ちょっとひといき ちょっとひととき(6) 

2023.04.12

東大生コラム

テーマを絞って発信する東大生のコラム企画

第6回目のテーマは東大生の「はじめて」ものがたり。春です。ひとり暮らし、新しい友人との出会いや学びなど「はじめて」をたくさん経験できる季節がやってきました!今回お届けするコラムは、東大生の「はじめて」にまつわるお話です。春の訪れとともにお楽しみください。

私流・ひとりたび1年生

工学部4年 伊達巻

今年の春休みに、私は人生で初めて一人旅に出かけました。今までは家族旅行や合宿など、ほかの人に企画をお任せし、自分はついていくだけの受け身の旅行しか経験したことがありませんでした。慣れないネット予約に苦戦しつつも、初めて訪れる旅先に胸を膨らませながら計画を練りました。
旅の舞台に選んだのは仙台。当日の気分で旅程を変えたりして、思いのままに旅を楽しみました。一人で旅をするのは少し寂しかったですが、地元の方に話しかけられて、より一層人の温かさを実感しました。一人船旅、一人飲み会など、旅では様々な「おひとり様」を体験しました。最初は照れ臭かったですが、友達や家族と一緒にしていることを一人でやってみると新鮮で面白かったです。特に思い出に残ったのは「一人焼肉」。五感を研ぎ澄ましながら肉を焼くのを楽しみ、黙って噛み締めることで普段より集中して肉を味わえたような気がします。感動や楽しさを分かち合うグループ旅行も良いですが、誰にも邪魔されずに静かに感動し、またその余韻に浸れる一人旅の魅力に気づくことができました。

日本三景・松島にて

 

油そばとの出会い

文科一類2年 M

大学進学のため上京した直後、私は魅力的な料理に遭遇した。油そばである。油そばとは、端的には汁なしのラーメンのことである。少量のスープが張った容器にラーメンのような麺が入っている、いたってシンプルな一品である。と、簡潔に記述してしまったが、本来左様に簡潔に記述してよい代物ではない。油そばの麺の性質やスープの味つけは多様性に富んでいる。麺の性質に関して、麺の太さは勿論、麺の硬軟も多様である。スープの味つけに関して、淡泊な塩ベースのものから、濃厚な醤油豚骨ベースのものまで様々である。私の好みは太麺で濃厚な醤油豚骨ベースの味つけがされた油そばである。濃厚な味わいが太麺によく絡み、口内でスープの旨みが麺自体から染み出るのである。贔屓の油そば店へは、テスト後等に楽しみとして足を運ぶのである。
私の油そばへの思い入れをみなさんにも十分認識していただけたら幸いである。是非、新たな一歩を踏み出されるに際し、魅力的な食事と出会われることを願ってやまない。


油そば W盛り

 

はじめてを積み重ねた先に

理学系研究科 ちゃい

今回のテーマは「はじめて」だ。はじめては漢字では「初」と書く。衣に最初に入れる刀、が転じて現在の意味になったようである。
小さい頃は身の回りの全部が初めてだった。初めての言葉、初めての食事、初めての友達、初めての旅。歳を重ねるに連れ、初めては少なくなってゆくのだろうか。もう食べたことあるもの、もう読んだことあるもの、もう行ったことある場所…。
大学生になってからの初めてを思い返してみる。初めてロシア語に触れた、初めてプリンセスケーキを食べた、初めて彼氏ができた、初めて一人で海外に行った。
歳を重ねても、初めてはたくさんあると思う。ただ、小さいときよりもspecificな初めてになるのだ。
小さいときは無邪気に大きな布に刀を入れていた。様々な知識や経験を経て、これからの私はもっと解像度の高い布に刀を入れる。 今の私の周りには,過去の私が刀を入れた布が転がっている。今までの人生でいくつの布を纏える服にまで仕立てられただろうか。初めては大事だが、その後のほうがもっと重要だ。自分の周りの布を大事に拾い集めて形をつくりながら、新しい布に刀を入れて飾り付けてゆこう。いつか振り返る日に、とびっきりの服を着て笑えるように。


夕方の空に咲いていた桜

 

