【開催レポート!】2024年度 第1回 学校推薦型選抜オンライン説明会―現役推薦生と交流しよう
学校推薦型選抜(推薦入試) 2024.09.03
2019.03.04
東京大学の推薦入試の狙いと魅力
東京大学推薦入試(※)の実像を探るべく、よくわかる東大推薦入試(1)に引き続き、東京大学高大接続研究開発センター入試企画部門の濱中淳子教授にお話を伺いました。東大推薦入試はどうしてこのような制度になっているのか、推薦入試募集要項の読み解き方、推薦入試合格者の入学後の特徴など、さまざまな疑問にお答えします。
(※現在、推薦入試は学校推薦型選抜に、また大学入試センター試験は大学入学共通テストへと名称変更)
――推薦入試の定員枠が100人程度というのは、前期日程試験の募集人数(2960人)と比べると少なく感じるのですが、理由があるのでしょうか。
後期日程試験の枠だった100人がそのまま適用されたため、100人という定員枠となっています。そしてこの100人の定員枠が、さらに学部の規模によって割り振られ、各学部の定員枠になります。下表のとおり、法学部・経済学部・文学部・農学部が10人程度、教育学部・教養学部・薬学部が5人程度、工学部は、規模が大きいので30人程度です。
法学部 | 10人程度 | |
経済学部 | 10人程度 | |
文学部 | 10人程度 | |
教育学部 | 5人程度 | |
教養学部 | 5人程度 | |
工学部 | 30人程度 | |
理学部 | 10人程度 | |
農学部 | 10人程度 | |
薬学部 | 5人程度 | |
医学部 | 5人程度 | * |
(* うち医学科3人程度,健康総合科学科2人程度)
――大学入試センター試験で「概ね8割(720点)以上の得点であることを目安とします(医学部医学科は780点程度)」とありますが、ハイレベルな学力を身につけた高校生を対象にしていることは、これまでと変わらないですね。
推薦入試の合格者は、早期専門教育という柱もありますが、入学後は前期日程試験(一般選抜)で入学した学生と同じクラスに所属し、同じように前期課程教育を受けていただくので、東大の授業についていけるだけの学力を備えていることが重要になってきます。センター試験で概ね8割以上としている理由は、入学後の授業のレベルを考慮してのことです。
ただ、東大入学者選抜の現状を踏まえると、センター試験で8割以上というのは、やや緩めの設定とも言えます。高校時代までに打ち込んだ活動や得意分野があり、総合的な学力もセンター試験8割以上の得点がとれるほどであれば、希望が広がる高校生も少なくないのではないかと思っています。
――推薦入試では、具体的にどんな試験が行われているのでしょうか。
「推薦入試は、いわゆる『学部入試』」という話と関連してくるのですが、各学部が期待する学生像を選抜するための方法をそれぞれ検討し、実施しているというのが現状になります。基本的に書類審査と面接はどの学部でも行っていますが、面接で聞かれることは学部によって違います。また、小論文を課す学部もあれば、グループディスカッションを課す学部もあります。
募集要項に詳しく書かれていますが、もし一言付け加えるのであれば、募集要項を確認するときは、ほとんどのみなさんは自分の関心がある学部のページしかみないのではないでしょうか。ぜひ、ほかの学部のところも読んでいただきたいと思います。というのは、ほかの学部がどのような要件(条件)や試験を課しているのか、そのうえで改めて自分の進みたいと思っている学部がどうなのかを比較することで、出願したい学部が何を求めているのか、よりクリアに見えてくるからです。
たとえば、工学部への出願を考えている方であっても、理学部、農学部、そして法学部、経済学部、教育学部といった、ほかの学部のページも参照してもらいたいですね。工学部が何を求めているのか、何を考えているのか、明確になる部分があると思います。
――たしかに、比べてみて初めてわかることって、多いような気がします。
学部によっては、かなりターゲットを絞った募集の仕方をしているところもあります。
