令和5年度 東京大学総長賞受賞者の声(課外活動・社会活動編)

2024.04.10

学生表彰

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東京大学総長賞とは?

「本学の学生として、学業、課外活動、社会活動等において特に顕著な業績を挙げ、他の学生の範となり、本学の名誉を高めた者」(個人又は団体)に対して、東大の総長が直々に表彰を行う賞です。賞の授与は平成14年から始まり、年に1回、受賞者の表彰と活動(研究や課外活動、社会活動など)の内容に関するプレゼンテーションが行われています。令和5年度は10の学生・学生団体に対して総長賞が授与されました。
「キミの東大」では、受賞者の方々に活動/研究内容を教えてもらうとともに、高校生のみなさんへのメッセージもいただきました!
ぜひ、東京大学の学生の活動の幅の広さと学びの深さを体感してください。
今回は、課外活動・社会活動編をお届けいたします。

全国の新型コロナウイルス感染者数のデータベースを国に先駆けて作成

総長大賞
【受賞者名】仁宮 洸太さん(薬学系研究科博士4年、東京都出身)
【受賞テーマ】新型コロナウイルスクラスター対策班における自治体公開情報を用いたCOVID-19データベースの構築

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私は新型コロナウイルスの流行初期から約3年にわたり、ボランティアとして感染者の疫学情報のデータ構築などを行いました。​
​​具体的には、全国の自治体で公表している感染者の情報を一つ一つ自動で取得するプログラムを休みなく3年ほど作り、日本中の感染者の数や年代、性別などをまとめたデータを作成しました。 このデータは、初めて全国の感染者数をリアルタイムに解析可能にし、国による新型コロナウイルス向けの情報把握システムが完成した後も利用され続けました。このデータを元に毎日作成された流行曲線は内閣官房・厚生労働省・国立感染症研究所などへ共有され、日本の流行対策を策定する基礎資料として活用されました。​
​​また、今回の経験を今後のパンデミックなどへの教訓として論文にまとめて、公表しました。​

  • 私は今回、新型コロナウイルス対策(感染症)の活動を行いましたが、専門は薬学で、希少疾患の疫学やゲノムの研究をしています。大学に入るときは生物学が苦手でしたし、そもそも理科系の分野は、好きではあるものの得意科目ではありませんでした。ですから、入学してからは、哲学、法学、歴史学、経済学、情報学などいろいろなことを東大で自由に学びました。理科2類や薬学部の授業に限らず勉強したことが、結果として今回の活動へと繋がっていったのだと思っています。ぱっと見で関係ないことへ好奇心のままに挑戦し続けることは、理解してくれない人もいるかと思いますが、向いている人には楽しくて良い道なのかなと思います。
    私が高校の頃に受けていた「高校生と大学生のための金曜特別講座」はおすすめですし、今後も受講していきたいと思っています!広い広い学問の世界に向けて、頑張ってください!

高校生への研究指導で国際大会優勝に導く

【受賞者名】桑原 嵩佳さん(理学系研究科博士3年、東京都出身)
【受賞テーマ】高校生への研究指導活動における国際的に卓越した実績

修士1年から博士3年までの5年間、本学附属施設である東京大学教育学部附属中等教育学校にて、高校生の研究指導活動を行ってきました。大学院で自身の研究を行いつつ、10人を超える高校生と生物に関するそれぞれ独自の研究テーマを立案し、その研究を指導してきました。研究指導の成果は、国際大会での優勝を含め48件受賞するなど、国内外で高く評価されています。生徒一人一人が独自の研究テーマをもち、これら全ての指導を行うには多大な労力がかかりますが、この教育が、生徒が自ら主体的に研究を進める力をつけるのに重要であったと考えています。また、様々なテーマの指導を行うにあたり得た知識・経験が、指導者側の研究能力の向上にもつながったと考えており、学業分野でも理学系研究科研究奨励賞を受賞することができました。高校生と大学院生の双方が成長する教育システムが、今後普及することを期待しています。


生徒たちとの記念撮影

 

  • 東大は素晴らしい研究環境が整っています。しかし、実はそれだけではなく、高校生の研究指導のようなアウトリーチ活動においてもこの上ない環境です。自身の可能性を広げるべく、専門性を高めると共に、様々なことに挑戦してみてください!

地方女子の大学進学を支援する調査・提言・活動

【受賞者名】#YourChoiceProject
代表:川崎 莉音さん(法学部4年、兵庫県出身)、江森 百花さん(文学部4年、静岡県出身)
【受賞テーマ】地方女子の大学進学を取り巻く社会課題の解決に向けた取り組み

東京大学の女子比率が長年2割程度で留まっている、ということは知っているでしょうか?私たちは、この歪な風景を変えることを目指して活動しています。中でも特に注目するのが、地方の女子学生が進路選択のときに直面するジェンダーギャップです。
東京大学において、地方女子学生は1割を超えたことがありません。「女子がそんな勉強してどうするんだ」、「東大に行ったら結婚できない」、「東京は危ないから地元の大学に行きなさい」…。地方女子学生は、様々な圧力やバイアスを受けています。それを跳ね返せる人もいれば、無意識のうちに内在化して入学を目指すことすらしない人もいます。地方のジェンダーステレオタイプは、首都圏と比べて非常に根深いものです。
私たちは、この問題を根本から解決しようと、調査研究やそれをもとにした政策提言、そしてアウトリーチ活動を行っています。5月に公開した、全国4000人の高校生を対象にした進学意識に関する調査では、地方女子学生の自己評価の低さや安全志向、実家に近い大学に進学することを男子学生よりも強く期待される傾向などを炙り出しました。
この調査は今まで明らかにされていなかった課題を示すデータとして反響を呼び、本学でも多方面で活用していただきました。
政策提言活動では、地方女子学生を取り巻く制度上の不平等として県人寮の多くが男性専用になっていることを指摘し、政策提言コンテストで最優秀提言賞をいただきました。
アウトリーチ活動としては、地方の女子高校生を対象に、2年間の受験伴走型メンタリングコミュニティを運営しています。自己評価の低さの向上には、長期的に身近なロールモデルを提示することが有効だと考えるからです。
この3月に、私たちは特定非営利活動法人になりました。今回の受賞は、活動への評価であるとともに、期待でもあると思っています。この受賞をただ喜ぶだけで終わらせず、しっかりと活用し、この課題に取り組むパイオニアとして、これからも本質的で持続可能な活動を行ってまいります。

  • 世の中にはたくさんの未解決の課題があり、苦しんでいる人がいます。東京大学には、そのような様々な課題へのアプローチを考える場があり、同時にその課題を解決しようとする取り組みを全力で応援してくれる環境があります。今より少しでも良い明日を作りたい、という人がいたら、ぜひ東京大学の環境をフル活用してみてください。
    そしてもし、これを読んでいる地方女子高校生がいたら、ぜひ私たちのメンタリングコミュニティに参加してください!2年間、あなたが志望大学に合格するために全力でサポートします!

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構成/「キミの東大」企画・編集チーム