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理数系が得意だけれど、人の心にも興味がある人に―教育学部・南風原朝和教授

2018.08.09

研究室探訪

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心の動き・頭の働きを見える形へ

人の心の動きや頭の働きは外からは見えません。それを第三者が見える形に変え、分析するのが心理学です。では、どうやって見えないものを可視化するか。

対象者の考え方や感じ方をインタビューによって記述することも可視化の一つの方法です。そして、学校現場や大学入試などで使われる「テスト」も、その人の中にあって外からは見えない「能力」を見える形に変えるツールです。

テストは能力を測るだけではなく、職業適性や性格などを知るためにも使われます。つまり、テストとは「心理」を客観的に「測定」するものなのです。

テストには、楽しむことを目的とした性格診断チャートのようなものもありますが、人の人生を左右する入試や心理学の研究など、測定がどれだけ科学的に信頼できるか、目的に適っているかが厳しく問われるものもあります。

私の専門は、こうした心理測定の妥当性や信頼性を評価する方法を、統計学をもとに作っていくという研究です。学問としては、心理学と統計学の重なる領域として「心理統計学」と呼ばれる分野です。その中で、テストを評価する理論をテスト理論といいます。

いま、大学入試改革が議論されています。様々な立場の人がそれぞれに良かれと思って新たな入試の形を提案していますが、それらをテスト理論で検証してみると、提案者の直感とは異なり、目的に適ったテストにならないとわかることも少なくありません。研究で得た知見を社会に還元することも研究者の重要な仕事ですから、私は専門家の立場でこうした入試改革の議論に参加し、継続的に提言をしています。


研究室の書架に並ぶ統計学の本

東京大学では、各学問の全体像をじっくり見比べることができる

私はふだん、主に数式やコンピュータ・プログラムを扱っています。心理学は人の心を扱う学問だと思っていた人は私の研究を見て、これも心理学なのかと驚かれるかもしれません。それほどに心理学は広い世界なのです。

私自身も、高校生のころから心理統計学をやろうと決めていたわけではありませんでした。理数系が得意ではあるけれども文系と理系にまたがることをやりたいという気持ちがあり、回り道をしながらこの研究にたどりついたのです。

高校生では、大学で学べる学問のすべてを俯瞰することはできないのがふつうです。ですから、「自分は理数系が得意だから理系学部に進もう」と進路を狭くとらえないでほしいと思います。「得意教科は数学だけれど、人の心にも関心がある」という人にこそ、「心理学はあなたの学問ですよ」と伝えたい。東京大学なら、大学に入ってから各学問の全体像をじっくり見比べることができる。高校生のときとは違う景色が見えてくるはずです。自分にとって良い景色を探してください。

※ページの内容は2018年7月31日現在のものです。

PROFILE

南風原朝和(はえばら・ともかず)

東京大学大学院教育学研究科 教育心理学コース 教授
東京大学高大接続研究開発センター長

2018.08.09
構成/江口絵理、撮影/今村拓馬