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【インタビュー】東大工学部の新動画コンテンツ「CREATE (狂ATE) THE FUTURE」 立ち上げの狙いとは?

2021.08.17

お知らせ

#工学部の人 #工学部の人

【インタビュー】東大工学部の新動画コンテンツ「CREATE (狂ATE) THE FUTURE」 立ち上げの狙いをきく

東京大学の工学部・工学系研究科学術戦略室・広報室では、中高生向けのアウトリーチ活動(広報活動)の一環として、研究などで活躍している元気な学生を紹介する動画コンテンツ、“CREATE (狂ATE) THE FUTURE”を開始しました。学生のリアルな活動を分かりやすく編集し、工学部YouTubeチャンネルで動画を公開していくプロジェクトです。キーコンセプトは“狂おしいほどの衝動で未来を創る”。今回、プロジェクトに携わった脇原徹教授と吉森特任専門職員にインタビューし、企画の経緯とその狙いについてお話を聞きました。

中高生に「工学」の魅力を伝えたい

脇原徹教授
“CREATE (狂ATE) THE FUTURE”についてインタビューに応じる脇原徹 教授(東京大学大学院工学系研究科)

―そもそも、こうした試みは東大の中でも珍しいと思うのですが、きっかけは何だったのでしょうか。

脇原  それでは、さっそく語らせていただきます(笑)。工学部・工学系研究科には「総合研究機構」という組織がありまして、私はそこで教授をやっています。私のミッションはもちろん研究活動が中心なんですが、これに加えて研究科の産学連携や社会連携といったプロジェクトのお手伝いをする、そういうミッションもあります。この機構へ去年の4月に着任しまして、私の研究室のスタッフである吉森さんとも相談しながら、一から新しい企画を練り始めました。

実際に何をやったらいいか、ということを議論していくと、私たちはまだ「工学」っていうものをちゃんと発信できてないよね、新しいアウトリーチ活動が必要だよね、という方向に話が進みました。別にそんなことやらなくても良いんじゃないの、と言われることもあります。もう東京大学は十分有名だし、日本でトップだから受験生も集まるし、すでに優秀な学生を集められる構造になってるじゃないか、と。

でも、私は、それは全然違うなと思っていて。例えば、どう考えてもまだ女子学生の比率は少ないですよね。東大全体でみてもそうですし、工学系としてみてもそう。やはり進学先としての「東大」や「工学」の魅力っていうのがちゃんと伝わっていない面があるんです。

その意味で、東大に入った学生が実際に頑張っている姿を見てもらう機会が、少ないんだっていうところに思いが至ったわけです。特に中高生にとっては、大学生っていうのは、ほんの数年先の自分たちの姿ですよね。大学生が夢中になって手を動かして、研究に打ち込んでいる様子に、自分の未来を重ね合わせてもらったら、きっとすごく刺激になるでしょう。

実際に中高生の声を集めてみると、「東京大学」とか「理系」くらいだとイメージが湧いても、「工学部」についてはなかなか理解されていない。「理学部」とは具体的に何が違うんだろう、とか。私も工学部の出身ですが、思い起こせば自分が受験生だった頃も、確かにそこまで調べてないですよ。もう目先の勉強で精一杯でね。

だから、まだまだこちらからのアピールが足りないし、工学の魅力というものが十分伝わってないというのは、間違いない。それで、工学系の学生たちに焦点をあてた企画を作ろう、ということになったんです。


動画紹介:狂ATORS file NO.7 岡村梢さん(化学システム工学専攻)
高校時代の「あんかけ」の研究が、大学で製薬プロセスの研究へとつながった。

―中学生や高校生の目線に立ったから、学生にフォーカスする企画になったんですね。

吉森  私自身も受験を控えた子どもがいるんですけど、そもそも大学ってどういうことをやるのかっていうところが、高校生の彼らにとってはあまりにも漠然としていると思っていて。実際のところ高校までの勉強と大学からの勉強でかなり差がありますし、そういう「高校生」と「大学生」のギャップを具体的に埋められる情報発信ができないかな、と考えていました。

大学に入ったその後の進路がどういう風になるのかっていうのは、中高生にとっては想像しづらいと思うんです。それなら、ロールモデルになるような方を何人か紹介して、例えばこんな選択肢も、あんな選択肢もあるよ、という指針が発信できたらいいな、と。

以前に高校の先生から話をうかがったとき「大人が何かに熱中している姿に、子どもたちは刺激を受ける」っていう言葉があったんです。大人に対する憧れって最近の中高生にはあまりない感じがして。なぜかというと、大人自身があまり元気がないので、こういう大人になりたいなっていうロールモデルがなかなか身近に存在しなかったりする。

それなら、学生や若い研究者が一生懸命に取り組む姿、彼らの本気度をみせるような企画を作っていくのがいいんじゃないか、と。工学系で活躍している、良い意味で、とんがった方々、分野を問わず何かひとつのことに集中している方々を紹介していこうという話になったんです。

前に向かう衝動が未来を切り拓く

―「狂おしいほどの衝動」というキーコンセプトはとても印象的ですね。

脇原  このプロジェクトを進めるなかで、私もいろんな学生と話をしました。そもそも、学生たちがなんでこんなに頑張れるのかって考えると、自発的にやっているからなんですね。自分が面白いと感じるからこそ、ターゲットに向かって一心不乱に頑張る。じゃあ、そういう「のめり込んでる姿」をうまく捉えたキーワードは何だろう、ってみんなで散々ディスカッションしたんです。工学部では「Ttime!」という広報誌を出しているんですけど、その編集をしている学生さんたちにも議論に入ってもらいました。

