に、推薦入学の先輩として、高校生たちにメッセージをお願いします。
新型コロナウイルスの蔓延で前代未聞の経験をされていると思いますが、その経験の語りが、いつか自分の、そして誰かの学びにつながる日が来ると信じて頑張ってください。私も頑張ります。

――ありがとうございました。これからもチャレンジを続けてください。
 

取材/2020年5月
インタビュー・構成/「キミの東大」企画・編集チーム