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東大卒業生インタビュー・経営者―天文学、物理化学、化学製品の開発、そして会社経営へ。「人生に『失敗』は存在しない。とにかく体験してみて」

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卒業生 海老原育子さん

東大卒業生インタビュー

東大生の卒業後のいろいろな進路をお伝えするインタビュー。東大卒業後に様々な場所で活躍する女性たちをご紹介します。東大での学びや経験をスタート地点として、彼女たちが歩んできた道のりとは?

PROFILE

海老原育子さん

出身高校:   横浜共立学園高等学校(神奈川県)
学部・大学院: 理学部 化学科(1988年卒業)、理学系研究科 化学専攻(1990年修士課程修了)
卒業後の進路: ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー 代表取締役プレジデント

――まず、海老原さんが東大に進学された理由を教えてください。
高校時代、天文学に興味があったため、天文学科のある大学を探していました。ですが、当時は天文学の学べる大学は少なくて。その中で東京大学に興味を持ち、理科一類で入学しました。

――3年次の進学振り分け(現在の進学選択)では、希望通り天文学の道に進まれたのでしょうか。
いいえ。前期課程の間に教養学部でいろいろなことを学ぶにつれ、物理化学、特に化学反応に興味を持つようになり、理学部の化学科に進学を決めました。

――なるほど。学生生活を経て興味分野に変化があったのですね。卒業後のお仕事は、どういった経緯で選ばれたのでしょうか。
卒業後の就職では、外資系の化学会社のR&D(Research and Development、研究開発業務)の仕事を選びました。大学院での研究とは直接結びつくものではなかったのですが、様々な基幹テクノロジーを市場のニーズと結びつけて、なかったものを創り出すという役割に惹かれたのです。また、素材のみを作るメーカーではなく、最終製品まで作りこむビジネスであること、本社に様々なテクノロジーがあること、日本国内でも実際の開発業務が行えることが魅力でした。加えて、研究・開発に集中する分、それ以外のプライベートの時間は全く違うことがしたくて。その機会が多いという点で、首都圏で勤務できることも魅力の1つでした。

――その後、転職は経験されましたか?
はい。1度しています。

――それはどんな経緯があったのでしょうか。
当時私は、以前から「いつかは海外で働く機会を得たい」と思っていたこともあり、日本支社から本社に転籍し、アメリカで働いていたんです。ところが東日本大震災が起こり、何か日本に貢献したいという気持ちになりました。海外で10年以上働いた経験を基に、日本の経済活動や雇用の増加に貢献したい、また日本の若い人たちに対し、世界レベルで活躍するための成長を促せるような機会も沢山作りたいと考え、日本に戻ることにしました。

――それで、今の会社に入られたのですね。大学時代の研究と今の仕事との関連については、どのようにお考えですか?
理学の研究と会社の経営は、一見結びつきがわかりづらいかもしれませんね。しかし、大学で「自ら問題意識を持って課題を設定し、仮説を立てて解決策を見つける」という研究の心構えや基礎を学んだことは、卒業から今に至るまで役に立ち続けている自分の財産です。問題解決の手法と考え方は、どんな場所においても、どんな役割においても役立つものだと感じます。

――大学生活を通して学んだ研究の心構えそのものが活きていらっしゃるのですね。仕事をしている今だからこそ言える、高校生・受験生へのメッセージをいただけますか。
高校時代に、「これをする」と人生を決めてしまう必要はないと思います。様々なことに興味があったら、それをとりあえずやってみることをお勧めします。また、選べないのであれば、お友達に付き合ってとりあえず何か試してみるでもいいのかもしれません。
大事なのは体験してみて、その体験を教訓にすることだと思います。その意味において、人生には「失敗」は存在しませんから、いろんなことにチャレンジしてもらいたいと思います。

――ありがとうございました。

(海老原育子さんが、2020年4月24日にご逝去されました。心からご冥福をお祈りいたします。)

最終更新/2020年5月
インタビュー・構成/学生ライター・林怜実