はじめての一眼レフ

人文社会系研究科 しんじょー

興味はあっても、はじめるまでは踏み出せないものってありますよね。私にとってのそれは、カメラでした。友人に写真好きの人がいて、一眼レフカメラで撮影した格好いい写真、きれいな写真を見せてもらうたび、「あんなふうに写真が撮ってみたい!」と思うようになりました。ただ、一眼レフを使いこなすには、各種のレンズを揃えるだけでなく、ピント調節や露出などの知識を覚えることが必要という話を聞き、二の足を踏んでいました。
しかし、ついに先日、はじめての一眼レフデビューを果たしました! 知り合いの意見も参考にして、初心者も使いやすいデジタル一眼レフにしました。まだまだ使いこなすには、ほど遠いですが、ふと思いたったときにカメラをもって出かけ、写真を撮るのはとても楽しいです。色々な撮影モードを試したり、シャッター速度や露出にこだわってみたりと、スマホだけでは味わえない楽しさも。
思い切って「はじめて」に踏み出したことで、知らなかった楽しみに出会うことができました。みなさんにとっても、素敵な「はじめて」を経験し、新たな楽しみを見つける春になることを願っています。


はじめての一眼レフ

 

初めての留学

理科二類1年 るりびたき

新型コロナウイルスの大流行開始から約3年。日本でもマスクの着用が任意になり、徐々に新型コロナウイルス禍からの解放が見られるようになってきたこの春、私は初めての短期留学に行ってきました。行き先はオーストラリア。中止になった高校の修学旅行と同じ行き先にやっと行けることになり、胸を踊らせながら旅立ちました。
現地ではホームステイをしました。スピーキングが苦手だったため、ホストファミリーとコミュニケーションができるか不安でしたが、下手な英語でもしっかり理解して貰え、日常会話にとどまらない文化的・政治的内容の話もすることができ、非常に貴重な経験になりました。
日中は現地の大学で英語の授業を受け、放課後や午前中には同じプログラムに参加した人たちと海や観光地に赴きました。自然に囲まれた都市での生活は特別でした。特にサンセットは幻想的で一番印象に残りました。
留学に応募しようと心に決めてからも、不安や心配によって思いとどまることが何度もありましたが、勇気をもって一歩踏み出すことができたおかげで、一生に一度の有意義な体験をすることができました。

サンセット

 

メダカが畑を産んだ

理学系研究科 Y.Y.

ある日、私が住むアパートの管理人さんと偶然すれ違った。その際、そういえば管理人さんにはお孫さんがいて、カブトムシやメダカなどが好きであったことを思い出した。そして、私もメダカの養殖をしている為、数匹譲ろうかと声をかけた。それが私の「はじめて」の始まりである。その際、管理人さんはナタを持っていた。普通に聞いたら怖いかもしれないが、そんなこともない。彼が近くの畑で作業しているのを何回も見ていたからである。泥で汚れた服装のまま彼が家から持ってきたバケツの中にメダカを20匹くらいシャクですくって一匹ずつ入れながら、私が暇なとき畑を手伝うという話をした。
そんなこんなで、週に1時間くらい畑を手伝っていた時の事である。私も自分で畑をやってみる事になった。管理人さんが分けてくれた土地は、ざっと 1600 ㎡くらいある。これがどのくらいの大きさなのかというと、普通に農家さんが持っていてもおかしくないくらいの広さである。これから春。雑草を刈るところから始めなければいけないのだが、どうなることか。今年、初めての畑を頑張ってみようと思う。

管理人さんにもらった畑(向こうに見える青いフェンスまでが領土)

 

サークルの顔合わせ合宿

文科三類2年 みーちゃん

私は議論系サークルで活動しているのですが、春になると、1年次の顔合わせ合宿を思い出します。
「大学のサークルってどんな感じなんだろう…?」「同期と仲良くなれるかな…?」という期待と不安でいっぱいになりながら顔合わせ合宿の日を迎えました。自己紹介を通じて場が温まってきたころに、驚くべきことがありました。 初対面の日に、日本の教育問題について白熱した議論が始まり、なぜそのような考えや価値観を持っているのか先輩方から繰り返し尋ねられたのです。そして翌朝5:00まで語り続け始発で帰宅しました。(私にとってはまさかのここで完徹デビューとなりました…笑。)なんか凄い所に来てしまったと正直気後れした 一方で、知的な刺激と相手の意見にしっかりと耳を傾ける優しさに溢れたメンバーの姿を見て、このコミュニティで成長したいと強く思いました。
あれから2年間、団体で活動し続け、いつしか上級生の立場になりました。今年の顔合わせ合宿も新入生にとって刺激溢れる場になるといいなと、今は先輩としての立場からドキドキわくわくしています。


2年前の顔合わせ合宿。懐かしい…!

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