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  タカハシカズコ（永遠の17歳？）
  東大に興味はあっても、志望校に決めきれない高校生・受験生がたくさんいると聞いて、東大のあれこれを調査中。目標は「東大に進学するってどういうこと？」っていうギモンを解明して、それを伝えること！

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●　ゼミって、具体的に何をするところ？
●　ゼミを受講したら、どのようなことができるようになるの？

取材に協力してくださった、文学部の村本由紀子教授（※感染対策のため、マスク着用）

カズコ　□村本先生、こんにちは！

村本先生　カズコさん、こんにちは。今日はどうしたの？

カズコ　□今日は「東大のゼミ」について教えてほしくてきました！先日、東大生と話す機会があって、そのときに「東大のゼミって、大変だけど楽しい！」って話を聞いたんです。でも、ゼミって何なのかよくわからなくて…。高校までの勉強と、どんな違いがあるのか知りたいです！

村本先生　たしかに高校生にとって、ゼミって馴染みがないものなのかもしれないですね。私が所属している文学部の社会心理学研究室の例でよかったら、紹介しますよ。

カズコ　　うれしい！ありがとうございます。
 

3年生のゼミ・4年生のゼミ

村本先生　文学部でも、研究室によってやり方はさまざまなんだけど、社会心理学研究室の場合、3年生のゼミと、4年生のゼミは違うものと考えてもらったほうがいいかな。

カズコ　　そうなんですか？

村本先生　東大の場合、2年生のAセメスター（秋学期）の進学選択で進学先が内定してから、専門である社会心理学のカリキュラムが少しずつ始まっていくんだけど、本格的に学ぶようになって半年してから、3年生のゼミが始まります。全体の流れは、下の図をご覧ください。

社会心理学研究室の履修の仕組み

村本先生　ゼミは、社会心理学研究室の教員4名（教授もしくは准教授）がそれぞれ担当するから、Sセメスター（春学期）に2つ、Aセメスター（秋学期）に2つの合計4つのゼミが開講されています。

カズコ　　では、最大4つまで履修できるってことですか？

村本先生　本人の希望次第では履修が可能です。実際、3つ履修する学生はよく見かけますよ。

カズコ　　4年生のゼミではどんなことをするんですか？

村本先生　4年生のゼミは卒業論文（卒論）の作成がメインです。4月に指導教員が決まってから、「所属ラボ（※）」が決まることになるんだけど、そこで研究計画を立案、実施、分析、執筆、という流れになります。

（※）「ラボ」は「Laboratory」の略語で、似たような研究テーマをもった教員や学生たちが、協力して実験や調査などの研究活動を行うグループのこと。ただし、このようなグループを「ゼミ」や「研究室」と呼ぶ学部・学科もあり、東大生同士でも「ラボって何？」という話になったり、「ゼミ」や「研究室」という言葉の意味が違って伝わっていたりする場合もある。

カズコ　　4年生のゼミで卒論を書くのはわかったけど、3年生のゼミって何をやるんですか？

村本先生　基本的に輪読（数人が順番に、論文や本などの文献を読み、議論すること）とグループワークが多いですね。社会心理学っていうのは、基本的に調査や実験という実証研究がベースになるんだけど、2年生から実習で調査や実験のやり方を学び始めるんです。3年生でもこうした実習は続いて、さらにゼミも加わります。

カズコ　　いきなり「自分がやりたいことをやる！」というわけじゃないんですね。なんか「段階を踏んで」っていう感じがしますね！
 

輪読とグループワークで「切り口」の多様性を学ぶ

カズコ　　村本先生が担当された3年生のゼミでは、どんなことをしていたんですか？

村本先生　今年は13人が履修していて、『多元的無知』をテーマにした輪読と研究計画の立案をしました。多元的無知っていうのは、集団内に存在する暗黙のルールについて、自分は支持していないにもかかわらず「ほかの人たちは支持しているのだろう」と、その集団の多くの人が思い込むことで、結果的に誰も望まないルールが維持されてしまう現象のことなんだけど、これを扱った文献を取り上げています。
ちなみに昨年は『心と文化の研究』を扱いました。「東洋と西洋では人々の心理や行動の傾向に違いがあるけれど、なんでだろう？」ということを考える領域といえばいいのかな。

カズコ　　輪読で勉強するって、あまりイメージできません…。「書かれていることをみんなで理解しよう！」っていうことで合っていますか？

村本先生　そうですね。理解するっていうのはもちろん大事なんだけど、切り口を学んでもらうっていうのが、もっと大事なねらいかな。
「心と文化の研究」で説明すると、心の文化差っていうのは、自然環境や社会構造から説明しようとするマクロ（※）の切り口もあれば、逆に神経科学のようなミクロ（※）の方向から考えようという切り口もあるので、学会ではこういうことが議論になっていて、切り口も多様なんだよということを知ってもらいたいです。

（※）マクロは「巨視的」、ミクロは「微視的」と訳され、学問分野によって意味が多少異なる。村本先生の専門の社会心理学では、社会の仕組みやそこで起こる現象といった、大きな規模の対象に注目することを「マクロ」、個人の行動や細胞の反応といった、社会や人体の構成単位に着目することを「ミクロ」と呼ぶことが多い。

カズコ　学会に参加するような研究者同士で議論になっていることに触れるってことですね！急に「学問」って感じがしてきました！

村本先生　あとは、「この領域ではここまでわかっているけれど、ここから先まだ問いが残っている場合、どの切り口で考るのか？」とか、「いろんなアプローチを知ったうえで、卒論についてどう考えるのか？」といったことを考えながら、研究に取り組んでほしいですね。
 

トピックではなく、切り口

カズコ　高校では「大学に入ったら、ジェンダーとか、環境とか、こういうトピックのことをやりたいよね」っていう話をよく耳にするんだけど、どういう切り口でっていうことまでは、私も考えたことはなかったです。

村本先生　「トピック」ということでいうと、どんなトピックであっても、私たち社会心理学研究室の教員は卒論指導ができると思うんです。それに教員はみんな実験もするから、学生の関心があるっていうトピックについての実験へと導くことができると思います。だけど、さっきから話しているように、教員によって切り口が違うから、どこに一番注目して実験をデザインするかが違ってきます。私自身は社会や文化など、マクロな視点からの研究に取り組んできたから「そういう切り口で卒論を書きたい」っていう学生向きのラボっていえるかな。

カズコ　村本先生は優しそうだから、「指導教員は村本先生で！」っていう決め方ではいけないってことですね。

村本　　やっぱり、問いの立て方とか切り口が自分とぴったりくる教員の指導を受けることこそが、ワクワク感につながると思うんです（笑）。

カズコ　なるほど！なんとなくわかってきました。

村本　あと、3年生のゼミでは「これをみんなで議論したい」というトピック出しも学生たち自身にやってもらっています。自分たちで考えたトピックなので、議論も盛り上がっていますよ。 もちろん、状況によっては、私が助け舟を出すこともありますけどね。

第2回に続く

インタビュー・企画・画像提供／タカハシカズコ

撮影／福澤治幸（学生サポーター）
構成／タカハシカズコ、「キミの東大」編集チーム

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