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「自分が好きなものや、できるものを見極めながら大人になっていく」―人文社会系研究科・学生インタビュー

2024.03.22

STUDENT VOICE

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東大の学生は、どのような学生生活を送っているのでしょうか? STUDENT VOICEでは、東大生が東大生にインタビューをし、大学での学びだけでなく、課外活動など、多様な活動に取り組んでいる東大生の学生生活を紹介します!


  • 氏名: 張 文經
    所属: 人文社会系研究科
    入学: 2014年度
    出身校:北海道札幌南高等学校

国文学研究室で近代文学の研究を行う傍ら、若手詩人として注目を浴びている張文經さん。昨年(2023年)末、初の詩集『そらまでのすべての名前』(思潮社)が刊行されたばかりだ。自ら文学研究を行うと同時に、詩や小説の創作でも最前線を走る張さんに東大での生活、そして研究と創作について聞いてみた。

中高時代を札幌で過ごした張さんは、当時から文学少年で、東大を受験したきっかけのひとつが夏目漱石や芥川龍之介といった文豪が東大(一高)出身だったからだという。高校では同じように東大を目指す友人がいたことで、さらに意識が高まったそうだ。

東大入学後は、サークル活動にも積極的に打ち込み、50年以上の歴史を誇る文芸サークル「東京大学文学研究会」では代表を務め、同会の同人誌『駒場文学』に詩や小説を載せている。
「文学研究会に入ったのは、駒場で同じクラスだった友人が勧めてくれたからです。同年代で自分より多くの本を読んでいる先輩に出会い、衝撃を受けました。新歓の賑やかな雰囲気が苦手だったので、文学好きな人たちの落ち着いていて、少し斜に構えた感じが逆に居心地が良かったのかもしれません(笑)」

駒場での2年間の学びを終え、文学部に進学してからは、『風立ちぬ』などで知られる小説家、堀辰雄を研究している。中高から愛読していた芥川ではなく、その弟子の堀辰雄を研究対象に選んだのは、その作品の不思議な魅力に惹かれたと同時に、どこか親近感を感じたからだという。
「堀辰雄の小説には、どこか詩みたいな部分があって、自分でも詩を書いているので、そこに興味をもちました」

学部を卒業した張さんは、大学院に進学し、国文学研究室で修士・博士課程にかけて堀辰雄の研究に取り組んでいる。博士課程に進んだ今は、研究してきたことを1冊の本として残したいというのが大きなモチベーションとなっているそうだ。

また、堀辰雄の研究を続ける一方、詩や小説の創作にも精力的に取り組んできた。2020年からは『駒場文学』を作っていた仲間たちを中心に純文学同人『上陸』を立ち上げ、編集長を務めている。
「『駒場文学』を作っていたとき、誰かと一緒に文学を読んだり、作ったりする喜びを知りました。そこは『上陸』でも大切にしている部分です。文学って、ともすると孤独に向き合うものだと思われがちだけど、人と話したり関わったりするなかで、自分や相手が変わっていくっていうのも言葉とか表現の大事な部分だと思うんですよね。東大に入ってから、そういう出会いを生み出せたのはすごく自分にとって大事なことでした」

このような活動が身を結び、それまで雑誌『現代詩手帖』や『上陸』で発表してきた詩に書き下ろした詩を加え、詩集『そらまでのすべての名前』を出版。詩集が出たことで「より多くの人に自分の詩を読んでもらえている実感があって、とても嬉しい」と語った。


張さんの初の詩集『そらまでのすべての名前』(思潮社)

多方面で挑戦を続けている張さんだが、最近では研究や創作の傍ら、都内の高校で現代文の講師も務めているという。
「授業では、研究していることを解きほぐして伝えるよう工夫しています。そのプロセスから自分自身が学ぶことも多いです。そういう点で教えることは楽しいですね」

最後に、東大を目指す高校生へのメッセージを聞いた。
「東大は入学してからもいろいろ試せる場だし、自由度が高いです。その分、入学後も悩んだり考えたりするし、進学選択で区切られることで、ゆっくりマイペースに大人になりたい人には難しさもあるかもしれない。だけど、自分の道は自分で選び、こだわりをもって大人になりたい人には向いていると思います。自分が好きなものや、できるものを見極めながら大人になっていくこと。東大はそれができる場所です
文学研究者として、詩人として、教員として――。研究や創作など、多方面で活躍する張さんから今後も目が離せない!

新荘 直大 さん(人文社会系研究科)

茨城県出身。張さんは尊敬する先輩であると同時に、趣味のフットサル仲間でもある。現在、フランス文学研究のためにフランスのリヨンに留学中。

取材・文/学生ライター・新荘直大
WEBデザイン/肥後沙結美