「筋ジストロフィー患者の立場から、治療につながる研究と発信をしていきたい」―2024推薦生インタビュー 医学部

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PROFILE

  • 氏名:   渡部耕平さん
  • 出身校:  巣鴨高等学校(東京都)
  • 入学:   2024年 理科二類(医学部健康総合科学科進学予定)

――東大を志望された理由を聞かせてください。
私は生まれながらに、筋ジストロフィーの一つに分類されているウルリッヒ型先天性筋ジストロフィーに罹患していて、自分の病気を治したいという目標をもって医学部を志望していました。高校2年の冬学期の頃に、高校の進路指導の先生から、東大の医学部健康総合科学科を紹介されて、学科のことをいろいろ調べたときに、ここならば自分がやりたいこともできるし、自分に合っている学科だと思って志望しました。

――東大の医学部健康総合科学科のどういったところが自分に合うと思いましたか?
私は、自分の病気を治すことだけではなく、障がい者の立場だからできることを探していこうと考えていました。患者会の代表もしていますので、この立場を活かした活動をしたいと考えたときに、健康総合科学科の人類遺伝学で、自分の病気に関連することを学べますし、看護学は、看護する側が学ぶイメージがあったんですけれども、介護される側の視点で看護を学ぶことも興味深いなと思いました。その二つの理由が自分に合っているんじゃないかと感じています。

――患者会代表に至るまでを、聞かせていただけますか?
患者会は、どちらかというと患者会員さんよりも患者会の家族の方が積極的に運営している感じだったんですね。僕も中学生くらいまでは当事者意識は希薄だったので、あまり関わっていなかったんですけれども、高校入学前頃に、母が役員としてさまざまな活動を行っていたのを見ていて、当事者である患者自身の関わりが少ないことに違和感をもちました。そのことを母に相談し、「患者会にもっと関わってみたい」という気持ちを伝えたところ、ちょうど代表が変わるタイミングと重なり、まわりにも助けてもらいながら、高1で代表になりました。

――学校推薦型選抜に挑戦しようと思ったきっかけを教えてください。
高校の進路指導の先生が、私が患者会の活動を行っているということをご存知だったので、学校推薦型選抜で求められる学生像に合うと考えてくれて、紹介されたのがきっかけです。そのときに、初めて東大に学校推薦型選抜があることを知って、要項や「キミの東大」で先輩の記事を読んで、今までやってきた活動が活かせると思い、学校推薦型選抜を選びました。

――学校推薦型選抜の準備過程で、大変だったことはありますか?
準備を始めたのは高3になってからで、本腰を入れたのは夏休み頃だったかなと思いますが、やっぱり学業との両立が大変でしたね。国立の2次試験、共通テスト対策もありましたし、高3の5月に足を骨折したこともあって、限られた時間をいかに効率的に使うか悩みました。私の場合は一つ行動を起こすにもいろいろ助けが要りますから、勉強道具を用意してもらうのにも親に頼まなければいけないし、学校推薦型選抜の準備に重きを置きつつ、一般選抜の勉強時間を確保しなければならないという時間調整が大変でした。

――受験勉強では、どのようにモチベーションを保ちましたか?
私は目標がはっきりしていたので、高校では学べない、専門的なゲノム編集や先端の技術を学べることが一番のモチベーションでしたが、目の前の勉強に集中しているとつらくなる時がありますよね。そんな時は、このつらい時期を頑張って乗り越えたら、自分にはこういうことができるという未来が提示されるんだと、将来に向けてモチベーションを作っていくといいんじゃないかなと思います。

――入学後に、勉強以外でチャレンジしたいと思うことはありますか?
患者会の代表であるという立場を活かした活動をしたいと思います。患者会員には、難病を専門に治療している人から意見を聞きたいというニーズもあります。多角的な視点から話を聞くことは患者さんにもとても有意義なことです。患者会の活動や代表をやったからこそ、たとえば、治療の費用面やリスク面など、患者側の視点から気づく点もあります。東大では最先端の研究を行っていると思うので、いろいろ学んで、その先に患者会の活動と大学の活動をうまく合わせて、根治に向かって少しずつ進んでいけたらいいなと思っています。

――高校生や受験生にメッセージをお願いします。
受験期は人生の中でもそうないくらい大変な時期だと思いますが、それと同時に一番多くの可能性が提示される時でもあるはずです。その膨大な選択肢に迷ってしまうこともあるでしょう。しかし、その中で、自分で「これだ」と思えるようなものが見つかり、目標に向けて努力する経験はかけがえのないものです。私も、自分の難病根治に向けて活動していく中で、東大の学校推薦型選抜に出会いました。もちろん自分一人の力でなせた事ではありません。様々な人との縁があって、その結果今ここに立っています。
みなさんも、多様な知識を習得し見聞を広めていく中で、夢に向かって、後悔のないように過ごしてほしいと思います。その結果が何であれ、努力した過程は、必ずみなさんの人生を彩るものになる、私はそう信じています。

――渡部さんの活躍は、患者のみなさんにも励みになりますね。ありがとうございました。

取材/2024年4月
インタビュー・構成/「キミの東大」企画・編集チーム