「高校時代、独学で短歌を作り続ける。歌人として創作しながら古典和歌を研究したい」―2021推薦生インタビュー 文学部

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2021推薦生 渡邊さん

PROFILE

  • 氏名:   渡邊陽基さん
  • 出身校:  茨城県立土浦第一高等学校
  • 入学:   2021年 文科三類(文学部進学予定)

――大学では何を学びたいと思って、学校推薦型選抜に挑戦しましたか?
僕は短歌が好きで、短歌を作っていまして、大学では古典和歌について専門的に研究したいと考えています。新古今和歌集が好きで、藤原定家をはじめ、その時代の歌人たちの歌を研究して、自分の歌に活かしていきたいなと思っています。

――研究だけでなく、自分の歌に活かしたいのですね。
そうですね。どちらかというとアイデンティティーは創作のほうにあります。

――短歌の創作を始めたきっかけを教えてください。
百人一首は割と小さいときから好きで、よく意味もわからず覚えたりしていました。小学生ぐらいからだったと思います。自分で作り始めたのは、中学校の夏休みの宿題がきっかけでした。そこからはまっちゃったっていう感じです。高校時代もずっと作り続けていました。

――どのように作っていたのですか?
ずっと独学でやっています。自分でただ本を読んで、ひたすら作るっていう感じでしたね。高校の文芸部で学校の友達と話をすることはありましたけど、短歌を高校時代から専門でやっている人はまわりにはいませんでした。
でも、全国を見渡せば、短歌甲子園に出ているような短歌の強い高校もあります。文化部のインターハイともいえる総文祭(全国高等学校総合文化祭)にも2年生の時に出て、他県の短歌をやっている高校生と交流もしました。

――学校推薦型選抜に挑戦しようと思ったのはいつ頃ですか?
学校推薦型選抜を知ったのは高校2年生の秋か冬ぐらいです。高校2年生の秋に、短歌でひとつ賞をもらって、それをきっかけに高校の先生に東大には学校推薦型選抜もあるよという話を聞きました。僕は全然知らなかったので、何じゃそれはっていう段階から始まったんですけど、いろいろ調べるうちに、短歌で東大に行ったら面白いかもしれないと思うようになりました。

――出願のための提出書類はどのように準備しましたか?
提出論文は高校3年の夏休みぐらいから書いていました。論文を書くのは面白かったです。8千字くらいの論文で、高校の国語の先生につきっきりで見ていただき、友人からも意見をもらい、何度も直して、時間をかけて作りました。最終的に提出した論文は自分の短歌作品を技巧分析するという内容になりました。

――論文を書いたことで得た気づきはありましたか?
自分の高校3年間の創作を俯瞰して見ると、1年生の時の歌と3年生の時の歌では、今の自分から見てみたら、違う作り方をしていたり、違う考え方をしていたりすることがあるんです。こういう歌を1年生の時に作って、その後こういう本を読んで、こういうことを学んだから、3年生の時にはこういうふうに自分の歌が変化していった、というようなことを書きました。短歌創作という目に見えない微妙な感性的なところですけれど、自分の成長をしっかり再確認できたと思います。

――最初からそういう内容の論文にしようと思っていたのですか?
違います。最初は、現代短歌のここがよくないみたいな、すごく大上段に構えた論文を書いていたのですが、やっぱり自分にしか書けないものを書いたほうがいいかなと思いました。自分の作った歌を自分で分析する論文は、それはもう絶対に僕しか書けないので、すごくいい経験になったと思います。

――将来はどのように考えていますか?
古典文学研究の道に進みたいと思っています。研究職に就ければいいとは思っていますが、一方で、自分でも歌を作り続けていくと思います。
今、古典和歌の研究者で、かつ現代短歌を自分でも作っている人は、あまり多くないと思うんですよね。自分で歌を作っているからこそわかるものがあるんじゃないかなと思うんです。僕たちは現代語で歌を作っているわけですけど、昔の歌と通底するものはあるというか。だから実作者としての立場から古典和歌研究に貢献していけたら、それは素晴らしいなと思います。短歌を読むことと作ることは、本質的には一緒のことだと思うんです。どちらも「よむ」といいますので。

――東大に入学してみて、どんな授業が楽しみですか?
シラバスを見ていると、音楽論や映画論といった芸術の授業がいろいろあって、そういう授業があるのがとってもすごいなと思いました。絵も音楽も好きなので、いろいろな芸術に学問として触れられる授業が用意されていて、すごくうれしく思いました。もちろん、自分の関心のコアである国文学の授業はぜひ受けたいと思いますが、駒場での前期課程のうちは、理系の勉強もすごく好きなので、理系の学問にも触れたいです。

――授業以外でやりたいことはありますか?
東京大学Q短歌会という短歌会があるので、ぜひ参加したいと思っています。大学短歌会は今いろんな大学にあって、結構活動が盛んなんですよね。そこに参加して、同年代のいろんな人と一緒に歌を作れたら、それはとても楽しいなと思っています。

――最後に、高校生へのメッセージをお願いします。
自分でこれを追求していきたいというテーマが決まっている人にとっては、学校推薦型選抜はすごく面白い制度ですし、準備する過程が自分の問題意識、課題意識を再確認できるいい機会になると思うんです。結構大変ではありますが、ぜひ挑戦してほしいなと思います。

――ありがとうございました。これからも創作と研究をがんばってください!

取材/2021年4月
インタビュー・構成/「キミの東大」企画・編集チーム