その典型例が医学部医学科です。募集要項で医学科が提示する「求める学生像」には、「生命現象のしくみの解明、疾病の克服及び健康の増進に寄与する医学研究を推進するため、推薦入試枠を医学研究者養成枠と位置づけ、最先端の医学・生命科研究を担う国際的研究者を育成するために活用します」とあります。
実際、医学部医学科に推薦入試で入った学生は、研究者養成のための特別カリキュラムに参加しながら学ぶという体制がとられていて、一般的にイメージされている「医学部進学」とは違うものなんですよね。
推薦入試をめぐる情報をこれからどのように提示していくのかは、本学も探っていきたいところですが、まずは、募集要項をとことん活用し、読み込んで、検討してもらえたらと思います。
――ところで、定員枠100人ですが、毎年定員に達していないのはなぜでしょうか。
本学入試担当の福田理事が記者会見で答えたことでもありますが、私はまだ推薦入試に関する情報が十分に高校側、高校生・受験生側に伝わっていないということが大きな理由のひとつだと考えています。
「募集要項」を活用し、東大ならびに各学部が推薦入試で目指しているものを理解してほしいとお伝えしましたが、東大自体もメッセージを積極的に伝えていく必要があると思っています。
――推薦生たちの生の声も貴重な情報になると思うので、推薦で入学した学生さんにどのような方がいるのか、少し紹介いただけませんか。
そうですね。ちょっと目立った方々だと、たとえば、高校時代に多言語を研究し、すでに40言語ぐらい学んだという学生やトイレ研究に没頭した学生、小学生の頃に自宅にビオトープを作った学生がいます。推薦生同士でもネットワークができていて、さまざまな領域で飛び跳ねている人たちが互いに交流することで、さらに成長していくという状況が生まれ始めていますね。
こうした推薦生たちの特徴を知るために、東京大学高大接続研究開発センターでは、追跡調査部門の宇佐美准教授を中心にアンケート調査を用いた分析を行いました。データからは、推薦生たちが、前期日程入試で入った学生たちと比べて、学びに貪欲で、きわめて活発で社会的な意識が高く、高校などでもリーダー的な役割をしている人が多いといった特徴がクリアに抽出されています。
また、「キミ東大」でも、推薦生インタビューを行っていますので、先輩たちの声を参考にご覧いただければと思います。
――東大では、推薦入試を導入してから、その成果をどうみているのですか?
まとまった評価は、一期生が学部を卒業した5年目ぐらいにやるべきではないかと考えています。評価はまさにこれからであって、今は推薦生たちにいかに豊かな学びを提供するか、推薦入試という制度をいかに強く、意義あるものにしていくのかといったほうが大きな課題だと理解しています。
ただ、これはあくまで私個人の意見ですけれども、推薦生と話していると「本当に個性豊かで、多様な学生がきてくれたな」と感じています。推薦生たちから気づきを得ている教員も少なくないのではないでしょうか。
学生同士だけでなく、学生と教員、職員、つまり東大の構成員全体が、推薦入試と推薦生から刺激を受けながら強くなって、ひいては、その姿が日本の高等教育を模索するための手掛かりになればいいなと思っています。もう少し先の話ですけれどね。でも、真剣にそう思います。
――今後、学校推薦型選抜を受けるには何から始めればいいのか、教えてください。
まずは、7月中に募集要項が本学ウェブサイトで公表されますので、それをご確認ください。そして、10月中旬にインターネット出願登録、11月上旬に出願受付、12月上旬に第1次選考(書類選考)結果発表があって、12月中旬に面接等が行われます。その結果と翌年1月に行われる大学入試センター試験の結果を総合的に評価して、2月上旬に最終合格者が発表されます。
ただ、7月の募集要項公表を待つ以前に「関心をもって取り組んできたことで、自分という人間を説明する」、その準備を進めることが大事だと言えます。学校長の推薦が必要になりますから、学校の先生方に相談してみることも重要です。
推薦入試に興味をもった意欲ある高校生は、本学の推薦入試をぜひ活用してください。東京大学は、日本全国からの挑戦を歓迎します!