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「平和をめざす国際法としての世界遺産条約の研究から、東大で幅広く法を学び、さらなる国際法理解につなげたい」―2024推薦生インタビュー 法学部

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PROFILE

  • 氏名:   山本登眞さん
  • 出身校:  京都市立西京高等学校(京都府)
  • 入学:   2024年 文科一類(法学部進学予定)

――東大の法学部を志望されたのはなぜですか?
高校1年のときに世界遺産アカデミー(WHA)で世界遺産条約について、講演をさせてもらいました。講演をするにあたって、世界遺産条約と関連文書の成り立ちや、どうしてそれができたのか、今後どうなっていくのかなどをまとめましたが、そのときに、東大法学部の名誉教授でもあった故大沼保昭先生の『国際法』という本を読んで、宇宙や海底、環境そして人権といった国際法の扱う対象の広がりとその潜在的な可能性に驚いた経緯があります。そのことがきっかけとなって露ウ戦争に顕現する現行制度の限界などを調べる中でさらに理解を深めたく、国際法分野の研究に伝統がある東京大学の法学部に進学したいと思いました。

――世界遺産に興味をもったきっかけを教えてください。
幼少の頃から引っ越しが多く、日本からフランスに引っ越した際、何冊かの図鑑を買ってもらいました。そのうちの一冊が『世界遺産大図鑑』で、美しい未知の世界を発見していく気持ちだったのですが、さらに印象に残る図鑑がありました。『地球環境館』という地球環境問題に触れていく図鑑で、飢餓に瀕するアンゴラの母子を撮影した写真を見たとき、大切な命が失われることへの危機感と自ら何もできない無力感が重なり合い、今でも忘れられない衝撃を覚えました。当時テレビで流れていたマリのトンブクトゥという遺跡が破壊される映像も印象に残り、世界遺産の理念のもとであるUNESCO憲章にある「心の中の平和の砦」という考えが問題解決への鍵だと感じました。この経験が、今の自分の研究にも繋がるきっかけを与えてくれたと思います。

――どのようにして、世界遺産の研究につながっていったのですか?
観光のイメージが強い世界遺産ですが、勉強していくうちに制度の基底には相互理解と知的協力に基づいた平和への実践的活動の側面が大きいことを知りました。二度の世界大戦を経て平和を希求し、開発や環境問題、文化財保護といった一国では解決できない問題を認識していく時代的文脈の中で生まれた世界遺産条約を研究することに非常にやりがいを感じています。 

――高校までに取り組んだ活動について、教えていただけますか?
高校1年時の世界遺産アカデミー(WHA)での講演に続き、高校3年の夏休みに、世界遺産条約に関する研究をまとめた論文を執筆して提出しました。中学生の頃から、文化財の修復や保存について、京都に住んでいる機会を利用して積極的に取材・リポートをさせていただいていました。また、世界遺産に関して、テレビやラジオ、書籍、そして講演会といったメディアを通して発信する機会を多くいただき、平和へのアプローチとしての世界遺産について、言葉を変えて伝え方を模索しました。この試行錯誤の経験は、東大の学校推薦型選抜の面接やグループディスカッションにも活かせたと思います。

――学校推薦型選抜に挑戦しようと決めたのはいつ頃でしょうか?
高校の入学式の直後に、僕の世界遺産関連の活動をご存知だった学年主任の先生から「経験を活かして学校推薦型選抜にチャレンジしないか」と声をかけられました。法学部への進学と推薦入試の利用は漠然と考えていたのですが、先生に勧められたことをきっかけに各大学の資料を一緒に検討して東大の学校推薦型選抜に挑戦することを決意しました。高校としても東大の学校推薦型選抜の経験はほとんどなかったのですが、先生方に応援していただき、そこから暗中模索で先生方と二人三脚で選抜対策を進めました。

――受験期間に大変だったことはありましたか?
限られた時間の中で、研究・活動の継続と勉学を両立することは大変でした。法学部(文科一類)志望なので文系の勉強をすることになるのですが、将来的に建築評価など理系の知識修得が必要な場面もあるだろうと考え、高校では理系を選択していました。そのため、高3の10月くらいまでは理系で学校推薦型選抜に必要な成績をとりながら一般入試を視野に入れた文系の勉強もしていて、その上で講演会や論文などといった受験勉強以外の活動もしていたので、かなり忙しかったですね。ただ、好きなことを心から楽しめた1年間だったと思います。

――大学でやってみたいことはありますか?
僕が研究したい国際法という分野では、議論される主語(アクター)は国家に留まらずNGOや多国籍企業なども含むようになり、議論される論点も新しい人権や科学技術など、多元化・多様化する地球社会を反映しています。地球社会に対する理解を深めるために、前期課程で人文科学、社会科学、自然科学と幅広く学んでいくことを非常に楽しみにしています。東大法学部という環境を利用して日本の実定法に関する理解も深めていきながら、4年次には美術保存や文化交流を学ぶためにローマ大学に留学したいと考えています。推薦生が利用できる早期履修を積極的に利用し、学習の設計にあたっては法学部のアドバイザー教員の先生方と面談する機会も大切にしたいです。

――将来はどのような仕事に就きたいですか?
今は研究を軸に据えたいという思いが強く、国際法の研究は博士課程まで続けるつもりです。その後の職業としては、国連本部やユネスコ、文化遺産に関する諮問機関であるICOMOS(国際記念物遺跡会議)などを検討していますが、入学して将来の選択肢が増えたことを感じる場面が多く、柔軟に考えていきたいです。

――東大をめざす高校生にメッセージをお願いします。
自分の研究・活動を、学業と並行し積極的に楽しんで続けることが最も大事だと考えます。学校推薦型選抜においては東大合格を目的にするよりも、やりたい事を進めアカデミックな世界を広げられる時間を大切にすることが肝心です。高校3年間、あるいは18年間の経験を投射した結果として東京大学の学校推薦型選抜を志願するという順番になることが、自らの研究と進学の双方にとってより良いあり方だと思います。日々の生活の中に溢れる刺激を取り込み、自らの研究・活動を目一杯楽しんでほしいです。

――ありがとうございました。充実した大学生活をお過ごしください!

取材/2024年4月
インタビュー・構成/「キミの東大」企画・編集チーム