東大卒業生インタビュー・外交官―日本と日本国民のために、国を代表して働ける。それが外交官という仕事

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東大卒業生のいま 長野俊介さん

東大卒業生インタビュー

東大生の卒業後のいろいろな進路をお伝えするインタビュー。今回は、外交官として活躍する長野俊介さんにお話を伺いました。「外交官って何をする人?」という率直な質問から、外交官の仕事の責任とスケールの大きさが見えてきました。

PROFILE

長野俊介さん

出身高校:   東京都立八王子東高校
学部・大学院: 法学部第二類公法コース(現・第一類法学総合コース)
卒業後の進路: 外務省北米局北米第一課課長補佐(米国・カナダ担当)

日米外交の焦点を定め、首脳の発言内容を考えるのが日々の仕事

――外交官は多くの人の憧れの職業だと思うのですが、実際に「外交」とはどのような仕事なのでしょうか。
外務省の仕事とは、「日本と日本国民の利益(国益)をいかに追求するか」ということです。どのように追求するかを考えたときに、日本独力でできることもあれば、できないことももちろんあります。例えば、日本はODAなどの途上国支援は得意ですが、自衛隊を海外に展開することに関しては制限があります。独力ではできないことがある中で、どの国と協力することが日本にとって1番効率的で有益かを考えます。

――長野さんは米国・カナダと日本の関係を担当されているということですね。
はい。私が所属するのは「北米局北米第一課」といって、アメリカとカナダの2カ国と日本の関係を担当する部署です。北米局のミッションを一言で言えば、「アメリカやカナダとの関係をいかに発展させ、国益を追求するか」ですね。「北米局」の中には、「北米第一課」、「北米第二課」、「日米安全保障条約課」、「日米地位協定室」の4つの課室があります。このうち「日米安全保障条約課」、「日米地位協定室」は、日米間の安全保障関係を中心的に扱うところです。在日米軍と自衛隊の協力を含め、どのように日本と米国で日本やこの地域の安全保障を確保していくべきかを検討します。次の「北米第二課」では日米間の貿易や投資など、日米の経済関係を担当します。

そして、私の所属する「北米第一課」は日米関係の総合調整、つまり取りまとめ的な役割を担っています。日米関係全体を見渡せば、経済、安保、政治や文化の分野でそれぞれやり取りがあります。その全体を把握した上で、どの課題が今一番ホットで、それについて、首脳会談や外相会談等で相手国に何を伝えるべきかといった点を、国益を踏まえて総合的に検討し、関係者と調整しながら意思決定を進めていくことが「北米第一課」の仕事ですね。

東大卒業生のいま 長野俊介さん
日米両国旗と長野さん。
日米関係を総合的に調整する長野さんの仕事を象徴する1枚

――北米局の中でそのような役割分担があるのですね。「北米局」と言っても、ほとんどは日米関係を扱っているということが意外でした。
アメリカとの同盟関係は、日本の安全を守るという意味では最も基本的な政策だと思っています。また、経済的にも軍事的にも世界最大で、国際社会への影響力も大きい国と同盟関係にあるわけだから、その関係も活用して日本のアジェンダ(政策課題)を効果的に実現したい。それをどのようにやっていくかというのは「北米第一課」としてまず考えるべきことです。

――よくわかりました。では、外務省の官僚の方は具体的にどのような仕事をされているのでしょうか。
北米第一課の主な仕事は首脳会談や外相会談の調整や発言要領の作成です。首脳会談や外相会談で総理や大臣から米側に何を話していただくべきか、日本の事情や米国の置かれた状況も踏まえて、分単位の限られた時間で最も効果的な言葉は何か、どのような順番で発言していただくかといったことを、様々な情報を基に、想像力を働かせて考え、議論し、形にしていきます。扱う内容は日々変わります。日米関係の何が今ホットかは、例えば2週間前と今とでは随分変わっているんです。

東大から外交官へ。多くの同窓生とともに国を背負う

――官僚になりたくて東大の法学部を目指す学生は多いと思うのですが、長野さんもそのお一人だったのでしょうか。
「日本のために働きたい」、特に「平和な日本を守りたい」という気持ちはありましたね。振り返ってみれば、国のために働くなら国家公務員になることが最も直接的だと考え、「国家公務員になるには東大が近道だろう」と逆算して進路を決めたところもあったと思います。

――東大での学生生活で印象に残っていることはありますか。
大学時代は応援部のリーダーとして、学ランを着て、運動部の応援に声を張り上げていました。人間関係どっぷりという感じでしたよ(笑)。大学1年生の頃は、大学では勉強を中心に生活したいと思っていたので、応援部なら楽かなと思って選びました。入ってみたら逆だったのですが(笑)。東京六大学野球など、様々な運動部の応援に行きました。大変でしたが充実していましたよ。

――アクティブに活動されていたんですね。そういった東大での学生生活と、今の生活のつながりを感じることはありますか。
東大出身であること自体はあまり意識しない気がします。私の場合、相手が東大の運動部の出身だと分かると、何となくですけれども、共感できるという感覚はありますね。

東大卒業生のいま 長野俊介さん
外務大臣(撮影当時)の署名に立ち会う長野さん。「国を代表する仕事」をしていることが伝わってくる

――最後に、外交官のお仕事に対するやりがいを教えてください。
自分たちの行う仕事に対する世間の関心が高いことはやりがいの1つですね。もちろん、報じられること自体が目的ではないのですが、トップニュースに取り上げられるなどして注目を浴びることは、それだけ自分が社会にインパクトを与える仕事をしているということだと思うので。また、自分たちが作成した原稿が総理や外務大臣の発言に反映されるということも大きなやりがいです。

たしかに国家公務員は、朝も早く夜も遅かったり、特に外務省員は出張も多かったりして、体力を使う仕事です。ですが、仕事の中で私たちが書く文章の主語は「我が国」です。国を代表して働いているという仕事のスケール。仕事のモチベーションは、これに尽きますね。

――国を代表して働く醍醐味が伝わってきました!ありがとうございました。

取材/2019年3月
インタビュー・構成/学生ライター・足立愛音