キーコンセプトを考えていくなかで「狂おしいほどの衝動」というフレーズが生まれたんです。まあ、「狂おしい」という刺激的な表現を使うのは、けっこうドキドキしたんですけどね。やっぱり学生たちの持つ、これをやりたい!っていう衝動が、世界をガンガン切り拓いて、成果につながって、貢献していくんだって。それをどうにか伝えたいという思いを込めています。


動画紹介:狂ATORS file NO.5 鈴木天馬さん(東京大学工学部丁友会RoboTech)
東大のロボコンサークルRoboTechを部長として束ね、国際大会で1位に輝いた。

―発信方法として動画を選んだのは、どういった理由があるのでしょうか。

吉森  たとえば本屋さんに行けば、大学受験案内もたくさん置いてありますけど、今の子どもたちを見ると、なかなか本や雑誌では情報を集めないんですよね。YouTubeやTwitterとかウェブでほぼ情報を得ているので。じゃあ彼らにうまく情報を届けるために、やはり動画のコンテンツじゃないかということで、脇原先生と、動画を使って発信できないかな、っていう話になったんです。

中高生の皆さんに、こういう大学生になってみたいとか、大人もけっこう楽しそうだな、って感じてもらいたい。でも、どうしてもテキストだけだと熱量を伝えるのがむずかしいですよね。あんなに熱のこもった話し方は、動画じゃないと伝わらないと思うんです。初めはライブ配信の企画も考えたりしたんですけど、コロナ禍で難しさもあって、まずは気軽に見られる短い動画でやりましょう、ということになりました。5、6分の動画をどんどん作って、工学部の各学科を網羅するように取り上げていこうと。

脇原  例えば、動画の長さをどれくらいにするかって結構大変だと思うんです。30分ものとかだと長すぎて見てくれないし、1分だと伝わりきらない。結果として、いま5分くらいのものになっている。内容としても、単にインタビューするだけだと、たぶん誰も見てくれない。それだと「伝える」という本当の目的が達成できないので、しっかり作り込んだものを作ろうと。とんがった学生にフォーカスを当てて、学生がまさに世界を切り拓いているその姿、その魅力が届くような内容にしようと心掛けています。

とにかく学生の姿をみてほしい

―今後、“CREATE (狂ATE) THE FUTURE”はどのように展開していきますか。

脇原  本当は、このコロナ禍がなければ、高校生と直接対話とか、そういう企画もやりたいと話しているんです。今のところは、とにかく動画の数をふやしていきたいと思っています。データベースのように整備して、それこそ検索すれば自分に合ったロールモデルになる学生が見つけられるくらいのボリュームにしたいんです。

すでに結構反響もあってポジティブなコメントもいただいてるんですけど、もっとたくさんの人に見てもらいたいですね。トータルの再生回数でいうと、もう1桁とか、上にもっていきたいなと。別にYouTuberになるつもりじゃないですけども(笑)。だんだんと注目されていけば、私たちとしても、よりたくさんリソースが割けるので、そういう良いスパイラルにしていきたいと思います。


動画紹介:狂ATORS file NO.1 石田美月さん(システム創成学専攻)
それまで全く知らなかった金鉱山研究と出会い、人生が変わった。

―最後に、東大に関心のある中高生・受験生へのメッセージをお願いします!

脇原  とにかく“CREATE (狂ATE) THE FUTURE”を通して、実際の学生さんの姿を見てほしいですね。大学生や大学院生ってこんなに夢中になって、好きなことやっているんだ、というのがこのコンテンツを通して伝わると思います。やっぱり誰だっていい夢を持つと、無限のパワーが湧いてくるじゃないですか。これが大切だと思うんですよね。あれだけの熱意を持って頑張っている学生たちが普通にいる、そして東京大学にはそれを可能にする環境があるっていうことを知ってもらいたいです。

「これがやりたいから、工学部の何々学科に行きます」なんて、中高生の時点で決めるのは結構難しいと思うんです。たとえば宇宙に興味があるとか、それくらいでも充分だし、もっと手前で、まだ何やりたいかわからないけれども、とりあえず自分は理系かなあ、くらいの人にも是非見てもらいたいんです。

実際にこんな学生たちがいるんだっていうのをまず見てもらって、結果として「あ、工学って面白そう」ってなったら、ぜひ工学部を目指していただければ、と思います。もちろん女性も含めてですね。いま「リケジョ」なんて言い方もありますけど、動画で紹介している通り、工学部には色々なフィールドで活躍している女子学生が増えています。固定概念を取り払って、ぜひ見ていただきたいなと思います。

【ウェブサイトURL】
https://park.itc.u-tokyo.ac.jp/createthefuture/

CREATE (狂ATE) THE FUTUREは、東京大学工学部・大学院工学系研究科が中学・高校生向けアウトリーチ活動の一環として、2021年5月に立ち上げた動画コンテンツです。動画はYouTubeで公開されているほか、東大TVからもご覧になれます。
取材日 2021.08.06
取材・構成/「キミの東大」企画・編集チーム