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「外国語と芸術への興味から海外絵本の翻訳を志す。絵本が異文化への扉を開く可能性を考察」―2020推薦生インタビュー 文学部

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2020推薦生萩野さん

PROFILE

  • 氏名:   萩野聡子さん
  • 出身校:  埼玉県立春日部女子高等学校
  • 入学:   2020年 文科三類(文学部進学予定)

――東大の推薦入試にチャレンジしたきっかけを教えてください。
文系・理系の垣根が低い東大で学びたいという気持ちは高校入学時からあり、初めは一般入試を受験するつもりでした。そんな中で高校の先生が推薦入試のことを教えてくださって、初めは合格する可能性を少しでも増やそうということで受験を決めました。でも準備を進めていくうちに、推薦入試とは「自分のやりたいことを大学で本当にできるのか?」を問うことのできる制度なのかもしれないと思って、東大に関しては推薦入試だけに的をしぼって受験することにしました。

――推薦入試の準備はどのように進めましたか?
3年生の夏休みくらいから提出論文の具体的な内容について考え始めました。そこから担任の先生に何度も相談に乗っていただき、ある程度書き上がったところで他の先生方にも協力していただき、表現など細かいところを直していきました。
書き始めると自分の書きたいことは想像していたよりもたくさんあって、それをどんな角度からどのようにまとめたら良いのか悩みました。そこでアイデアを付箋に書き出し、関連性の高いものをグループにまとめるという作業を行う中で、自分の体験や考えがすべてどこかでつながっていることに気づくことができました。

――提出論文は何について書きましたか?
高校での3年間で深く関わってきた大好きな分野は、外国語と芸術でした。将来について考えたときに、この2分野への興味を活かすことができる仕事として海外絵本の翻訳が浮かびました。そのような関心をもっていたことから、推薦入試の提出論文では、絵本の持つ可能性について、幼い頃から見てきた絵本原画展の図録を参考に考察したことを論じました。

――考察の内容を具体的に教えてください。
読み手が直感的に好きになった質の良い芸術作品を、手元に残る形で手軽に入手できる、これが絵本の持つ一番の特徴だと私は考えています。そんな絵本のイラストレーションを国ごとに見てみると、使われている色や描写の方法にそれぞれ傾向があることがわかりました。例えばイランの絵本には、朱色・空色・らくだ色の3色がよく使われています。こんなふうに文化の一面を自然に知り、学ぶことができるのも絵本の一つの特徴です。好きになった絵本を通して今まで知らなかった文化を知り、その文化を持つ人々に親近感を持つことができたら素晴らしいことです。絵本翻訳をして日本で出会える海外の絵本を増やせば、こんなふうに異文化理解へのハードルは低くなっていくのではないか、といったことを論文に書きました。

――外国語と芸術に深く関わってきたとのことですが、2つの分野に関心をもったきっかけは何ですか?
外国語を深く学び始めたのは、洋楽が好きだったからかもしれません。中学校時代の家庭学習ノートには、英語の歌詞を訳したものを毎回書いて提出していました。そこから英語が何となく好きで得意になって、高校では外国語科で3年間学びました。英語ディベートをする部活に入っていたこともあって英語関係のコンテストにはたくさん挑戦しましたし、フランス語と韓国語も少しだけ勉強しました。これほど語学を好きになれたのは、何と言っても先生方がとても丁寧に教えてくださったからだと思います。
芸術に関しては、幼い頃からよく美術館に行っていたことがきっかけかと思います。ラファエロの絵が特に好きでしたね。書道も小学生の頃からずっと続けています。高校ではマンドリン・ギター部にも所属して、その演奏会のポスターや学校案内の表紙なども描かせていただいて、芸術の授業では書道を選択する…というように多分野にわたって、芸術と何らかの関わり方を続けていました。

――東大に入学して、授業は楽しいですか?
高校までの授業と比べてペース自体はやはり速いですね(笑)。たくさん受けている言語関係の授業は、初修のイタリア語・ヘブライ語の単語や文法を覚えるのが今は大変ですが、どちらも楽しいです。既修の英語でも、たくさん論文を読んで自分でも書いてみる授業や主に江戸時代・明治時代に日本を訪れた外国の方が書かれた作品を読むという授業にやりがいを感じています。生態学などの理系科目では、最先端の研究・調査についての話がとても刺激的です。
また、全学自由研究ゼミの「国連と文化」は、文化が世界に寄与する可能性について考える授業で、まさに私が入試のときに探求したいと書いたことを学べるとても素敵な授業です。幅広く学びつつ興味分野を深く学べるのは、やはり東大ならではだと思います。

――これから大学でやりたいこと、研究したいことを教えてください。
将来は、翻訳の仕事をしたいと思っているので、翻訳を学びたいです。具体的には、もともとシェイクスピアやシャーロット・ブロンテが好きなので、英文学を学びたいと思っています。でももっとマイナーな言語のほうが、邦訳されるべきなのにされていない素敵な作品がたくさんあるのかなとも思います。翻訳の基礎をまずは英文学で学んで、ゆくゆくはほかの言語にも応用していくということができたら嬉しいです。
そのほかにも言語間以外での「翻訳」、つまり文学作品を映画や絵など他のメディアで表すといったことにも興味をもっています。研究するとなると論じる角度がなかなか難しいトピックかもしれません(笑)。

――幼い頃から絵本に触れてきた萩野さんがお薦めする絵本はありますか?
お薦めの絵本は…、あまりにもたくさんあって悩んでしまいます(笑)。私が小さい頃に好きでよく読んでいたのは『かみながひめ』という絵本で、日本画家の秋野不矩さんが絵を描かれています。日本画という一見敷居の高そうなジャンルへの入り口になりうる本ではないでしょうか。最近の本だと刀根里衣さんの『ぴっぽのたび』とリオラ・グロスマンの『愛の羽』は本当に素敵で、感性を磨いてくれるような本ですね。後者は日本では未刊のイスラエルの絵本なので、いつか訳したいと思っています。

――最後に、推薦入学の先輩として、高校生たちにメッセージをお願いします。
自分のやりたいことが既に決まっている方にとって、前期課程で視野を広げつつも専門を学ぶことができる推薦生だけの制度はこの上ないチャンスになると思います。関係ないと思っていた科目が自分の興味分野とつながっていると気づくこともあるでしょう。「もし受かるのなら、大学は自分のやりたいことをさせてくれるということだろう」とポジティブに捉えて、ぜひチャレンジしてみてください。

――ありがとうございました。これからもチャレンジを続けてください。

取材/2020年5月
インタビュー・構成/「キミの東大」企画・編集チーム