「東京大学総長賞」令和2年度 受賞者の声(学業編)―東大を目指すキミへのメッセージ
表彰を受ける(総長賞)
2021.04.19
2019.09.09
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#課外活動
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東大総長賞とは?
東大総長賞は、「本学の学生として、学業、課外活動、社会活動等において特に顕著な業績を挙げ、他の学生の範となり、本学の名誉を高めた者」(個人又は団体)に対して、東大の総長が直々に表彰を行う賞です。賞の授与は平成14年から始まり、年に1回、受賞者の表彰と、受賞者による活動(研究や課外活動、社会活動など)の内容に関するプレゼンテーションが行われています。平成30年度は、12名(うち3名が共同受賞)と1団体が総長賞を受賞しました。
「キミの東大」では、平成30年度の受賞者の方々を対象にアンケートを実施し、活動/研究の内容を教えてもらうとともに、高校生の皆さんへのメッセージもいただきました!ぜひ、東京大学の学生の幅の広さと学びの深さを体感してください。
参考リンク
学生表彰「東京大学総長賞」の概要・歴代受賞者について
課外活動、社会活動等
※受賞者名による50音順
【受賞者名】
川本亮さん 教養学部2年(受賞当時。現在、医学部医学科3年生)、兵庫県出身
高橋宗知さん 教養学部2年(受賞当時。現在、医学部医学科3年生)、東京都出身
山田陸さん 工学部物理学科3年、秋田県出身
【受賞テーマ】
アメリカミズアブを用いた食品リサイクル プロジェクト「Grubin(グラビン)」を 通じた国内外での社会貢献
ハエの一種であるアメリカミズアブの幼虫を用いて生ごみを分解し、成長した幼虫は飼料に活用するという食品リサイクルプロジェクトGrubin(グラビン)を立ち上げました。カンボジアにおいては公衆衛生改善の観点から、下痢等の病気の原因となる腐敗した生ゴミの減量と有効活用に取り組みました。現在は、日本での循環型社会実現を目指し、大手企業や自治体と連携して、プロジェクトの普及活動を行なっています。その新規性と社会的に対する影響力の大きさが評価され、国内外で多数の賞を受賞しました。専門分野や大学生の枠に捉われない活動とその社会貢献は、東京大学のキャッチコピー「志ある卓越」を体現する一つの形として高く評価されています。
【受賞者名】
近藤秀一さん 工学部4年(受賞当時。現在、GMOインターネット株式会社(GMOアスリーツ所属))、静岡県出身
【受賞テーマ】
四度目の正直で箱根駅伝に出場した東大ランナー ★総長大賞★
2019年1月2日から3日に開催された第95回箱根駅伝にて、関東学生連合チームの第1区として出走し、東大生としては14年ぶりに箱根路を駆け抜けました。関東学生連合チームには過去3回選出されていたものの、昨年の第94回大会でインフルエンザによる無念の欠場を経験するなど、出走にはあと一歩届かずにいました。そのため今大会が「四度目の正直」での箱根駅伝出走となりました。
また、血中乳酸濃度を指標とした高強度トレーニングを取り入れることで効率的に競技力向上を図るなど、工学部化学生命工学科での研究活動とトレーニングを両立させる姿勢は、学生アスリートの模範として高く評価されています。
【受賞者名】
原田一貴さん 総合文化研究科 博士課程3年(受賞当時。現在、総合文化研究科 助教)、神奈川県出身
【受賞テーマ】
東京大学教育学部附属中等教育学校での 生物部指導員としての活躍
「資金や設備に頼らずに高い評価を得られる中高生の理数探究活動」を実現すべく、東京大学教育学部附属中等教育学校の生物部外部指導員を務めてきました。生徒のアイデアを、身近な機器を用いて実現できるよう助言を続け、資金や設備に頼らない探究活動を支援してきました。その結果、多くの部員が国内外の大会で多数の賞を受賞するなど、国際舞台で活躍できる人材育成に貢献しました。この功績は、中高生の理科への知的好奇心を刺激する指導模範となっています。
【受賞団体名】
理論科学グループ(TSG)
【受賞テーマ】
SECCON CTF での日本初の国際大会優勝を始めとする各種 CTF 大会での受賞
東京大学理論科学グループは、主にコンピュータや情報科学に関する自主的な研究活動を行う、50年以上の歴史をもつサークルです。平成30年度は、サイバーセキュリティの専門的能力を争う「CTF」と呼ばれる競技において、複数の大会で並外れた業績を収めました。とりわけ日本最大の大会である「SECCON CTF 2018」においては、国際部門での優勝という日本チーム初の快挙を成し遂げ、大きな注目を集めました。学生チームでありながら世界の強豪と対等以上に戦い抜いたこれらの業績は、国内外において高く評価されました。
学業
※受賞者名による50音順
【受賞者名】
蘆田祐人さん 理学系研究科物理学専攻 博士課程3年(受賞当時。現在、工学系研究科物理工学専攻 助教)、東京都出身
【受賞テーマ】
開いた量子多体系における測定の反作用と強相関効果の解明
身の回りにある物質は電子や原子が相互作用して形作られています。このようなミクロな世界の運動を記述する物理法則を、量子力学と呼びます。量子力学を基礎にした科学技術は日進月歩の発展を遂げつつあり、以前は夢物語であった量子シミュレータや量子コンピュータが世界中の研究拠点で研究されています。
