東大卒業後の進路【組織人事コンサルタント】―卒業生のいま(14)

2019.12.24

卒業後の進路

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東大卒業生インタビュー

東大生の卒業後の進路をお伝えするインタビュー。今回は、組織人事コンサルタントとして活躍されている杉江美祥さんを取材しました。キーワードは「自分で決める」。常にアクティブに思い切った決断をしてこられた杉江さんは、「大人って楽しいよ!」と語ってくださいました。

氏名:     杉江美祥さん
出身高校:   富山県立高岡高等学校
学部・大学院: 文学部 社会心理学専修
卒業後の進路: コンサルタント会社で「組織人事コンサルタント」として活躍中

 

「私の大学かっこいいな」と思えた東大でのキャンパスライフ

――東大を志望し、入学するまでの経緯を教えてください。
実は、高2までは別の大学を志望していました。でも、実際にオープンキャンパスに行ってみると「何だか違うかもしれない」と直感的に思ってしまったんです。そんなとき、高校の先生に「悩んでるならとりあえず東大って書いておきなよ」と背中を押され、東大志望になりました(笑)。その後、高3の夏のオープンキャンパスで本郷キャンパスを訪れて、「これは良いな!」と思いました。こっちも直感だったんですけど、キャンパス全体の建物の雰囲気だったり、いろんな人が学んだ歴史なんかに心打たれたりして、改めて東大に入りたいと実感しました。あのとき、モチベーションをくれた大学の景色は、入学してからもずっと好きでしたね。「ああ、やっぱり私の大学かっこいいな」って、歩きながら思っていました。

――文科三類に入学して、文学部の社会心理学専修へ進学されましたが、進路はどのように決められたんですか?
受験時に文科三類を選んだのは、人間の関わる歴史、思想、文学といった「人文学」の領域に興味があったからでした。それから、東大に入って授業を受けて、心理学に興味をもったので、進学選択では心理学が学べる学科をめざすことにしました。東大には心理学に関連する学科がたくさんあるんですけど、その中で私が進学したいと感じたのは文学部の社会心理学専修で、そこでは社会的な環境において人々がどのように行動するかを学びます。消費行動や服従の心理など、人が集まったときに生まれるものっていうのはすごくおもしろいテーマだなと思って、志望しました。

東大卒業生のいま 杉江さん
卒業旅行ではスペインに「巡礼」に訪れた

――お話を聞いていて、とても良く自己分析をされているように感じます。
私は、自分には臆病なところがあると思ってるんです。その分、何か行動を起こす前に「自分が好きで得意なことは何なのか」とか、「逆に苦手なことは何なのか」とか、よく考えるのが癖になっていて、「苦手だ」と気づいたことに関しては、積極的に挑戦するようにしていました。たとえば、人前で喋るのが苦手だからこそ、「よし!集団塾の講師のアルバイトをしてみよう!」って感じです(笑)。
 

思い切って4年生でベトナムへ。「しんどくなったら、ベトナムに行こう!」

――塾講師のアルバイト以外に、課外活動はどんなことをされていましたか?
大学でやりたいことの1つに「海外に出る」というのがあったので、長期休暇を利用した大学のプログラムに何度か参加しました。ほかにも、フェリーと寝台列車で中国を旅行するプログラムにも単身で参加しました。

――アクティブに活動されてたんですね。
やりたいことはできる限りやろうと思っていました。もちろん、行った先で何をするかも大切だと思うのですが、それ以前に、自分で何をするかを決めることが大切だと思っていました。大学3年生の夏、もう就活に向けたインターンなんかも始めていたのですが、このまま4年で卒業していいのかと、ふと不安になりました。悩んで悩んで、「まだやりたいこと、やりきれていないな」って思ったんです。そこで、4年生に上がる前に1年間休学することにしました。留学ではなく、インターンとして、9ヶ月間ベトナムに行くことにしたんです。

――ベトナムですか?
ベトナムの社会起業家を支援するベンチャー企業にインターン生として採用され、現地のアパートで一人暮らしをしていました。今では、行って本当によかったと思っています。ベトナムって物価も安いし、暮らしている人たちもなんだか気楽であたたかくて、「これから日本に帰ってどうしようもなくしんどくなったら、ベトナムに行こう」って心に決めました。こうやって、肩の力を抜くことができたことで、そのことが、私にとってはすごく貴重な経験となり、この経験があったからこそ、辛いことがあっても乗り越えられているなって思います。

東大卒業生のいま 杉江さん
ベトナム滞在時の杉江さん

 

大人になるのは楽しいこと。「月曜日が楽しい」と思える大人を増やしたい

――ベトナムでのインターンシップの後、今の会社に就職されたのはどういう理由からですか?
帰国してから改めて就活をして、今の会社に就職が決まりました。この会社に就職した理由の1つが「月曜日が楽しい」と思える大人を増やしたいと思ったからです。東大に入る以前は、仕事って辛いものなんだと思っていたんですけど、上京してみて、世の中には「仕事が楽しい」と思える大人が実はたくさんいることに気づいたんです。私が東大に入って得た財産はそれですね。そういう人がもっと増えたらいいなと思っています。

――お仕事は、具体的にどのようなことをなさっているのでしょうか?
私の勤める会社は、主に人の所属する組織そのものを作ったり、企業のビジョン設定のお手伝いをしたりする会社です。組織と事業って、企業にとってどちらも欠けてはいけない大切なもので、その両輪を回すっていうのがコンセプトです。「月曜日が楽しい大人を増やしたい」という想いをもって就職していたら、コンセプトに共感できる今の会社に出会えたという感じです。

――労働の場である組織の改善を仕事にされたということですが、現在のお仕事に社会心理学科でのご経験は活きていると思いますか?
直接関わりがあるようには見えないかもしれませんが、人が集まる組織について考えるうえで、基本的な考え方は活きていると思います。

――最後に、読者の高校生・受験生にメッセージをお願いします。
東大では人生におけるたくさんの選択肢にめぐり会えました。最近、人生の幸福度には自己決定の度合いが強く影響しているという話を聞いたんですが、私は東大で多くの選択肢を得られたから、自己決定の度合いも高いのだと思っています。東大で過ごせたことは本当に幸運でした。また、大人になるのは、みなさんが思っているよりもきっと楽しいです。これからますますおもしろくなっていく人生を、どうか楽しみにしていてください。
 

取材/2018年11月
インタビュー/林怜実(学生サポーター)