新型コロナウイルス禍――今、東大生は考える(4)

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異例の大学生活に直面した東大生のショートエッセイ 第4回

2020年、新型コロナウイルス感染症の流行を受け、東大の授業はオンライン授業が中心になり、学生の交流や課外活動にも大きな影響が生じています。様変わりした大学生活を送る中で感じたこと、考えたことを綴ってもらいました。

コロナ禍で気づいたこと

東大合格から間もなくして入学式の中止、新歓イベントの中止、授業の全面オンライン化が発表された。そうした知らせを聞いて僕は「友達ができないのは残念だが、むしろ勉強に集中できてラッキーだな。今学期はたくさん本を読もう。」と思った。しかし、いざその生活が始まると思い描いていたようにはならなかった。朝から晩まで一人パソコンの画面と向き合う日々。一人深い井戸穴に突き落とされその中で暮らしているようだった。日を重ねるにつれて勉強にも集中できなくなり、昼間は授業画面を見つめ夜は与えられた課題をこなすだけの惰性的な生活になっていった。ひとは一人では生きていけないことにようやく気がついた。秋になって対面授業が始まった。授業後近くに座っていた子と話し、昼休みに一緒に食堂に行った。たいした会話はしていないが、人とつながっている感覚がなんだか心地良かった。

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週1回通う駒場1号館
文科二類 1年 梅太郎

 

夢見ていた大学生活

コロナで社会が一気に変わった今年、東京大学理科二類に入学しましたF.Rです。今回は今年の新入生の生活について話していこうと思います。
楽しみにしていた入学式や、オリ合宿もなくなり、クラスメイトと会うこともないままに前期が終わってしまいました。前期、大学に行ったのは手続きのときの二回ほどです。授業もテストも全てオンラインで行われました。クラスによって毎晩のようにクラスzoomが開かれる仲の良いところもあったようですが、私のクラスにはそれもなく、ほんとうに情報が入ってこないし一人で勉強しないといけないし大変でした。
今年から華の大学生だと思っていたのに当たり前のことが当たり前でないのに気づいた半年でした。東京に出てきて色んな人と会うのを楽しみにしていたのでそれが一番痛いです。今までも友達から学ぶことや受ける影響は大きかったし東大では色んな経験をした人達と会えると思っていたからです。
今後の状況改善に期待しつつ、チャンスは逃さないように大学生活楽しみたいです。

理科二類 1年 F.R

 

気づかされたこと

思い描いていたものとは程遠い大学生活。現実は、クラスのメンバーの名前も顔もよくわからないまま実家でオンライン授業が続き、サークル活動もない。正直私はとても落ち込んでいた。
しかし、そのような状況でできないことがたくさんあった代わりに自分自身に向き合い、一人でいろいろと考える時間が増えた。中高の頃は勉強と部活で忙しく、自分に向き合っている時間があまりなかった私にとってその時間はとても貴重なものとなった。落ち込んでいた気持ちも軽くなり、前へ進めるようになった。
これから忙しくなることもあるだろうが、今回の経験を踏まえて考える時間というものも大切にしていきたいと思う。

理科二類 1年 N.O

社会に参加する

大学に入学してから、ただただオンライン授業を受ける日々が続いていた中、「何かしよう」と思い立ち、ボランティアを探し始めた。かねてから関心のあった「食」に関する活動を行っている団体を見つけ、7月から2つのボランティアに行かせていただいている。どちらもやりがいがあり、毎回楽しく参加しているが、共通して感じることがある。それは「ボランティアの数が多い」ということである。シフトに入りたくても既に埋まっている、ということも度々ある。環境問題などの社会問題に対して行動を起こす人が増えていると聞いてはいたが、想像以上に行動に移している人が多いという印象を受けた。コロナ禍によって社会との関係を見つめ直す時間ができたことで、行動を起こすハードルが下がったように思う。私自身、実際にボランティアに参加することで様々な人と出会うことができたので、考えて行動することをこれからも大切にしていきたい。

理科⼆類 1年 S.D.

 

「オンライン研究室」はどこまで実現可能か?〜この春から研究を始めた4年生の心境〜

私の所属する研究室では、この春からミーティングや勉強会がオンラインとなりました。さらに研究発表の指導もオンラインとなり、「実験の日以外は研究室に行く必要がなくなるのか?!」と思う今日この頃です。
オンライン化で一番良かったことは、地理的な制限がなくなったことです。上手に研究の予定を立てれば4~5日は大学に行く必要がなくなるので、長期休暇の時期以外でもちょっとした遠出が可能になります。(状況が落ち着いたら旅行とかも行きたい!)
ただし、このオンライン化は良いことばかりではありませんでした。例えば誰かに質問したくても、チャットで質問をして返答を待たなければなりません。(対面なら一言二言で済むのに・・・)
このように賛否両論あるオンライン化ですが、将来研究を行う人たちが快適に活動できる環境を作るためにも、現在研究の現場にいる私たちがオンラインとオフラインの棲み分けをしっかりと決めていきたいです。

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研究の合間に江ノ島まで旅行した時の写真
工学部 4年 S.N

 

研究者の卵として、今の社会変化を観察しよう

私は文系学生として世界システムを研究している。
専門はソ連の都市システムであるが、広く世界を捉えることもある。

そんな私が現状をどう見るか?一言で言えば「グローバル化・国際化の新局面が到来した」と見ている。
20世紀にはグローバル化や国際化が大国同士の潜在的な衝突を避ける側面を見せた。逆に21世紀に入ると今度は一国の躓きを世界に波及させる側面を見せた。
そしてこのコロナ禍で、従来のグローバル化や国際化では回避しきれぬ潜在的な衝突があるということが示された。

さて多くの方が「今は時代の転換期にある」と言うが、何がどう変わっているのかについては様々な見解がある。
一事象に多様な意見が出るというのは学問の特徴である。そしてその議論で自分の意見に注目が集まるというのは学問の最大の楽しみである。
なかなか議論に加われない研究者の卵にとって今は絶好のチャンスである。だからこそ今の社会変化を観察しようと思う。

教養学部 4年 ミーシャ

参考リンク
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原稿作成/2020年10月
企画・構成/「キミの東大」企画・編集チーム