新型コロナウイルス禍――今、東大生は考える(6)

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コロナ6top

異例の大学生活に直面した東大生のショートエッセイ 第6回

2020年、新型コロナウイルス感染症の流行を受け、東大の授業はオンライン授業が中心になり、学生の交流や課外活動にも大きな影響が生じています。様変わりした大学生活を送る中で感じたこと、考えたことを綴ってもらいました。

文学部生ですが…

 コロナ禍に終止符を打とうと日夜奮闘する科学者の姿を見て、不遜ながら私も真似してみたくなった。オンライン授業の長所は、思い立ったらすぐお試し聴講できることだ。この機会を利用しない手はない。薬学部や教養学部でめぼしい授業を見つけ、COVID-19の病因と対策を文系学生なりに必死に理解するつもりだった。
 大方の読者の予想通り、それはどだい無理な話だ。難しすぎる。
 私の専攻は言語学および文献学。先人が遺した文字資料と只管向き合う学問だ。向き合う対象は『ラメセス朝の手紙』や『ブリクリュの饗宴』であり、眼前で咽び苦しむ患者ではない。正直、コロナ禍の解決に貢献する分野だと言うことはほぼできない。否、貢献する必要もないのかもしれない。それでも、例えば〇〇できないだろうか。あるいは…。
 そんなことを取り留めもなく考えていると、いつの間にか長い長い夜が明けていた。いつの間にか、コロナ禍も終わっていたらいいのに。

コロナ6_J.K.
海外の書店で蒐集した文献学お役立ちセット。しばらくコロナ禍で海外に行けそうもないが…。
文学部 3年 J.K.

 

オンライン化の是非

 講義を始め,サークル,ゼミなどが全てオンラインとなって久しい。オンラインの大きなメリットは場所を選ばないということである。今学期のゼミは普段ならキャンパスに来られないOBOGにも参加してもらうことができた。また,先日開催された五月祭や駒場祭ではYouTube Liveで企画を公開したが,例年は来られない親も企画を見ることができた。一方でメリットだけではない。オンライン化によって移動の必要がなくなり,時間の制限が大きく緩和された。それはメリットである一方,オフラインであれば教室移動などのちょっとした運動が頭のリセットになっていたが,それがなくなり,ずっと座っていると息が詰まる。また,夜もミーティングが立て続けに入る。入れることができてしまうのである。一晩にミーティングが3つ4つ入ることも珍しくない。そうなれば最後の方はほとんど頭が回らず,効率は低下する。その辺りの調整をどうするかに頭を悩ませている。

農学部 3年 KK

 

刺激的な一年

 もうすぐ2020年も終わってしまう。夏以降はキャンパスでのサークル活動が再開したが、実家が東大から遠いと言う理由で未だ参加できていない。最後にキャンパスに足を踏み入れたのは3月。多くの友人ともう半年以上会っていない。
 活動が制限されて良かったこともある。既存のコミュニティに参加しづらいからこそ、かえって新しいコミュニティを作ることに積極的になることができた。私は今年から新たに2つのサークルに加入し、東大の公式団体であるピアサポートルームにも所属した。新たに身につけたスキルや体験があり、多くの知人もできた。安心できる居場所が増え、自分の世界が大きく広がったように感じる。
 前期課程2年は大学4年間のうちで一番のんびりとした時期だと思っていたが、私にとっては挑戦的かつ刺激的なものになった。次にキャンパスに行くのがいつになるのかは分からないけれども、気楽にこの状況を楽しんでいたいと思う。

コロナ6_お茶好き
今年から紅茶同好会に入会したので、紅茶をよく飲むようになった。
文科三類 2年 お茶好き

 

運動不足…かも?

 8月。久しぶりに、出身高校に行きました。実に、3月にかろうじて行われた卒業式以来。電車に乗って、駅から歩いて…そうして家に帰って来てから、気づいたのです。
 「脚が痛い」
 半年くらい前には毎日歩いていた距離を歩いただけで、筋肉痛になるなんて。これって、もしや運動不足…?
 スマホの歩数計をチェックしてみたら、案の定。高校まで行った日は8000歩以上歩いているのに対して、ずっと家にいた日はなんと500歩以下のこともしばしば。これは正真正銘の運動不足、何とかしなくては…
 そう思ってからもう3か月が経ちますが、その後もこれといった運動習慣はつかず。何度か遠出をすれば、毎回同じことの繰り返し。まったく、私はいつになったら運動を始めるのでしょうか。自分に呆れかえる毎日です。

文科三類 1年 Sophie

 

徒然なるコロナ禍

 コロナで自宅学習が続いています。春は、全ての授業がオンラインで、外に出かけることがほとんどありませんでした。
 そこで、私は自宅周辺の散歩を始めました。私の家は、関東の片田舎にあるので、基本歩いても何も起こらず、ただ住宅街と田畑があるのみです。そこここをうろうろするうちに、「この道はここに繋がっていたのか!」みたいな発見をすることができ、小学校時代から住んでいた地元の細かな地理に、思っていたより疎かったことに気づかされました。
 ここ最近では、セミからこおろぎに泣き声が変化して、雑草の鬱蒼とした空気から金木犀の良い香りを乗せた空気に日に日に変わっていっていることに気づきます。毎日満員電車に揺られ、大学と家を往復していたら、気づけなかったことだろうと思うので、人間が古くから大事にしてきた何かを思い出した気がします。徒然なる日々を穏やかに過ごしたいものです。

コロナ6_K.A.
夕暮れの秋空は美しいです
理科一類 1年 K.A.

 

withコロナでどう過ごすのか

 憧れの大学生活が始まってもパソコンに向かい、家に閉じこもるばかりだった夏学期。今振り返れば、コロナだから…と目標を見つけて努力しようとする心持ちも失い、受け身な自分になっていました。
 それを変える契機は、テニスでした。夏休みを迎え、所属しているテニスサークルでは人数制限と感染対策を徹底して、徐々に活動が始まりました。コロナを言い訳にせず、コロナとどう共に過ごしていくのか、状況に合わせて考え続けることが大切だと痛感しました。何かのせいにせず改善方法を模索することは、テニスでの上達だけでなく、明確な答えのない問いを探究していく大学での学びの深化に結びつくはずです。
 何か上手くいかないことがあった時、理由を見つけて諦めるのではなく、どう改善して解決するのかと思考する大切さ。この気づきを胸に、withコロナ生活でも、主体的に目的を見据えた目標を立てて頑張りたいと思います。

コロナ6_maccha
受け身からの打破を決意したきっかけ
理科二類 1年 maccha

 

参考リンク
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原稿作成/2020年11月
企画・構成/「キミの東大」企画・編集チーム