この研究では、物性物理学の量子多体系の理論と、量子光学で確立された開放量子系の理論を巧みに組み合わせ、開いた量子多体系に関する多くの先駆的研究を行いました。特に開放系の視点を取り入れることで、新奇な量子臨界現象の普遍クラスを発見しました。さらに、環境と強く結合した開放量子系について現存する最高の数値計算手法よりも格段に高効率な理論手法を開発することに成功しました。この分野で最も名誉あるハーバード大学のフェローシップを日本人で初めて授与されるなど、これらの成果は国際的にも高く評価されました。
【受賞者名】
板倉健太さん 農学生命科学研究科 修士課程2年(受賞当時。現在、農学生命科学研究科 博士課程1年)、大阪府出身
【受賞テーマ】
画像処理及び深層学習を用いた植物の3次元情報解析
移動可能な3次元センサーを用いて植物を計測し、そのデータを、深層学習や3次元点群処理などの技術を用いて解析しました。結果、植物を自動的に検出したり、植物の構造(高さ、幹の太さ、葉の密度など)に関する情報を自動的に推定することに成功しました。この技術をドローンや自動運転などの技術と組み合わせることによって、大気浄化や二酸化炭素固定など様々な環境浄化機能を有する植物の適切な評価が行えるようになり、環境と人類の調和した未来を切り拓くことが期待されます。
【受賞者名】
川畑幸平さん 理学系研究科 修士課程2年(受賞当時。現在、理学系研究科 博士課程1年)、兵庫県出身
【受賞テーマ】
非エルミート物理における対称性とトポロジーに関する基礎理論の構築
物理学は、いくつかの基礎概念をもとに自然現象の普遍法則を描くこと、つまり、基礎理論の構築に取り組んできました。しかし、物理学の基礎理論への挑戦は、非平衡開放系等を対象とする非エルミート物理という領域においてはほとんど発展していませんでした。そこで、非エルミート物理において、「対称性」と「トポロジー」という、最も本質的な問題に取り組み、その理論的枠組みの構築を試みました。その結果、従来の基本対称性が統一および分岐するという事実を発見し、非エルミートなトポロジカル相を包括的に分類する一般理論を提示することができました。一連の研究成果は、基礎理論として重要であると同時に、新しい現象や機能を切り開くものとして、高く評価されました。
【受賞者名】
坪山幸太郎さん 新領域創成科学研究科 博士課程3年(受賞当時。現在、定量生命科学研究所 博士研究員)、栃木県出身
【受賞テーマ】
生命のダイナミックなしくみを 自分の目で見て理解する
RNAサイレンシングという、真核生物において遺伝子の発現を調節する機構の一つに注目しました。特に、この機構で中心的な役割を担うアルゴノートタンパク質が、小さなRNAを取り込む際にダイナミックに構造を変化させる様子を1分子レベルで捉えることに成功しました。同様の構造変化を必要とすると考えられるタンパク質は細胞内に数百あることが知られています。よってこの成果はRNAサイレンシング分野のみならず、タンパク質の構造変化とその機能を理解するという観点からも極めて重要です。研究の成果は海外の学術誌に掲載されただけでなく、日本学術振興会育志賞を受賞するなど、高い評価を受けました。
【受賞者名】
村岡恒輝さん 工学系研究科 博士課程3年(受賞当時。現在、UCバークレー/ローレンスバークレー国立研究所 日本学術振興会海外特別研究員)、東京都出身
【受賞テーマ】
実験化学、計算機化学、データサイエンスの融合による設計的ゼオライト合成
実社会の様々な場面で利用されているゼオライトと呼ばれる材料群を対象として、スーパーコンピューターを用いた大規模理論計算や人工知能(AI)、機械学習によるデータマイニング等の手法を用いて材料開発を行いました。その結果、特異な原子位置、組成をもったゼオライトの結晶化に成功し、高い評価を受けました。ゼオライトの合成分野は、歴史があるにもかかわらずガイドラインが確立されておらず、この成果はこの分野の発展に大きく貢献したと言えます。また、実験化学、計算機化学、データサイエンスを融合させた本研究の成果は、目的に適合的な材料を得るための膨大な試行錯誤の手順を大幅に軽減できる可能性を秘めています。
【受賞者名】
安田憲司さん 工学系研究科 博士課程修了(現在、マサチューセッツ工科大学物理学科)、東京都出身
【受賞テーマ】
磁性トポロジカル絶縁体積層構造における創発輸送現象
トポロジカル絶縁体とは、内部が絶縁体で、表面にのみ電子の運動方向と垂直方向にスピンが偏極した金属状態を有する物質です。これに磁性の性質を付与すると、磁性トポロジカル絶縁体という新しい物質になります。この磁性トポロジカル絶縁体の表面の電気と磁気との関係が、通常の物質と大きく異なることに注目しました。この電気と磁気の相互作用を輸送測定から明らかにすることを試み、その結果、既存の半導体材料では実現しえない多彩な電気伝導現象を発見しました。一連の成果は海外の学術誌に掲載され、高く評価されました。今後は省電力デバイスの開発への応用が期待できます。
【受賞者名】
山岸純平さん 教養学部4年(受賞当時。現在、総合文化研究科広域科学専攻 修士1年)、兵庫県出身
【受賞テーマ】
代謝物の漏出とやりとりによる細胞間分業と共生の数理、物理そして経済学 ★総長大賞★
細胞同士が自身にとって必要な物質を漏らし、相互にやり取りすることで、細胞間の分業や共生が進んで細胞が集団的に繁栄することを、物理学を基盤とした数理モデルを通じて明らかにしました。また、このような漏出を経済学の理論を用いて解析することで薬剤投与への応答を新たに予言し、逆にミクロ経済学における知見も得られました。一連の研究成果は国内外の学会で報告され、成果の一部が国際学術雑誌に論文として掲載されるなど、高い評価を得ました。